【この国のかたち・司馬遼太郎】壮大な闇を持つ人物に憧れる民族の心

司馬遼太郎の史観は独特のものです。『この国のかたち』を読むと、彼の歴史観や民族観がよく理解できます。特に偉大な暗闇を持った人物に対する憧れは、他の民族にはみられません。西郷隆盛や坂本龍馬の人気のヒミツはまさにそこにあるのです。

【日本永代蔵・井原西鶴】本邦初の経済小説はミラクル級のホームラン

井原西鶴の『日本永代蔵』はまさに経済小説そのものです。お金をテーマにしてこれだけ真っすぐに切り込んだ浮世草紙は初めてでした。江戸時代の貨幣経済をみごとに描いた小説としては出色です。登場人物にも不思議な魅力がたっぷりです。味読してください。

【続古事談・清盛・福原遷都】人の心を見抜くワザは一朝一夕にならず

人の本心を見抜くというのは難しいです。『続古事談』という本に平清盛の遷都に反対した男の話がでてきます。福原に都を移したものの、なにもかもうまくいかず、京都に戻りたいと考えていた矢先のことでした。藤原長方の反対で清盛は京都に都を移したのです。

【源氏物語・葵上】正妻に取り憑いた物の怪の正体は噂のあの人だった

『源氏物語』の中で1番人気のあるのは、この葵上の段です。六条御息所の生霊が源氏の正妻、葵上に取り憑くシーンは、誠に読みごたえがあります。この段は能にもそのまま移植されました。最後に般若の面をかぶり、 嫉妬の炎に狂う御息所を演じるのです。

【魯迅・藤野先生】国籍と立場を超える生涯の師を持てた文人の幸せ

魯迅の『藤野先生』は胸が熱くなる小説です。国籍と立場を超えて留学生であった魯迅に正対しました。途中で医学から文学への転身を図った時、藤野先生は1枚の写真に惜別と書いて渡してくれます。一生の師として尊敬し続けた魯迅の真摯な態度を読み取って下さい。

【魯迅・故郷】貧しさに苦しむ中国の未来に文学の可能性を託した人

魯迅の『故郷』は中国の現実を描き出した小説です。貧しさの故にかつての友達との階級を意識せざるを得なくなります。自然な付き合い方がもうできないのです。その現実を見た時、これではいけない。息子の代になるまでには改革をと考えるのでした。  

【夏目漱石・三四郎】タブレットで青空文庫を利用し名作を読む

タブレットで小説を読むのは楽しいですね。フォントの種類も大きさも自由自在です。自分で好きなアプリを探して読んでみましょう。名作が青空文庫にたくさん揃っています。本当にいい時代になりました。是非好きな作品から始めてみてください。

【大鏡・菅原道真・左遷】栄枯盛衰を鮮明に描き切った歴史物語

『大鏡』は藤原道長を中心とする歴史物語です。しかしそこには様々な人の栄枯盛衰が描かれています。菅原道真が大宰府に流された時の様子を鮮明に記述した段は、実にしみじみとしています。無実の罪で中央を追いやられた学者の無念を読み取ってください。

【伊勢物語・東下り】古文の世界にひたって中世の美意識に酔いしれる

伊勢物語の世界は華麗で美しいです。源氏物語とよく並べられて賞賛されます。高校では必ず習う「東下り」の段を一緒に読みましょう。歌物語だけにたくさんの和歌が入っています。その中でも唐衣で始まる歌は最もよく知られています。技巧的にもみごとな和歌です。

【松尾芭蕉・奥の細道】軽みの世界をあくまでも追求した信念の俳人

松尾芭蕉の『奥の細道』は声に出して読む古典です。これほどにリズムのいい紀行文はありません。2400キロの道のりを長い時間かけて歩きました。かつての歌枕を再訪する旅だったのです。深川の芭蕉庵をたったのは元禄2年の春でした。

【三島由紀夫の真実】潮騒と仮面の告白の美意識は地下で繋がっている

三島由紀夫の初期の作品『仮面の告白』『潮騒』は一見正反対の小説です。しかしその根底には彼の美意識がしっかりと横たわっています。自分の持つ負の資産を太陽の光にさらして、払拭したかったのかもしれません。2冊続けて読むことで三島の葛藤が見えます。

【走れメロス・太宰治】真の友情を人間失格の作者は信じていたのか

太宰治の名作『走れメロス』は誰もが1度は読んだことのある小説です。しかし他の作品とはかなり傾向が違うことも事実です。彼の『晩年』『斜陽』『人間失格』などと比べると、どこか道化ているような素振りさえ見えてきます。内容を詳しく検討してみましょう。

【大岡信・ことばの力】染色家志村ふくみの見た桜色の真実とは

詩人大岡信のエッセイにはさまざまなジャンルのものがあります。その中でも染色家、志村ふくみさんとの対談について触れたものは出色です。草木染めの大家が語った言葉の中から、真実を見抜きました。中学校の教科書にも所収されています。ご一読下さい。

【小川国夫・アポロンの島】透明感のある力強く澄んだ言葉との出会い

作品との出会いは一期一会です。小川国夫の小説に出会ったのも偶然でした。大学生の頃、偶然古本屋で見たのです。どうしても欲しくなり、手に入れました。ギリシャの町の様子が淡々と描かれ、文体は乾いていました。無駄が削ぎ落されていたのです。

【本がメンター】読書の秘訣は積ん読と自分が鍛えられるという信念

読書とはどういう行為なのでしょうか。かつて評論家の小林秀雄は著者に会いにいくことだと言いました。遥かな時空を超えて過去の人に会える。これほどの離れ技が瞬時にできる。それが読書なのです。基本は読みたいものを読むに限ります。無理強いはダメです。

【森鴎外】名作・舞姫は典型的なモデル小説だった【明治という時代】

森鴎外の名作『舞姫』は明治という時代に翻弄された知識人の姿を描いた作品です。エリスの正体とは誰なのか。明治という時代は彼をどのように扱ったのか。その内側に迫ろうとすればするほど、国家の存在が今とは全く違うということに気づかされます。
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