【おくの細道・象潟】松島に似た風光の地に芭蕉は寂しさと悲しみを見た

『おくの細道』の旅は5カ月間続きました。その中に秋田の象潟の章があります。今と違って海の上に島がぽっかりと浮かんでいました。松島と似たような風景だったのです。その様子を芭蕉はなんと表現したのか。味わってみてください。

【紫式部・無名草子】いつかは読みたい源氏物語が誕生するまでの秘話

『無名草子』は鎌倉時代の評論です。その中に『源氏物語』を書いた紫式部の記事があります。どのような経緯でこの本が生まれたのかということが示されています。今の時代とは違う、書くことに対する態度もそこには見えて楽しいのです。

【握手・井上ひさし】ルロイ修道士の優しさがどこまでも身に沁みる

短編『握手』は読んだ後、こころが温かくなる名品です。井上ひさしが修道士との出会いを通じて、人間に対する信頼を手にしていった軌跡が描かれています。そこに登場する指言葉はさまざまな意味をもち、この小説の味わいを深めています。

【人新世の資本論】SDGsが大衆のアヘンならプランBは地球脱出か

一昨年に出版された新書『人新世の資本論』は今も売れ続けています。なぜこの本が注目を浴びたのでしょうか。地球の温暖化を抑制するために、国連はSDGsを提唱しました。しかし目標の達成は容易なものではないのです。その問題点とは。

【恋の歌を読む・俵万智】与謝野晶子の白桜集にあふれる鉄幹への慕情

与謝野晶子の歌を読むと、人生の意味をいろいろと考えてしまいます。恋の歌を調べながら、俵万智の筆はどうしても晶子の心の中を知りたくなります。そこには夫、鉄幹への慕情が強くありました。遺歌集『白桜集』です。

【城の崎にて・志賀直哉】死生観に裏打ちされた名作【人は寂しき】

志賀直哉の『城の崎にて』は彼の死生観が色濃くでた小説です。生き物の死を通して、生きることと死ぬことの意味が色濃く伝えられます。事故で療治をむしている自分の姿と死んでいく小動物の対比が見事です。

【真夏の死・三島由紀夫】子供を失った母親が見た海の風景【死生観】

三島由紀夫の短編『真夏の死』を読みます。ここには彼の死生観がよく出ています。海の事故で子供を失った母親がどのようにその悲しみの記憶を拭い去っていったのかという軌跡を追いかけて行った作品です。一読をお勧めします。

【チーズはどこへ消えた?】ビジネスマンの心に潜む変化への迷いは

『チーズはどこへ消えた』という本を知っていますか。現代のビジネスマンの中にある不安を言葉にした時、それがチーズだったのです。それまでは食べられたチーズがいつの間にか、なくなってしまいます。どうしたらいいのか。そのテーマが主題です。

【恩師・一期一会】人との出会いがこの世界を支える【僥倖の時間】

高校時代に国語を教えてもらった先生のことが忘れられません。野口武彦先生です。先生はその後、神戸大学の教授になりました。学生運動の活動家でもありました。小説を次々と発表し、その後文学評論を書き始めました。恩師と呼べる人です。

【私が棄てた女・遠藤周作】1人の女性像に永遠の聖性を託した小説

遠藤周作は第3の新人と呼ばれたグループの作家です。代表作はなんといっても『沈黙』でしょう。しかしそれ以前に書かれた作品にも名作が多々あります。ここでは『私が棄てた女』を取り上げます。聖性に満ちたイエスやマリアにも通じる美しい心の持ち主です。

【史記・韓信の股くぐり】大きな目的を実現するために恥辱を我慢した男

韓信という人の名前を御存知ですか。「韓信の股くぐり」という話の中に出てきます。劉邦の家来です。将軍として劉邦を支え続けました。なぜ恥辱を受けても、それを我慢したのか。そこには真の目的があったからです。そのためには耐えることを知っていました。

【売油翁・帰田録】技術を習熟した先にはそれを超えた高い境地がある

中国の本にはさまざまな種類のものがあります。その中でも哲学者たちの記録には深い内容の著作が多いですね。この『帰田録』という本は不思議な味わいに満ちています。高校で習った人もいるかもしれません。技術に習熟することの意味を考えてください。

【学問のすすめ・福沢諭吉】物欲に支配された人間の末路は哀れの一言

福沢諭吉の著書のなかで、最も有名なのが『学問のすすめ』です。新しい時代を切り拓くために何をどう勉強していけばいいのかという指針にもなりました。大ベストセラーだったのです。その中から大学入試に出た問題をピックアップしてみました。

【孔子家語】弟子・子路の直情径行をいさめ仁の心の意味を教え諭す

儒家の孔子の言葉を載せた本が『論語』です。この『孔子家語』にはそこに載りきらなかった話がたくさん出てきます。今回は弟子の子路に向かって行った忠告の意味について考えてみましょう。直情径行のある子路には考えもつかなかったことなのです。

【それから・夏目漱石】人はなぜ後悔しながら生きるのか【自由の選択】

人はなぜ後悔をするのか。難しい問題ですね。哲学者はいろいろな仮説をたてました。しかし結論は容易に出ません。1つ言えることはより自由になりたいということです。過去においての事実が書き換えられないとすれば、それをどう解釈すればいいのでしょうか。

【ガリバー・アリス・猫】読者が価値を決める【古典論・外山滋比古】

風刺小説として書いた『ガリバー旅行記』がいつの間にか童話に変質しました。童話として書いた『不思議の国のアリス』は文学書になりました。誰がそれを決めたのでしょうか。まさに時の流れと人々の心です。不思議なメカニズムについて考えてみましょう。