【発心集・鴨長明】煩悩の虜になると名僧も十悪の罪業に陥る危険が

人間の煩悩には限りがありません。鴨長明の書いた『発心集』には薬師寺の僧侶の話がでてきます。律師という高い位にのぼったにも関わらず、さら上の位をねらおうしたのです。その結果はどうなったのでしょうか

【雲居にのぼる橋・唐物語】中国の偉人伝を翻案したユニークな説話集

【雲居にのぼる橋』という説話を紹介します。これは「唐物語」という中国の偉人伝を翻案したユニークな説話集の中にあるものです。日本人が書いた本の主人公が中国人という不思議な体裁の話なのです。

【腹悪しき女房・沙石集】親孝行と嘘をつくことの重みを考えると【説話】

仏教説話『沙石集』の中にある話です。母親の主張に反論もせず、息子は自分の土地も召し上げられそうになります。原因は暴力をふるったということにありました。しかし実際はつまづいた母親の言いがかりだったのです。

【雲林院の菩提講・大鏡』2人の老翁の出会いが昔物語の世界を創った

『大鏡』は歴史物語の代表です。藤原道長の威光を記録した作品です。読んでいると実に生き生きとした道長の様子が見事に描かれています。楽しいです。その昔話をしているのが2人の老人なのです。180歳と190歳というのですから、驚きですね。

【日知録・コンプライアンス】法令が細分化されると人間は次第に無気力になる

『日知録』は中国の清朝の顧炎武の著書です。さまざまな儒学の思想を日常的な儒学の中に実学として落とし込んでいます。それだけに読んでいると、なるほどと納得させられる内容に満ちています。今回は法令の細分化が持つ落とし穴についてです。

【戦国策・三人成虎】同じことを何人にも言われると人はつい信じてしまいます

『戦国策』という本の中には実に多くの知恵がつまっています。その1つ1つが論客たちによって説かれた内容なのです。今回は同じことを何人にも言われると、最後はかぎりなく真実になるという話です。

【地球へのピクニックと二十億光年の孤独】谷川俊太郎の世界は豊かで寂しい

谷川俊太郎の詩は不思議な魅力に満ち溢れています。ことばに対する感性がなみなみでないのです。誰もが使っている言葉の背後に全く別の力を見つける能力が宿っています。そのパワーで新しい世界をつくり続けてきました。

【千曲川旅情の歌】島崎藤村の詩を読み時の流れに身を浸したい【五七調】

島崎藤村の詩の中で、最もよく知られたものです。日本人なら、誰でも1度は口にしたことがあるはずです。ぜひ、暗記して声に出してください。心地がとてもよくなります。彼の持っていた抒情性が見事に結晶した詩です。

【富士山記】平安時代の儒学者が残した霊山への畏敬【漢詩文の傑作】

『富士山記』という日本人の儒学者が書いた漢詩文の本があります。当時は漢字を書ける人の数がそれほど多くありませんでした。文章博士でもあった筆者が全て漢字で、富士山の記録をまとめたというユニークな本を紹介します。

【紫式部日記・憂愁】藤原道長の野望は若宮の誕生でかなえられたのか

『紫式部日記』にはさまざまな内容が盛り込まれています。誰にも読まれないはずの日記だけに、彼女の心の声が見事に浮かび上がっているのです。NHKの番組でクローズアップされて以来、道長との関係がよく取沙汰されています。さて真相は…。

【世説新語】曹操が顕彰碑の謎を解けず臣下に完敗したという心爽やかな話

『世説新語』はいろいろな人のユニークな話を集めた人気のある本です。その中でも曹操の豪胆ぶりは見事なものです。ある顕彰碑に書かれた漢字の意味が分からず、先に謎を解いた臣下に負けてしまう話です。心爽やかないい話ですよ。

【ベル・エポック・絲山秋子】独身女性同士の友情の切なさが身に沁みる短編

作家、絲山秋子の短編『ベル・エポック』は実に切ない作品です。けっして難しい言葉を使っているワケではありません。しかし30歳を過ぎた頃に知り合った女性同士の友情の難しさというものをしみじみと感じさせます。いい小説です。

【小説とは何か・三島由紀夫】現実を震撼させる言霊の在りかは【遠野物語】

小説とは何かということを考え始めると、その難しさがひしひしと迫ってきます。作家、三島由紀夫はどう考えたのでしょう。そのヒントになるエッセイが『文学国語』の教科書に載っていました。『遠野物語』にヒントを得たというのです。

【捨てない女・多和田葉子】書き損じの原稿用紙は燃やしてもいいの?

作家、多和田葉子の掌編です。本当に短い作品なので、何を表現しようとしているのかが、よくわからないかもしれません。しかしシュールな切り口が、とても爽やかです。捨てるという行為と書くという作業との間にある距離がよく見えてきます。

【源氏物語・須磨】栄達への転機となった光源氏の歴史絵巻【貴種流離】

『源氏物語』は日本が誇る世界に通用する文学です。その12段に「須磨」の巻があります。ここで光源氏は今までにない流離の生活をします。そこからの復活にはかなりの時間がかかりました。しかしここでの成長が、それ以後の出世を約束したのです。

【徒然草・54段】必要以上に小細工すると結果は予想より惨めになる

徒然草はいつ読んでも心に残る本です。今回はまたもや仁和寺の法師の話です。よほど、このお寺に親近感があったのですね。必要以上に手を入れたりすると、結果は惨めなものになるという話です。愉快なので、ちょっと読んでみてください。