【黒鳥のもと・土佐日記】長い船旅の間には歌人の横顔が色濃く【紀貫之】

紀貫之の『土佐日記』にはさまざまな段落があります。今回はよく知られた「黒鳥のもと」をとりあげましょう。55日間の旅の間にはいろいろなことがありました。天気のいい日は比較的楽に船が進んでいったのです。しかし海賊は怖かったと思われますね。

【藤壺の入内】亡くなった桐壺の更衣に似た先帝の娘を帝は密かに慕った

藤壺の宮と光源氏の関係は複雑です。一言でいえば、実の母によく似た女性ということになります。しかしそれだけではすまず、契りまで結んでしまうのです。その結果、子供が次の帝になるという複雑な出生の秘密を抱え込むということにもなりました。

【阿倍仲麻呂の歌・土佐日記】日本に帰ることができなかった文人の望郷心

阿倍仲麻呂といえば、遣唐使の時代の人です。その人が詠んだ歌をになぜ紀貫之は『土佐日記』ら載せたのか。その秘密がわかれば、この話はなかなか味のある内容になります。当時の船旅のつらさを想像することが大切ですね。

【誰かの靴を履いてみること】息子の学校生活に学ぶ【ブレイディみかこ】

エンパシーという言葉を知っていますか。他人の感情や経験などを理解する能力とあります。忖度などというのとは違い、徹底的に議論をして、その上で相手の立場を想像することが大切なのです。シンパシーとは根本的に違う考え方なのです。

【晏子・江南の橘、江北の枳となる】人の善悪は環境によるという教え

春秋時代の斉の宰相、晏子の話です。賢い人でした。宮城谷昌光の本『晏子』を読むと、そのことがよくわかります。彼をからかってやろうとした楚王が、逆に1本とられてしまうという話です。キーワードは橘と枳です。ぜひ覚えておいてください。

【此木戸や・去来抄】言葉ひとつに描写と風情のあはれを探る芭蕉門弟の姿

向井去来の俳諧本『去来抄』を読みます。俳聖と呼ばれた松尾芭蕉をあたたかなまなざしで見つめ、その様子を描き出しています。字の読み間違えをして低く評価した句が、実はすばらしいものであったという、心温まる文章です。

【倭建命・ヤマトタケル・古事記】大和の美しさを詠んだ辞世の歌が響く

『古事記』は日本最古の書物です。高校でも教科書に少しだけ載っています。今回はヤマトタケルが辞世の歌を詠んだ時の話を学びましょう。最も有名な歌の中には「まほろば」という美しい日本語が使われています。ぜひこの歌を覚えて下さい。

【平家一門都落ち】頼朝の温情にすがってはみたものの諸行は無常だった

『平家物語』の中で「一門都落ち」と呼ばれる段です。源氏に追われ、平家は都を去ります。しかしその様子も全員が一体になって去るというものではありませんでした。実際はもっとどろどろとした執着に満ち溢れていたのです。

【日本文化私観・坂口安吾】魂を揺り動かす日本の美とはどのようなものか

坂口安吾は小説家です。と同時に彼のエッセイ『堕落論』『日本文化私観』はユニークであり、多くの人に詠まれてきました。ここではその中心的な日本の美について、筆者の論点をともに考えてみましょう。

【与微之書・白居易】心の通う友への手紙が万人の感動を呼ぶ【七言絶句】

白居易の『与微之書』について考えてみます。30年来の友への手紙にはあたたかな心の交流が描かれています。左遷された心情とともに、友を想う心がよく描写されています。日本人によく知られた白楽天の世界を味わってください。

【万葉秀歌】日本最古の歌を通じていにしえの人々のおおどかな息吹きを知る

万葉集を読みましょう。4500首の歌が収められた我が国最古の歌集です。天皇から農夫にいたるまで、さまざまな階層の人が歌を詠んでいます。感情をストレートにそのままぶつけた表現は、読む者の心を捉えて離しません。

【小学・列伝巻】児孫のために美田を買はずという古来からの教えは神

児孫のために美田を買はずという諺はよく耳にします。意味もよく知られています。この表現はどこからきたものなのでしょうか。西郷隆盛の詩の中にあると言われていますが、その元は漢文の本から来ているのです。

【源氏物語・薄雲】明石の君は我が娘を紫の上に預ける不安に悩み苦しんだ

「源氏物語』は我が国を代表する創作です。紫式部の持つ類まれな力が、多くの人物を実に多彩な形で描き出しています。今回は明石の君が娘を光源氏に預ける決心をする段を読んでいきましょう。趣きのあるしみじみとした内容です。

【うたたね・阿仏尼】若き日の恋に破れた歌人は逢坂山を見て何を

阿仏尼が若い時に書いた日記『うたたね』を読みましょう。初めての恋に破れて、人生をどのように生きたらいいのかわからなくなってしまいました。出家をする気になったのです。養父の勧めで、遠江までの旅をすことになりました。

【掟の門・カフカ】長編・審判の挿話から独立した不条理な物語【法とは】

フランツ・カフカの小説『掟の門』を読みます。これは『審判』という作品の挿話として書かれたものです。後に独立して1つの作品となりました。ストーリーは短いのですが、その内容は複雑です。不条理の文学と呼ばれています。

【おもて歌のこと・無名抄】師との会話から名歌の真髄を学ぶ【鴨長明】

鴨長明の『無名抄』は中世の歌論書とし有名です。今回は藤原俊成の歌について、師匠、俊恵との会話を扱った段落を読みます。歌の命はどこにあるのか。よく知られた歌であっても、欠点のある歌もあるのです。俊成が自選した歌を巡っての会話は興味深いです。