【言の葉】詩人・茨木のり子の世界はいつも新鮮で瑞々しい【驚き】

詩人茨木のり子はいつも新鮮で瑞々しいのです。彼女の目には普通の人には見えない風景が見えたんでしょうね。

【男こそ・枕草子】美徳のよろめきを読みながら清少納言を考える

清少納言『枕草子』にはさまざまな内容があります。その中で男女の愛情を描いた部分は理解するのが難しいですね。じっくり読んでいると、人間は少しも進歩していないとしみじみ考えてしまいます。三島由紀夫の『美徳のよろめき』を思い出してしまいました。

【星の王子さま】童心にいつでも戻れる不思議な本【サン・テグジュペリ】

サン・テグジュペリの『星の王子さま』はいつ読んでも心があたたまる本ですね。一番大切なものは目に見えないんだという言葉が身に沁みます。

【小論文・ルールブック】あたりまえだけどとても大切なことを実践する

あたりまえだけど大切なことというのは規範意識に支えられたルールブックのことです。かつてこのタイトルで出版された本がありました。道徳の授業を実践することは大変に難しいものです。その中で、本当に教師が自分の心から発信した授業がこれだったのです。

【クレールという女・須賀敦子】信念を持つ女性の生きざまに憧れる

イタリア文学者、須賀敦子のエッセイです。タイトルは「クレールという女」。高校3年生用の教科書に所収されています。内容は抵抗運動の中で生きた人々の真実の愛とは何かという深いテーマです。すばらしいエッセイです。ご一読ください。

【俳優という生き方・中村敦夫】木枯らし紋次郎の特異な演劇人生

俳優中村敦夫の人生は特異なものです。さまざまな経験が彼の本にはたくさん描かれています。小説も書きました。政治活動もしました。ある種、冷めた目で芸能の世界を切り取っています。社会活動に軸足をうつしてからの行動もユニークです。

【葉山嘉樹】セメント樽の中の手紙は過去の作り話ではない【事故】

つい数日前、東京都府中市の工場で事故がありました。過去にブログにも取り上げた小説に似た悲惨なものです。葉山嘉樹というプロレタリア文学の作家が書いた『セメント樽の中の手紙』がそれです。時代が変わっても仕事の内実は今も同じなのです。

【畑の向こうのヴェネツィア・仙北谷茅戸】イタリアの日常が愛おしい

イタリアはすばらしい国です。みこどな文化の発祥地ですね。父親に連れられてヨーロッパで暮らした後、再びヴェネツィアへ留学しました。そのまま彼の地へ住み着いたのです。そこからの日常の暮らしをごくさりげなくエッセイにまとめてくれています。

【困っている人・大野更紗】したたかに難病とつきあう【壮絶な戦い】

知人に勧められてこの本を読みました。あまりにもすごい話なので、全く想像の外です。しかし書き方はユーモアに満ちていて明るいのが救いでしたね。

【空海・最澄】密教と顕教の教えが2人を割いた【陳舜臣・司馬遼太郎】

陳舜臣と司馬遼太郎が書いた空海の本は実に豊かです。そこへ最澄がからむと、この時代の仏教界の流れが手にとるようにわかります。唐の都へ行って、灌頂を受けてきた空海が、次に何を狙ったのか。そのターゲットを最澄の立場から考えるのも興味深いです。

【近代能楽集・三島由紀夫】能を現代に蘇らせた出色の創作劇

作家三島由紀夫は能を現代劇に仕立て上げました。彼の持つ美意識が能の形而上学にピタリと合致したのでしょう。しかし実際に上演するのは大変に難しいのです。三島の世界を再現するために、俳優たちは苦しみました。  

【月山・森敦】雪に閉ざされた寺で過ごしたひと冬の日常【原風景】

作家森敦の魅力はその特異な世界にあります。10年働き、10年遊ぶという生き方を実践してきました。それが彼の文学にさまざまな陰影をつけています。旧制一高を退学した後に、多くの小説家たちと知り合い、特に横光利一に師事しました。

【万国旗と電信柱・別役実】不条理演劇の時代を生き抜いた劇的な作家

別役実をご存知でしょうか。新しい芝居を探りつづけた劇作家です。ベケットの影響を強く受け、反演劇を目指しました。その芝居にひとたび触れると、日常の生活が全く違うものに見えてしまうのです。不思議な魅力に満ちた作家でした。

【アルジャーノンに花束を】人間にとっての幸福とは何かがわかる本

ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』という作品を読んだことがありますか。脳の手術を受け、劇的にその数値を伸ばしていく話です。ハツカネズミのアルジャーノンも同じ手術をうけますが、その後の変化は、悲惨な未来を予感させるものでした。

【モモ・童話】盗まれた時間の意味を女の子に教えられた【時間泥棒】

ミヒャエル・エンデの童話『モモ』はけっして子供のためだけにある作品ではありません。彼の鋭い視点は自分に向けられたベクトルの矢そのものです。なんのために現在という時間をつぶして生きていこうとするのか。その意味を考えさせる名作です。

【臥薪嘗胆・十八史略】屈辱や痛苦に耐えうる者だけが使う四字熟語

臥薪嘗胆という言葉を知っていますか。現代では名誉挽回とか汚名返上などという意味でよく使われています。しかしその底にはもっと人間の複雑な感情が横たわっているのです。歴史の中にその言葉の意味があります。少しだけ探ってみましょう。