突然の寄席休館
みなさん、こんにちは。
アマチュア落語家、すい喬です。
コロナ鬱の日々をいかがお過ごしですか。
ここしばらく寄席にも通っていません。
自分が出演する予定の高座もみんなつぶれちゃいました。
お稽古をする気にもなかなかなれませんね。
落語はお客様あっての芸だとしみじみ思います。
しかしぼくはアマチュアですから、まだ暢気なもんです。
いずれ解禁されたら頑張ろうですみます。
問題はプロの噺家さんです。
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現在、東京と大阪あわせて約900人の噺家がいるといわれています。
正式な数は毎日かわるので、まあ、そんなところじゃないかというところです。
いかにも落語の世界ですかね。
さて彼らの生活はどうか。
ほとんどの人は全く仕事がありません。
なにしろ落語の興行は3密です。
せまいところに座って笑うワケですから、飛沫が飛び散る。
これじゃとうていやれません。
どうしようもないのです。
寄席も全部休館。
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元々、寄席は1年中休まないというのが売り物なのです。
それがこれだけ長い間なんにもしていないというのは、前代未聞です。
900人の噺家は毎日、空を眺めてはため息をついているのです。
しかしそれじゃあ、あんまり情けないというので始まったのがデジタル落語会。
最近では専門のサイトもできました。
デジタル落語会は花盛り
ぼくも暇ですから毎日見ています。
youtubeの生配信なんて、今まであったでしょうか。
おそらくその先鞭をつけたのが、ちょっと前に真打昇進披露をアップし続けた神田伯山です。
彼の「伯山TV」はものすごい数の視聴者を引き付けました。
生ではありませんが、29日間、毎日寄席の披露興行を楽屋風景と一緒に流したのです。
おそらくこれだけ楽屋の風景が多くの人の目にさらされたのは初めてだったと思います。
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最後に披露をする予定だった国立演芸場が閉まってしまったため、その部分だけはなくなってしまいましたけどね。
この配信にあわせて、彼の名前はあっという間に広まりました。
今までそれほど話題にならなかった講談というジャンルにまぶしいくらい光があたったのです。
それ以後の活躍はご存知の通りです。
おそらくこれがなかったら、今度のデジタル配信にまで進んだかどうか。
1つの大きなきっかけになったことは間違いありません。
アベマTVは5月2日(土)に寄席番組を無料で生配信しました。
出演した落語家は柳家さん喬、入船亭扇遊、柳家はん治、柳家喬太郎、林家彦いち、桃
月庵白酒、隅田川馬石、三遊亭歌奴、古今亭志ん陽、春風亭三朝。
色物は曲独楽の三増紋之助、粋曲の柳家小菊です。
すごい顔付けですね。
トリはさん喬師匠の「幾代餅」でした。
午後4時から9時までという長丁場で、寄席をそのまま意識したものです。
たっぷりと楽しませてもらったのは言うまでもありません。
その前後、最も話題になったのが春風亭一之輔の10日間生配信です。
4月下旬から本来寄席に出ていたと同じ時間に流しました。
初日こそ、少しハム音が入り聞きずらかったものの、残り9日間は明瞭な音で、落語家の現在をそのまま伝えたのです。
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投げ銭などというユニークなシステムを使い、目の前で金額が積みあがっていくことに驚きました。
今もYoutubeにその時の落語がアーカイブとして残っています。
10万人以上が視聴している回もあり、彼の人気度をチェックすることも可能です。
池袋演芸場からの配信
その次に配信を試みたのが、古今亭菊之丞です。
この落語会がユニークだったのは、池袋演芸場の高座をそのまま借りたことです。
全くの無観客で、3日間配信しました。
最終日には弟弟子の文菊を呼びました。
「あくび指南」のような間の読みにくい噺を文菊は落ち着いて演じたのです。
菊之丞は寄席が休演になってから、家で何をしたらいいのか考えたそうです。
あれやこれやとやってはみたものの、やはり噺をしたい。
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それならばというわけで、池袋演芸場を借りる決心をしたとか。
NHKアナの奥様の助言もあったそうです。
この配信は非常にいい精度で映像もきれいでした。
2日目は音が少し切れたりもしましたが、後にきちんとなおしたものを配信したのです。
現在もアーカイブとして残っています。
特に女性の前座が2つの噺をネタおろしでデジタル配信したことも驚きです。
菊之丞はリクエストに応える形で、最も人気のあった「紙入れ」も演じました。
歌舞伎俳優や落語家の物まねを入れた「法事の茶」という珍しい噺も披露したのです。
とっても楽しそうでした。
無観客で落語をやることの難しさは噺家自身が1番よく知っていることです。
何が難しいのか。
ズバリ「間」です。
お客がいれば笑い、そこに少しの「間」が生まれます。
これが落語の命なのです。
それをあるものとして頭の中に埋め込み、演じないと、ただ喋っているだけの芸に成り下がってしまいます。
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かつて三遊亭圓生は自分の持ちネタを全てレコードに収録しました。
この時の鬼気迫る様子は「圓生百席」として残っています。
その時のディレクター、京須偕充が『圓生の録音室』(ちくま文庫)というすばらしい本にまとめてくれました。
これを読むと、落語は「間」が全てだということがよくわかります。
菊之丞は昨日も池袋演芸場で「唐茄子屋政談」をやりました。
アーカイブもあります。
今後の課題は何か
これらと前後して、今やデジタル配信は花盛りです。
なかには文蔵組のように本格的な機材を持ち込んで配信しているものもあります。
これは無料ではありません。
その他にも「渋谷らくご」「道楽亭ネット寄席」などいろいろとあります。
代金をとって配信を受け取るというスタイルは、これからの流れになるような気がします。
無料のでは古今亭菊太楼が家での録画を配信しています。
林家正雀も家からほぼ毎日撮ったものをYoutubeに載せています。
正雀の「元犬」など、聞けるとは思いませんでした。
柳家三三も配信をしています。
自分でも言っていますが、著作権などと絡むので、お囃子などにも気をつけ市販のCDなどは一切使っていないそうです。
問題は映像と音の精度です。
どうしてもアマチュア用の機材で収録すると、いい出来にはなりません。
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ここがデジタル配信のポイントでしょうか。
さりとてプロに頼めばそれだけの費用がかかります。
悩ましいところです。
もう1つの大きな問題は1度配信されると、アーカイブとして幾らでもコピーできることです。
Youtubeなどはかつてと違い野放しでコピーはできない仕様になりました。
しかし専門のソフトを使えばそれもある程度可能です。
考えようによっては落語の映像は噺家の財産そのものです。
タレントが写真1枚の肖像権にこだわるのと同じです。
現在の噺家の生の映像を無料で見られ、それがコピーできるとなると、将来の落語会のお客になってくれるのかどうかに疑問も残ります。
春風亭一之輔は来週5月21日~30日(20:30から)、再び10日間の無料配信を予定しているのだとか。
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今回は色物の芸人とのコラボも予定しているそうです。
もし自分が配信をしたとしたら、何人の人が見たかはものすごく気になるでしょう。
よかったらYoutubeの閲覧者数をのぞいてみてください。
はっきりと人気の差が出ています。
現在、何人の人が見ていますというあの数字は何を意味しているのか。
1番よく知っているのは、当の噺家自身なのです。
現実をつきつけられる瞬間です。
今後の展開を注目していきましょう。
最後までお読みくださりありがとうございました。