【出版翻訳家】出版業界の実態を赤裸々に綴ると悲しい【今は警備員】

夢を持って

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はちょっと出版界の裏側についての話です。

今は本が売れません。

活字を読むことが苦しい時代になりました。

Youtubeに代表される動画が圧倒的な人気です。

本なんか読んでいる暇があったら、ネットを見ようということでしょうか。

これも時代の流れですかね。

新聞も契約者数が減っています。

ネットに広告が流れ続けている時代なのです。

突然ですが三五館という出版社を知っていますか。

ここのところシリーズ化された本を続けて出してヒットしている版元です。

新聞にも広告を打っているので、見かけた人もいることでしょうね。

本を手にしたのはつい数年前でした。

とにかくイラストが特徴的なのです。

絵を見れば誰でもあああれかと思います。

それくらい特徴的なのです。

『交通誘導員ヨレヨレ日記』
『派遣添乗員ヘトヘト日記』
『メーター検針員テゲテゲ日記』
『マンション管理員オロオロ日記』
『タクシードライバーぐるぐる日記』
『非正規介護職員ヨボヨボ日記』
『ケアマネジャーはらはら日記』

次から次へと妙なタイトルの本が出版されています。

1冊だけ読んだ感想

今までに読んだのは『交通誘導員ヨレヨレ日記』だけです。

なんとなく悲しくなる内容でしたね。

どんな仕事でも大変ですけど、とりわけ外に1日中立ち続けるというのは過酷です。

工事関係者やドライバーの人から苦情を言われ続けるワケですからね。

善人はどこにいるんだろうとつい思いました。

なんとなく読み飛ばしたというのがふさわしいです。

つい先日NHKの『プロフェッショナル』でも82歳の交通誘導員が紹介されていました。

こっちはヨレヨレどころか、かくしゃくとしたものでしたね。

誇りを持って仕事をしている姿に感動しました。

どういう視点から捉えるかで、同じ仕事が全く違ってみえるのを強く感じました。

いずれにせよ、どれも本当に大変な仕事ばかりで、彼らの目線から世の中を見ていくというのが、このシリーズの特徴になっています。

ここにあげた本も確かに1つの見方ではあります。

人の世はつらいことばかりです。

しかしそこに喜びがないワケではないというところがミソですかね。

そんな中、ちょっとタイトルは違うものの、同じイラストに惹かれてつい読んじゃいました。

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』がそれです。

出版には今も興味があります。

角川書店を退社して幻冬舎を設立した見城徹の本は何冊も読みました。

最近では『読書という荒野』が面白かったですね。

しかしヒットが出てやっと1人前の世界です。

その厳しさは半端じゃありません。

自分も翻訳をしてみたいとか、作家になりたいという人はぜひ読んだ方がいいです。

ここまで苛酷だとちょっと飛び込む勇気がくじけてしまいそうです。

出版社はどのようにして儲けをだすのか。

当たり前でけど、本が売れればいいのです。

そのためには人気のある作家や翻訳家を抱えている必要があります。

しかし大手の出版社でもない限り、お抱えの先生を持つなどということは、そんなに簡単じゃありません。

業務委託

出版すれば必ず決まった数の本が売れるなんていう作家はそれほどいません。

今はほとんどいないと言った方がいいでしょうね。

毎日、本屋さんに通っていればよくわかります。

元々書店というのは一時預かりの中継地点のようなものです。

展示スペースが限られているところにコンピュータで配本された本が次々と届くのです。

箱を開けて並べるだけでも重労働です。

しかもしばらくしたら返品することの繰り返しです。

売れない本は並べたくもない。

出版社だってそうです。

売れない本でも文化の向上のためにと言っていられるうちはまだいい方です。

しばらくすればヒットしない本など出したくもないということになってきがちです。

もちん全ての出版社が全部そうだというワケじゃありません。

889520 / Pixabay

売れなくても出し続けている会社もあります。

何度倒産しても新社をつくり、再び頑張ります。

本は知の文化なのです。

しかし一方では厳然とした企業ですからね。

社員に給料を払えないのではどうにもなりません。

この本の著者は宮崎伸治という翻訳家です。

みなさん、名前をご存知ですか。

ものすごい数の本の翻訳をしています。

特に自己能力開発や語学の勉強法といった内容のものが多いようです。

自分を変えたい、向上させたい、仕事で成功したいといった願いをつよく持っている人が読むタイプの指導書が多いです。

ベストセラー『7つの習慣』などは読んだことのある人もいるかもしれません。

しかし彼の扱われ方はひどすぎますね。

最初の印税の契約を簡単に下げられたり、担当者が変わったからといって出版を先に延ばされるくらいはあたりまえ。

もっとひどいのは印刷機が壊れたからというワケのわからない理由までつけられる始末です。

さらには相手が裁判所の調停に出て来ず刊行を延ばし延ばしにされるといった話を読んでいると悲しくなります。

結局最後は出版の中止です。

売れないからという判断が先にあって、後から理由をつけたというところでしょう。

頼まれれば3カ月から半年ほど、その翻訳に携わるワケです。

それなのに本が出なくなった時の落ち込み方は想像がつきます。

菓子折り

和解しようとして相手の出版社の担当が菓子折りを持ってくるシーンもでてきます。

絶対に開けずにドア越しに話をするシーンでは思わず笑いがこぼれてしまいました。

玄関の床に寝そべって郵便受けの穴から編集者の顔を見ます。

ほとんど笑い話のレベルですね。

本書の半分はお金にからむ裁判に至る話です。

そこまでしないと翻訳料を払ってくれない会社が多いようです。

これでは心を病むのも当然でしょう。

leovalente / Pixabay

とうとう最後には精神科の治療を受けることになりました。

人間不信ですね。

もう好きな翻訳もできません。

出版界の問題点は口約束が多いところです。

執筆前に契約を交わしたとしても、その内容が変更されることもあるのです。

どこまで人を信用すればいいのか。

それもよくわかりません。

好きだからいいでしょという世界でお互いに甘えあっているところもあります。

原稿料もいくらなのか振り込まれるまで知らなかったという話はいくらでもあります。

印税は10%くらいかと思っていました。

とんでもないでね。

最初の6%が突然4%になった話にはさすがに驚きました。

トラブルの多発で机の前に座る自信がなくなったのでしょう。

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今は業界から離れて警備員をしているとか。

そこにしか心の安住する場所がなかったという事実が悲しすぎます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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