チーズはどこへ消えた
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はかなり昔に読んだ本の話をさせてください。
寓話です。
本当にあったという話ではありません。
たとえ話といった方がわかりやすいかもしれません。
発行されてから随分とたっているにも関わらず、いまだに書店には置かれています。
息の長い本だと言えますね。
ビジネスマン必携などとよく言われます。
しかし無理に限定する必要はないのではないでしょうか。
筆者は心理学者、スペンサー・ジョンソンです。
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登場するのは迷路のなかに住む、2匹のネズミと2人の小人です。
その名も「スニッフ」「スカリー」と「ヘム」に「ホー」。
もちろんこれには意味があります。
それぞれ「においをかぐ」「急いで行く」「閉じこめる」「口ごもる」という訳語をもっているのです。
登場する彼らの性格を表したネーミングといっていいでしょう。
彼らは最初になんとかチーズの山を探し出し、毎日楽な暮らしをし始めます。
しかし、そこから次第にチーズは消えて少なくなっていきます。
2匹のネズミたちはすぐに迷路の中を飛び回って、新しくチーズのあるところを探すためのチャレンジをします。
しかし小人の2人はためらったままです。
やがてどうしようもなくなって、小人の片割れホーは勇気を奮い起こして進んでいきます。
ところがヘムはずっと同じ場所にいるだけです。
変化
この物語にはいくつもの挿絵と言葉が登場します。
その中で最も中心になるのは、次の内容が載っているページです。
きっとどの会社の壁に貼っても、少しの違和感もないでしょうね。
7つのスローガンをここに挙げます。
「変化は起きる」
「変化を予期せよ」
「変化を探知せよ」
「変化にすばやく適応せよ」
「変わろう」
「変化を楽しもう」
「進んですばやく変わり、再びそれを楽しもう」
いずれにも「変化」という文字があります。
どの会社にとっても、変化は必須なんでしょう。
AIの時代です。
今まで日の出の勢いだった会社が、一気に斜陽産業に変化してしまいます。
飛ぶ鳥を落とす会社も、翌日には倒産してしまうのです。
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飲食業もそうですね。
コロナ禍の中を生き残るのは並大抵のことではありません。
エッセンシャルワーカーだなどと呼ばれて、いい気持になっていたら、突然奈落の底にたたきつけられてしまうのです。
この変化という表現をどう解釈すればいいのでしょう。
ぼく達の生活にも常に変化が忍び寄っているのは、ごく自明のことです。
しかしそれをつねに早く感じて、対応し行動できるのかといえば、これはなかなか困難です。
ここにあげられたのはどのようなケースにもそのまま適応できる言葉です。
筆者はビジネス書を多数書いている心理学者です。
どのようにすればストレスの少ない人生を送っていけるのかということを、つねに考えている研究者なのです。
その彼が書いた寓話を今、多くの人が好んで読むというところに「現代」を感じます。
甘い時代
誰もが変わらなければいけないことを知りながら、しかし同じ場所にいることの心地よさに酔っています。
いや、酔っていましたというべきでしょうか。
しかしそんな甘い時代はもう過去になりつつあるのかもしれません。
倒産、リストラ、デフレの嵐の中で、かつての論理は通用しません。
どんな大企業にも失速の可能性があるのです。
日産の元CEO、カルロス・ゴーンを思い出してください。
あれだけの赤字企業を、一時は黒字に転換しました。
しかしその後の変貌ぶりも見事でしたね。
会社を完全に自分のものにし、巨額の金額を自分の懐に入れてしまいました。
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さらには裁判にかけられ、司直の目をくらまして、国外に逃亡してしまったのです。
工場閉鎖や人員削減の成果を全て、自分の業績にし、その果てに会社を食い物にしたといってもいいでしょう。
その最中も彼は「変化」を連呼しました。
日産はゴーンショックから立ち直るために、まだまだ時間を必要とするに違いありません。
社員たちは本当の意味の厳しい「変化」を味わうことになることになるのでしょう。
ダイエーも急激な店舗展開を目玉にしました。
とにかく変化を望んだのです。
その結果が倒産です。
消費者に飽きられてしまいました。
企業の寿命は30年と言われています。
少しでも同じところに安住していれば、すぐに悲惨な結果がやってきます。
生き残るために
IT関連企業の生き残りは、まさに時間との戦いです。
金融、証券、保険なども同様です。
中小の店舗などもよほど個性化をはからないと生き抜けないと思います。
地方の駅前の空洞化も言われて久しいものがあります。
車社会はバイパス通り沿いに新たな店舗展開を要求しました。
コンビニまで少し弱いと潰れていく世の中なのです。
ガソリンスタンドなども閉店するところが多いですね。
昨日もたまたま都心のレコード会社のビルの前を何気なく車窓から眺めていました。
実はぼくも就職を1度は考えたところなのです。
いつの間にか、ある大学の都心キャンバスになっていました。
レコード会社が生き残るのは並大抵のことではありません。
音楽は配信がメインになり、サブスク化されています。
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CDなどもめっきり売れなくなったのです。
それにしてもチーズとはいったい何の象徴なのでしょうか。
仕事、愛情、財産、家、名誉。
自分の暮らしの中にある大切で失いたくないものとはなんでしょう。
それを1つ1つ考えてみました。
しかし結論は容易に出てきません。
ぼくは2人と2匹のどのタイプにあてはまるのか。
とても知りたいです。
今、誰の周囲にもものすごい変化が押し寄せています。
しかし本当をいえば、それに気づきたくはないのです。
なぜかといえば、怖いからです。
本能的な恐怖といってもいいでしょう。
今まで培ったものが、根底からくつがえされる可能性だって、そこにはあるのです。
暢気にかまえてチーズは絶対になくならないだろうと勝手に思いこんでいる自分がいます。
きっと理屈では変わらなければと口走っている、もう1人のぼく自身もいます。
変化に対応しなくてはいけないのは、まさに現在の今という時間なのでしょう。
そのことに気づきたくない多くの人にとって、この本はちょっと耳の痛い本です。
変化にすばやく対応し、それを楽しむ心境になれるのかどうか。
そこが勝負の分かれ目と言ってもいいのではないでしょうか。
IBM、アップル・コンピュータ、メルセデス・ベンツ等、トップ企業が次々と社員教育に採用したという話です。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。