ジェンダーフリーとは
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は女性の問題について考えます。
このテーマは実にさまざまな角度からよく出題されます。
男女平等参画社会という表現を聞いたことがありますか。
大変響きのいい言葉ですね。
しかし内実は難題の山です。
もう1つ。
ジェンダーフリーとは何のことでしょうか。
大きなキーワードです。
ジェンダーというのは社会的な性別のことです。
男女の性差は生物学的なもの以上に、社会的、歴史的な役割を多く負っているという考え方です。
ではジェンダーフリーをどう定義すればいいのでしょう。
簡単にいえば、従来の固定的な性別による役割分担にとらわれないということです。
男女が平等に、自らの能力を生かして自由に行動・生活できることを意味します。
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フランスの思想家ボーボワールの言葉がそのすべてを表しています。
「女性は女性として生まれてくるわけではない。社会が女性にしてしまうのだ」
まさに世間というものが、いわゆる「女らしさ」という型の中に女性を閉じ込めてしまうという考え方です。
無理に鋳型にはめ込もうとしたことで、息苦しい思いをしてきた女性が多数いたことは、容易に想像できます。
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先入観で女性を見てきた人々に対して、「ジェンダーフリー」を説くことがいかに大切かという視点が、この論点のキモです。
社会的な性差を極力なくすということがポイントなのです。
女性問題は社会の構造という視点なしには、絶対に見えてきません。
肝に銘じておいてください。
夫婦別姓
最近よく出題されるテーマがこれです。
報道などでもよく耳にします。
なぜジェンダーフリーの思想と関係があるのかということをきちんと把握しましょう。
この主張の底に流れる理由がわかりますか。
社会に出ている女性にとって結婚により姓がかわることのメリット、デメリットを考えれば理解できます。
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最近、結婚しても旧姓のまま仕事をする人を多くみかけるようになりました。
かなりの割合で普及しているようです。
もちろん公的なものには通用しません。
あくまでも通称です。
妻が夫の戸籍に入り、夫の家の名前を名乗ることにどのような意味があるのでしょうか。
なぜ女性の方が姓をかえる割合が高いのか。
その背後にはどのような考え方があるのか。
ここを問題にして小論文を書かせる学校が多いのです。
基本は家制度です。
妻を夫の家に縛るという考え方です。
この視点をおさえてください。
個人の重みというのをどこまで真剣に考えて、このようなシステムがとられているのか。
女性だけに姓をかえさせるという制度の根本には家の存続という概念があります。
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もっとわかりやすくいえば、墓守です。
その家代々の墓を誰が守るのか。
かつては一家の長男がその役割を担っていました。
しかし現在は少子化で、女性だけの家も多いのです。
その場合、誰が家を引き継ぐのか。
大きなテーマです。
家族と個人
その反対もあります。
夫婦別姓にした途端、家族の絆が弱まるという考え方もあるのです。
同じ姓だから、1つの家を守っていこうとする考え方があっても不思議ではありません。
個人をメインにした社会はある意味、絆の弱い人間の集合体です。
結婚というのは1組の男女が新しい家庭を築き、そこから出発するための基盤をつくることです。
より強固なつながりがあれば、それだけ生きていくための活力も生まれます。
子供が生まれることで、さらに力が蓄えられるのです。
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それが夫婦別姓になったらどうでしょう。
単位がさらに小さくなっていくだけです。
家族というものをどう考えるかによって、この論点は全く違うものになるということがよくわかりますね。
仮に男性が女性の姓を名乗るとしましょう。
社会的にはどういう意味を持つと思いますか。
あなたの周囲にそういう人はいますか。
世間はその男性をどのような目で見ますか。
そこにこそ、日本の社会が持っている構造の根があるのです。
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社会学や民俗学の大切な論点です。
ここには養子縁組という墓と家を守るための日本人の知恵があります。
しかし昨今はそれを維持することも難しいのが現状です。
ジェンダーフリーについてもう1度まとめておいてください。
何が問題なのか理解していれば、どのような視点から出題されても怖れることはありません。
女性の人権
もう少し論点を広げましょう。
ジェンダーフリーのテーマを考える以前には長い間にわたって男女同権、女子差別撤廃の流れがありました。
女性が職業を選択する際にも不利にならないようにという配慮が多くなされてきたことは事実です。
しかし現在、社会がその全てを理解し実行しているのかということになれば、それはまた別の問題です。
女性問題の難しさはこのタテマエとホンネの中に全て含まれているのです。
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ことに職場によるセクハラなどの被害はいまだに止むことがありません。
新聞のニュースを読んでいると、いまだにこんな事件があるのかとあきれてしまいます。
しかしそれが現実なのです。
さらに家庭内での暴力事件があります。
いわゆるDVと呼ばれるものです。
配偶者からの暴力は認定が難しいです。
夫婦喧嘩で片づけられてしまうケースが多いのです。
しかし犯罪となる行為を含む重大な人権侵害のケースもあります。
日本でも男女の役割が随分と変化してきたことは事実です。
しかし女は子供を産み育てるという図式から抜け出せているのかどうか。
出産にあわせて、退社し、その後子育ての終了とともに、パートの仕事につくなどというパターンをとる女性も多いのです。
それまでに培った社会での地位をすべて捨ててしまうというケースを見ていると、男女の役割が全く同等に扱われているとはいえないのが現状です。
そうした社会のあり方をどう考えたらいいのか。
これも女性にとっては喫緊のテーマです。
一般職と総合職という言葉を聞いたことがありますか。
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女性の場合、転勤を伴う就職を嫌う傾向もあります。
それ以上に親が止めるというケースもあります。
このあたりにも本来あるべき方向と現実とのギャップがあるのではないでしょうか。
社会がそれを恣意的に強制しているとなれば、大きな人権問題です。
しかし見えない形でのグラスシーリング(ガラスの天井)を張り巡らせているとしたら、深刻なテーマになります。
社会的な役割をうまく分担するために、何をしていけばいいのか。
人権を守るためにしなくてはならないこととは何か。
この機会に是非、考えてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。