【文七元結・浅草・吾妻橋】江戸落語の粋はこれで決まり【人情噺】

落語

憧れの噺

みなさん、こんにちは。

アマチュア落語家でブロガーのすい喬です。

やっと少し春めいてきましたね。

気分もいくらか楽になりましたけれど、コロナは相変わらずです。

この先どうなるんでしょうか。

こういう時は好きな落語を聞いて、気持ちを落ち着けるしかありません。

久しぶりに柳家小三治の「文七元結」を聞きました。

40分以上はかかる長い噺です。

志ん朝が亡くなった後、正統な江戸落語を引き継ぐのは、この噺家以外にいないと思っています。

江戸前のべらんめえ調は一朝一夕にできるものではありません。

最高の録音技術で録られた高座だけに、息の調子までが手に取るようにわかりました。

「文七元結」は本で読むだけでも引きずり込まれる内容を持っています。

代表的な人情噺の1つです。

今までもいろいろな落語家の口演を聞いています。

自分でもやりたいと思い、いつかはと願っている噺なのです。

しかし残念なことにまだチャレンジしていません。

なぜなのか。

人情噺はぼくもいくつか持っています。

親子の噺だとやはり「子別れ」でしょうか。

これはいつやってもその中にスッと入っていけます。

「ねずみ」なども好きですね。

しかし「文七元結」のハードルは想像以上に高いです。

自分でもどうしてだろうと考えることがよくあります。

きっとリアリティの問題なんです。

主人公と同じ行動をおまえはとれるのかという問いの前で、つい躊躇ってしまうのです。

ここが解決しない限り、この噺は稽古が進まないかもしれません。

夢物語だと言ってしまえばそれまでです。

それでも本当のように演じきれるのかというところが最大のポイントでしょうね。

あらすじ前半

主人公は本所達磨横町に住む左官の長兵衛です。

腕はいいものの、博打が好きで借金だらけの暮らしをしています。

娘のお久が吉原の佐野槌に自分の身を売る決心をしたのも母親の苦労をみていられなかったからです。

お前いくらあったら仕事にかかれるんだいと訊く女将。

長兵衛は50両あればなんとかなると言います。

それじゃ来年の大晦日までは待ってあげよう。

それまではこの娘は預かる。

だけど大晦日が一日でも過ぎたらこの娘は見世に出して客を取らせるよ。

Photo by tablexxnx

大金を懐にした長兵衛は大門から見返り柳を後に吾妻橋まで来ます。

すると若者が身投げをしようとしているのです。

男は横山町の鼈甲問屋、近江屋の手代、文七でした。

水戸屋敷から集金の帰り、スリに50両を奪われたというのです。

長兵衛は思い留まらせようとします。

しかし文七はどうしても死ぬと言って聞きません。

旦那に会わせる顔がないという男に、娘がつくってくれた50両を投げつけてその場を去ります。

本当ならおまえなんかにやりたくない

しかし死ぬっていうからくれてやる。

文七は石をなげつけられたと思います。

しかし財布の中には確かに50両が入っていました。

後半

文七が店へ帰ると主人も番頭もまだ寝ないで待っていました。

文七が50両入った財布を差し出すと、2人が怪訝そうな顔をします。

半七が盗まれたと思った金は碁盤の下に置き忘れてきたのです。

水戸屋敷から既に届けられていました。

文七ははじめて吾妻橋でのことを話します。

近江屋の番頭が佐野槌を訪ね事情が全て明らかになりました。

一方の長兵衛の家では夫婦喧嘩の最中です。

そこへ近江屋がやってきます。

vandonov / Pixabay

50両を返済しに来たのです。

さんざん揉めた末、長兵衛はお金を受け取ります。

そこへやってきたのが立派な駕籠に乗った娘のお久でした。

文金の高島田にきれいな着物姿です。

すっかり化粧した姿は錦絵から抜け出たかのようです。

お父っつん、あたしこのおじさんに身請けされて、家に帰れることになったの。

この声を聞いて隠れていた長兵衛の女房も飛び出して来ます。

お久とすがり合って泣くのです。

文七とお久は結ばれ、麹町貝坂に元結屋の店を開いたというというめでたい台詞があってこの噺は終わります。

リアリティの出し方

どうでしょうか。

今の時代にこんな話が成り立つのかどうか。

所詮、夢物語だよと言われてしまえばそれまでです。

自分の娘が苦界に身を沈めるのを知りながら、見知らぬ男に大金を投げつけて逃げるという主人公が想像できるか。

左官の長兵衛が無理なく演じられるのかどうか。

最初の難しさはまさにここです。

本当にそこまでやれるのかどうか。

長兵衛にもたくさんの葛藤があります。

なんとかならないのか。

どうしても死んじゃうのかと何度も訊くのです。

今の主人に拾ってもらってここまで育ててもらったという半七の境遇も悲しいものがあります。

もう1つは吉原の女将の描き方です。

長兵衛に諭すように話す時、スケールの大きさが出ないと真実味がありません。

おまえさんくらいの技量の左官職人ならばといいながら、説得を続けます。

娘にはあたしの身の回りのことをしてもらいます。

店には出しません。

女一通りのことを習わせてあげます。

そのかわり、約束の期限までにお金が返せなかったら私は鬼になるよ。

この子を店に出します。

病気になってもあたしを恨んじゃいやだよ。

ここでの佐野槌の女将の台詞はぼくの大好きなところです。

なんとか長兵衛に立ち直ってもらいたい。

一人前の左官職に戻ってほしいという願いをこめて語らなければなりません。

本当に難しいところです。

この噺に登場する人物の中では1番好きな人ですね。

夫婦喧嘩の描写も難しいです。

geralt / Pixabay

長屋暮らしの庶民の味を出さなくてはいけません。

そこへ頭を先頭にして、娘が送り返されてきます。

最後は文七と娘お久との祝言、元結問屋の繁栄という、気持ちのいい大団円になるのです。

善人だけで描かれた世界といえば、まったくその通りです。

しかしここには親と子の美しい愛情が痛いほど描かれています。

以前、歌舞伎でも菊五郎の主演で見たことがありました。

しかしぼくにはやはり落語の方が、より近いものを感じます。

人情噺には人間の感情の世界が色濃く描かれます。

この噺を聴くたびに人間はいいなとしみじみ思うのです。

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「文七元結」はいつか必ずチャレンジしたい噺の筆頭ですね。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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