【モモ・童話】盗まれた時間の意味を女の子に教えられた【時間泥棒】

ミヒャエル・エンデの童話『モモ』はけっして子供のためだけにある作品ではありません。彼の鋭い視点は自分に向けられたベクトルの矢そのものです。なんのために現在という時間をつぶして生きていこうとするのか。その意味を考えさせる名作です。

【臥薪嘗胆・十八史略】屈辱や痛苦に耐えうる者だけが使う四字熟語

臥薪嘗胆という言葉を知っていますか。現代では名誉挽回とか汚名返上などという意味でよく使われています。しかしその底にはもっと人間の複雑な感情が横たわっているのです。歴史の中にその言葉の意味があります。少しだけ探ってみましょう。

【枯木灘・中上健次】路地に命をかけた紀州新宮の作家【神話の系譜】

中上健次の小説には神話に繋がる広さと深さがあります。紀州はまさに神話の故郷なのです。多くの小説の中で『枯木灘』の世界は超絶しています。そこに描かれた血族の姿は、この国の民族が持つ神話への畏敬にも通じています。一読を勧めます。

【字のない葉書・向田邦子】父親の愛情を澄んだ目で捉えた好エッセイ

向田邦子の名エッセイ『字のない葉書』は中学2年生の教科書に載せられています。学童疎開をさせた1番下の妹は子供なので文字も書けません。つらい思いをしないようにと、父親はたくさんの葉書を持たせます。その結果はどのようなものだったのでしょうか。

【三顧の礼・三国志】劉備玄徳が諸葛孔明を迎えるためにした礼の奥義

三国志は本当に面白い読み物です。日本でも多くの作家が挑んでいます。横山光輝は60巻に及ぶ漫画を描きました。その中によく使われる表現「三顧の礼」があります。劉備が諸葛孔明を自分の参謀にと願った時の礼の究極の姿なのです。

【捜神後記・陶淵明】1匹の犬が2度も主人公の命を救ったという奇譚

陶淵明の怪異譚『捜神後記』の中から珍しい話を1つ紹介しましょう。高校では選択科目でしかやらないと思われます。このような類の話は読んでいると実に不思議な感覚になるものです。中国にはこうした怪異譚の系譜がたくさんあるのです。

【奥の細道・平泉】芭蕉の視線の彼方には杜甫の漢詩・春望が見えた

『奥の細道』の中でも「平泉」はとりわけ表現のみごとな段落です。その理由は背景に杜甫の詩を連想させるからです。「春望」の世界をイメージしながら、この段を読むと、格別の感慨があります。松尾芭蕉は有名な俳句をここでつくりました。

【高瀬舟・森鴎外】弟殺しの罪人は微笑んで島流しの刑に【青空文庫】

森鴎外の小説『高瀬舟』は中学校時代に習う作品の1つです。そこでは安楽死の是非が語られます。死ぬことが確実にわかっているのにいつまでも苦しませておくことは許されるのかという大きな医学上の問題です。さらに道徳的なテーマでもあるのです。

【やめて幸せになる100のこと】好きなように生きたらいいじゃない

人生は複雑です。簡単にやめることのできないこともあるのだよ。とはいえ、いろいろ考えていると、やめたいなあ、と思う。誠に面妖なものなんです。それが生きるということだ。

【風の歌を聴け・村上春樹】真に孤独な作家は処女作に向かって進む

村上春樹の処女小説『風の歌を聴け』は不思議な魅力に満ちた作品です。登場人物たちの言葉にどのような意味があるのか。その1つ1つを解きほぐしていくことで、作家の内面にせまることができます。彼が何を感じ、考えているのかを探ってみましょう。

【ありがたきもの・枕草子】清少納言の観察力にはただ脱帽するのみ

清少納言の『枕草子』には鋭い観察力があふれています。とくにものづくしの段は秀逸です。今回は「ありがたきもの」を読みましょう。滅多にないものという意味です。人の悪口を言ったり、噂をしたり、仲違いをしたり。人間関係は厄介なものです。

【山椒魚・井伏鱒二】寓話にこめられた生存の苦悩【自意識と虚勢】

井伏鱒二の代表作『山椒魚』はどのようにも解釈できる寓話です。いわゆる人間の自意識を扱った作品とも読めます。また現在の引きこもりなどの現象を考える時の参考にもなります。いろいろな議論のたたき台になる作品です。一読をお勧めします。

【ブログ・900本】言葉の扱いに悩んだらコレ【記者ハンドブック】

このブログもいよいよ記事数が900になりつつあります。2年半、毎日ずっと3000字以上書いています。言葉の表現に悩む日々です。どうしてもわからないときは、『記者ハンドブック』をみます。最新の書き方が示してあるからです。

【奥の細道・立石寺】松尾芭蕉が感じた閑かさは蝉しぐれの中にあった

松尾芭蕉は尾花沢から戻り山形県の立石寺に立ち寄りました。『奥の細道』に所収されている俳句の中でも屈指の作品がここで生まれたのです。その経緯をみてみると、俳聖と呼ばれた芭蕉がどれほどに推敲を重ねて、この句が生まれたのかがよくわかります。

【日本辺境論・内田樹】この国は辺境に徹して延命の余地を探すのか

内田樹の『日本辺境論』は今から10年前に出版されました。新しい日本人論の1つに加えていいだけの質を持ち得ていると思います。日本及び日本人はどういう場所にいるのか。世界の流れの中でどの位置をしめているのか。考えてみてください。

【荘子・知足の探求】上り坂の儒家に対して老荘の思想を寓話にした書

『荘子』を読むと老荘の思想がどういう骨格でできているか、よくわかります。「道」と呼ばれるものごとの根源に向かって欲望をおさえ、生きていくことを示しています。寓話に託された真実を読み取り、現代の指針にできればと思いました。