【三島由紀夫の真実】潮騒と仮面の告白の美意識は地下で繋がっている

三島由紀夫の初期の作品『仮面の告白』『潮騒』は一見正反対の小説です。しかしその根底には彼の美意識がしっかりと横たわっています。自分の持つ負の資産を太陽の光にさらして、払拭したかったのかもしれません。2冊続けて読むことで三島の葛藤が見えます。

【走れメロス・太宰治】真の友情を人間失格の作者は信じていたのか

太宰治の名作『走れメロス』は誰もが1度は読んだことのある小説です。しかし他の作品とはかなり傾向が違うことも事実です。彼の『晩年』『斜陽』『人間失格』などと比べると、どこか道化ているような素振りさえ見えてきます。内容を詳しく検討してみましょう。

【大岡信・ことばの力】染色家志村ふくみの見た桜色の真実とは

詩人大岡信のエッセイにはさまざまなジャンルのものがあります。その中でも染色家、志村ふくみさんとの対談について触れたものは出色です。草木染めの大家が語った言葉の中から、真実を見抜きました。中学校の教科書にも所収されています。ご一読下さい。

【小川国夫・アポロンの島】透明感のある力強く澄んだ言葉との出会い

作品との出会いは一期一会です。小川国夫の小説に出会ったのも偶然でした。大学生の頃、偶然古本屋で見たのです。どうしても欲しくなり、手に入れました。ギリシャの町の様子が淡々と描かれ、文体は乾いていました。無駄が削ぎ落されていたのです。

【本がメンター】読書の秘訣は積ん読と自分が鍛えられるという信念

読書とはどういう行為なのでしょうか。かつて評論家の小林秀雄は著者に会いにいくことだと言いました。遥かな時空を超えて過去の人に会える。これほどの離れ技が瞬時にできる。それが読書なのです。基本は読みたいものを読むに限ります。無理強いはダメです。

【森鴎外】名作・舞姫は典型的なモデル小説だった【明治という時代】

森鴎外の名作『舞姫』は明治という時代に翻弄された知識人の姿を描いた作品です。エリスの正体とは誰なのか。明治という時代は彼をどのように扱ったのか。その内側に迫ろうとすればするほど、国家の存在が今とは全く違うということに気づかされます。

【教育の経済学・エビデンス】非認知能力を鍛えてサバイバル可能に

就学前の教育がいかに大切か。それを明確に論じた本が中室牧子さんの『学力の経済学』です。人並な暮らしをするために、親は何に1番力を入れなければならなのか。知力ではありません。非認知能力なのです。最後までやり抜く自制心が最も大切なのです。

【伊東静雄】わがひとに與ふる哀歌と春の雪は三島由紀夫を震わせた

伊東静雄の詩は学校ではあまり扱いません。しかしその美しさは完成されたものです。耽美性を備えた美に感応したのは作家三島由紀夫です。「春の雪」は後に同名の小説まで生み出しました。透明な詩の世界が三島の審美眼を突き動かしたのでしょう。

【絵仏師良秀】芸術至上主義者の辿る道には死の匂いが常に漂う

中世の古典には多くの味わい深い作品があります。それらをうまく使って作家たちは名作を書きました。芥川龍之介には『羅生門』『地獄変』などがあります。原作との違いを見ながら、内容をチェックしてみましょう。小説家の苦悩が理解できるはずです。

【宇治拾遺物語】夢盗人の話は現代にも通じるリアルさ満点

夢を盗む話というのが日本の古典にはいくつもあります。その中の代表が『宇治拾遺物語』に載っています。今回はそれをご紹介しましょう。夢判断なんてナンセンスだなんて言ってちゃダメです。今でも占い師は必死であなたが見た夢の意味を解いてくれるのです。

【詩人・茨木のり子】心に突き刺さって抜けない魂の言葉がせつなくて

茨木のり子を知っていますか。既存の権威と戦いながら、自分の歩いていく道を探し続けた孤高の詩人です。その表現に触れると、心が痛くなります。自分に正直に生きようとすることは、けっして楽ではありません。それでも自分を捨てなかった人の魂の叫びなのです。

【一日一生】千日回峰行というスーパーマン的修行は空前の宇宙規模

千日回峰行という荒行をご存知ですか。1000日かけて行うこの修行を2度も行った僧がいるのです。なぜそれほどに苦しくつらい日々を過ごしたのか。修行の詳しい説明をしながら、ご紹介します。『一日一生』という本を書いた酒井雄哉大阿闍梨がその人です。

【夏目漱石・門】何度読んでも寂しくなるリトマス試験紙のような小説

夏目漱石の小説『門』は3部作の最後を飾る作品です。神経衰弱になって鎌倉の円覚寺を訪れた時の様子をうまく描写しています。登場人物と漱石自身が重なって見えるように書いたのかもしれません。全体に静かで寂しく趣きが深いです。

【沢木耕太郎・深夜特急】身体の中が熱くなるホンモノの旅本はこれ

沢木耕太郎は人気のある作家です。その彼が若い時に旅をした記録が『深夜特急』です。バスで香港から旅を続けます。最も安い宿に泊まり、彼らと同じものを食べ、同じものを着て、生活を体感します。そこから見えてきたものとは何か。

【桃花源記・陶淵明】ユートピアは桃の花咲く密かな山奥にあった

陶淵明作『桃花源記』は大変美しい作品です。不思議な味わいに満ちています。桃の林の中を突き抜けていくと、そこには全く見たことのない光景が繰り広げられていました。まさにユートピアそのものだったのです。作者は何を言おうとしたのでしょうか。

【手の変幻・清岡卓行】ミロのヴィーナスの両腕に秘められた永遠の謎

ミロのヴィーナスには両腕がありません。詩人清岡卓行はこの事実を重く受けとめました。なくて良かったというのです。私たちに想像力を十分発揮する場をくれたということです。健康でいられるためにも彼女は腕を失っていなければならなかったというのです。