13歳からの地政学
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
最近、「地政学」の本がたくさん出版されていますね。
以前からあったのでしょうが、あまり目につきませんでした。
それがなぜか気になるのです。
ロシアによるウクライナ侵攻が1つのきっかけなのかもしれません。
地政学というのは文字通り、地理と政治を繋ぎ合わせた学問の領域です。
1つの国がどの地域にあるのかという現実が、政治の形を変えるというのです。
考えてみれば当たり前の話かもしれません。
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しかし今ほど、地政学の研究が必要な時はないのではないでしょうか。
今回、ご紹介する本はたまたま勤務先の図書室にあったものです。
タイトルに13歳からのとありますが、内容は実に深くわかりやすく解説してある本です。
今まで考えもしなかったことばかりでした。
著者は国際政治記者の田中孝幸氏です。
昨年の3月に出版されて以来、増刷を重ねているようです。
アマゾンの書評欄をみて驚きました。
1500人ほどの人が既にレビューを書いています。
それだけインパクトがあるということなのでしょう。
しばらく地政学の本を続けて読んでみようという気になりました。
7日間の講義
構成は全体がストーリー仕立てになっています。
7日間の地政学講義という形です。
今ほど、国同士の駆け引きが行なわれている時はありません。
高校生・中学生の兄妹と年齢不詳の男「カイゾク」との会話が全編の流れになっています。
簡単に見出しをみてみましょう。
必ず読みたくなる要素が含まれています。
1日目 なぜドルは世界中で使われるのか。
海の輸送が世界の90%を占める理由。
2日目 中国が南シナ海を欲しがる理由
日本が核爆弾を持つ日は来るのか。
3日目 なぜ国家は領土を求めつづけけるのか
4日目 なぜ王様は必要とされるのか
なぜ大きな国の人々は外国語か下手なのか。
5日目 なぜアフリカにはお金がないのか
アフリカから日本をみたらどう見えるのか。
貧しさから抜け出す方法
6日目 世界一ラッキーな土地、アメリカ。
韓国はなぜ過去のことを蒸し返すのか。
7日目 温暖化で地球はどう変わるか。
なぜ日本は極東と呼ばれるのか。
今の世界を引っ張っているのは大国アメリカです。
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ドルが世界をリードしています。
アメリカはどこの国からも攻められたことのない、広大で肥沃な土地を持っています。
ヨーロッパから東海岸をめがけて、多くの移民がやってきました。
ロシアと気候条件を比べてみれば、その差がよくわかります。
地球儀を見ながらの講義は、非常に説得力があります。
確かに地球の中でどれほどの土地を持っているかで、国力が全く違うのです。
さらに海運が発達する理由も明らかになっています。
一度荷物を積めば、最終寄港地まで積み荷をそのまま届けることができるのです。
鉄道を敷設するにはものすごい費用がかかります。
安定的な運行が常に期待できるワケではありません。
大陸間横断鉄道をシベリアに張り巡らすことを考えてみれば、すぐにわかります。
そうした点で、海に囲まれている国は潜在的に有利なのです。
世界中の貿易の90%は海運に頼っている事実を、忘れてはいけません。
深海にある核ミサイル
今日、海が持つ意味は想像以上に重いです。
なぜでしょうか。
1つは海底ケーブルの存在です。
光ファイバーの束を最も多く張り巡らせているのはアメリカです。
2位がイギリスなのです。
海をおさえたものが情報を押さえます。
データが通る場所をおさえれば、世界中の情報を握ることができるのです。
もちろん、情報には暗号がかかっています。
しかしどこまでいっても、所詮人間のつくったものです。
必ず解読される運命にあります。
もう1つのケースが核ミサイルの貯蔵です。
今や、多くの国が核爆弾を所有しています。
北朝鮮のニュースをみれば、彼らが必死で開発している様子がよくわかりますね。
アメリカ本土まで飛ぶICBMの戦略的な意味は、想像以上に大きいです。
現在も世界の大国がウクライナに武器を供与しています。
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しかしロシアに対して、大規模な反攻ができない理由は、核の存在があるからです。
核弾頭をもったミサイルを、いざという場合には使用するというロシアの声明は、けっして脅しではありません。
その核ミサイルはではどこにあるのか。
通常、他の国にわからないところに隠しておかなければなりません。
そのありかを敵に知られることは、戦略的に敗北を意味します。
そこで原子力潜水艦に積み、深海に確保する方法がとられています。
アメリカは潜水艦を太平洋と大西洋に常に沈めていられます。
ロシアはオホーツク海です。
水深が3000mはあります。
中国はどこへ
では中国はどこへ沈めるのか。
黄海では浅すぎるのです。
そこが中国最大の弱点になっています。
可能性があるのは南シナ海です。
最も深いところは5000mを超えています。
なぜ中国が死に物狂いになって海洋開発をするのか。
その理由はこれに尽きるのです。
核を保有する以上は、最も危険性の少ない深海に頼る以外にありません。
現在も海上に人工島までつくり、フィリピン、インドネシア、台湾などを牽制しています。
しかし真の狙いは核ミサイルの貯蔵庫として海がどうしても必要なのです。
この本では他に、アフリカがなぜいつまでも貧しいのかという理由も明らかにされています。
その反対の例がシンガポールです。
マレー系、中国系、インド系の人々が融合しあう政策が功を奏しました。
一方のアフリカは民族の分布に関係なく、大国によって線引きが行われ、国境が策定されました。
その結果、今も悲劇が続いています。
さらに地球温暖化によって北極海を巡る海運ルートが、新たに開発されているなどという話も全く知りませんでした。
一気に輸送距離が短くなるのです。
地政学を学んでいると、中国を主題にした話がたくさん出てきます。
日本は近隣の国とどう友好関係を築き上げていけばいいのか。
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そのための戦略として、「遠交近攻」という考え方があります。
御存知ですか。
遠い国と親密にして、近くの国とは疎遠な外交をする事をさします。
古代中国の有名な戦略を、現代の外交政策や経済活動に適応させたものです。
日本に関していえば、韓国や中国には厳しくして欧米各国とは親密にする一連の動きなどをさします。
遠い国とは親密度を保ちながら、近い国とは友好的な関係を無理に築きません。
もしも戦争が始まった時、そこに攻め入る可能性が出てくるからです。
これは外交だけでなく経済活動でも使われる思想です。
異業種とは交流するものの、ライバルである同業者とはあまり密な関係を築かないのが一般的です。
現在のアメリカの戦略も、この基本線にのっとっています。
中東などでも敵視する国の隣国とは友好関係を結ぶという、常套手段をとっています。
世界の現実は冷徹です。
奪われた土地は戻ってきません。
クリミヤ半島はどうでしょうか。
北方4島の返還も頓挫したままです。
それだけにウクライナでの戦争がいつ終結するのか。
予断を許さないのです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。