異文化理解というテーマ
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文に毎年出るテーマ、グローバル化の問題をとりあげましょう。
この問題は異文化理解の側から光をあてて書かせるタイプのものと、人権の問題から書かせるものとの2つに分かれます。
どちらも書くのは難しいです。
しかし大学が好むのは、どちらかといえば異文化理解のテーマです。
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国際交流や留学などを勧めている学校が大変多いからです。
異文化をどのように理解するのかというのは経済の発展に伴って、多くの人が交流している現在の姿そのものです。
ある意味、華やかな側面を持っています。
生活や、文化の内側に入り、少しでも他者を理解しようとすることはすばらしいことです。
しかしグローバル化の波は、民族の文化を次々と根こそぎ奪ってしまいかねない勢いです。
どこの国へ行っても同じような食べ物があり、人々は似た服装をしています。
相互に理解が深まればいいのですが、それほど単純ではありません。
似た暮らしをしている人から刺激を受けることは、むしろ少なくなりがちです。
かつては全く想像もできなかった人同士が、今では簡単にスマホなどのデバイスを通じて意思疎通を図ることもできるようになりました。
宗教においても戒律は、以前よりもゆるくなっています。
世界全体に共通する理性の輪ができるのかどうか。
それが喫緊の課題だという人もいます。
普遍的な価値の体系が本来あるものなのかどうか。
そうではなく、むしろ文化というのはそれぞれ違うところに魅力があるからこそ、違いをもっと明確にしていかなければならないという論点もあります。
こうした文化の側面から世界をみていく時、そこに大きな争点がみえてくるのです。
このポイントはあちこちの学校でよく出題されます。
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言葉、宗教、習慣、伝統など、民族や国民性の違いによって、明らかに差はあります。
しかしそれが本来もっている形を崩さずにグローバル化できるのか。
あるいはもうすでに世界が同じ形に変容しつつあるのか。
ここは大きな論点です。
自分でもじっくりと考えておいてください。
外国人との共生
日本中、どの町にいっても外国人に出会わないことはありません。
特に大都市ではいわゆる外国人街のようなものもあります。
このケースは文化理解というレベルではありません。
ほとんど実生活そのものです。
グローバル化のもう1つの側面です。
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ここでの大きなテーマは人権です。
自分の家の隣の外国人とどうやって共生していくのかという問題です。
2018年1月の統計によれば、東京で暮らす外国人の数は52万人。
そのうちの35万人が中国と韓国人です
さらにフィリピン人、ベトナム人と続きます。
1300万の人口を持つ大都市東京の中の50万人という数字はどういう意味を持つのでしょうか。
コロナウィルスの蔓延により、外国人旅行者は激減しました。
しかし仕事で滞在している人たちは以前減りません。
むしろ今回のコロナ禍が一段落すれば、再び増加することは容易に想像ができます。
日本で働こうと思い学校に通っていたのに、アルバイトもなくなり途方に暮れている外国人の様子をニュースは追いかけています。
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農業研修生などとして来日しようとした人たちも、それが果たせず、日本の農家も困っているという報道もされています。
いずれにしても日本をめざす外国人はたくさんいるのです。
問題は言語、文化、習慣、宗教などの違いから偏見を抱く人々が少なくないということです。
この側面からテーマを追いかける課題文はそれほどに多くはありません。
いわば日本にとっての負の側面です。
異文化理解とは全く違った様相を持っているのです。
ヘイトスピーチ
日本は島国です。
特有の文化を持っています。
多くの人間がわずかな土地を耕して暮らしてきました。
それだけに他の人とほどよく暮らすという能力を持っています。
面白いジョークがあります。
難波した船から船長が乗組員に海に飛び込むように命じた時のセリフです。
アメリカ人には飛び込めばあなたは英雄ですというセリフを言います。
ドイツ人には飛び込むのが規則になっていますと言います。
イタリア人には飛び込めば女性にもてますと言います。
フランス人には飛び込まないでくださいと言います。
日本人にはみんな飛び込んでいますと言えばいいのです。
日本人の心理の一面を表していると思いませんか。
日本人は基本的に決断を自分ではしません。
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他者と同じにすることで、自らのかたちを決める。
そういう民族なのです。
だからこそ、そこに違う文化の人間がはいってくると、排斥しようとします。
言葉だけではありません。
日々の暮らしの中には細かな約束事がたくさんあります。
それを守ってくれないとなると、そこから急に共生のサインが消え落ちるのです。
その結果としてヘイトスピーチが起こります。
2016年、外国人に対する差別的言動に対して厳しい措置をとるという法律ができました。
川崎市などにも似た条例があります。
オリンピックを控えていた昨年から、神経質なくらいにヘイトスピーチ関連の事案などが公表されてきました。
しかし法律ができたからといって、すぐに人間の感情が変化するというものではありません。
どうしたらいいのか。
何が最も効果的な共生のための方法なのか。
その論点について書かせる問題が今年も出題されるでしょう。
多様性を受け入れる
グローバル化の流れをとどめることはできません。
今年本当にオリンピックが開催されるかどうかも現段階ではわかりませんが、異文化との共生をテーマにせざるを得ないでしょう。
開催が本決まりになれば、人種、皮膚の色、民族の差などについての啓蒙PR活動がより頻繁におこなわれることになります。
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しかしその際、ただ仲良くなろうというレベルではおざなりのもので終わってしまうにちがいありません。
根本的にどうしたらいいのか。
基本は相手の立場を理解することです。
親から金を借り、やっと日本への留学を果たした生徒の立場を知ることです。
研修制度を悪用して、外国人の実習生に契約した賃金を支払わないなどということがあってはなりません。
どのような入国ビザを所持しているのか。
それをきちんと把握し、理解したうえで、仕事についてもらうということが必要でしょう。
悪徳業者は相手の弱みにつけこんで、さまざまな要求を発します。
その際の相談体制なども充実させなければなりません。
日々の暮らしは細かなことがらの積み重ねです。
多様な民族がうまくお互いを支えあって生きていくとてう基本が守られなければならないのです。
一言でいえば、多様性の理解です。
しかしその内実は複雑そのものです。
異文化との共生については2つの側面、どちらからでも書けるようにしておいてください。
小論文は何が出題されるのか、全く見当のつかない試験です。
その時になってあわてないように、自分の考えをきちんと整理しておくことです。
勉強を続けてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。