民主主義の後退
みなさん、こんにちは。
小論文指導歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は2023年度入試小論文テーマの予想をしたいと思います。
今年度もコロナとの戦いが続いていますね。
少し規制を緩めると、すぐに新規陽性者の数が増えるというイタチごっこを繰り返しているのです。
また今年の2月末、ロシアのウクライナ侵攻が始まりました。
NATO(北大西洋条約機構)加盟国対ロシアとの対立です。
今までの戦争と違うのは、食料の輸入が一気に難しくなった点です。
小麦に代表される穀物の輸入ができなくなり、その他の食料品の値段も大幅に上がりました。
さらに7月に入り、ロシアは日本に対する液化天然ガスの供給を止めようとしています。
国民の生活が一気に不安定になりつつあるのです。
日銀によるゼロ金利政策の長期化は円安の流れを止められません。
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輸入産品の値上がりはあらゆる業種に及んでいます。
猛暑の夏になっても、部品の調達ができず、半導体不足により家電製品の値上がりが続いています。
今や、それぞれの国が自分のテリトリーを守ろうと必死です。
中国は完全に香港をその傘下におきました。
ミャンマーでの軍部支配も続いています。
民主主義の後退があちこちで起こっているのです。
入試では政治の問題がストレートに出るケースはあまり多くありません。
しかし私たちの生活レベルの細かい事象をとらえ、その根本的な原因が何かということを問う問題は出ます。
小麦粉の値上がりの背景や、その解決への糸口をグラフや政治的な社会現象から読みとく問題なども、出題される可能性があります。
なぜロシアはウクライナへの侵攻を開始したのか。
その結果、どのような現象が起こったか。
確実におさえておいてください。
大学入学共通テスト
昨年度まで予想するのが難しかったのが、この新テストの動向です。
結果的には従来のセンター入試によく似たパターンに落ち着きました。
しかし難化の傾向が続いています。
特に今年度は数学Ⅰ、数学ⅠAの難易度がきわめて高く、評価は低いものでした。
また平均点が過去最低だった日本史、問題量が多いと指摘された生物、化学など、適切でなかったとされています。
従来も新テスト開始後数年間は、難化する傾向がありました。
今後しばらくは微調整が行われながら、進むと考えられます。
基礎基本を着実にマスターしていけば、きちんとした結果が出るタイプのものが出題されるはずです。
安心して勉強を続けて下さい。
もう1つ、ポイントになるのが推薦入試の動向です。
スポーツにおける全国大会の結果なども、きちんと反映される下地ができました。
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文化面における研究発表なども盛んです。
その意味ではデータを明確に俎上にあげることが可能です。
臆することなく、自信をもって前にすすんでください。
私大の首都圏定員厳格化の流れもわずかに緩みつつあります。
付属校や指定校の数、入学許可人数がどのように動くかによって、総合型(AO推薦)枠の増減が微妙に変化します。
早い大学では夏休み前後からエントリーが開始されます。
情報を正確に手にすることが、もっとも大切です。
推薦入試は現在、入学定員の半数に近くなっています。
来年度もこの傾向に変化はないでしょう。
情報を制するものが入試に勝つのです。
2023年度入試予想テーマ
さて来年度入試、最大のテーマは何でしょうか。
それは昨年度とかわりありません。
ズバリSDGsです。
2023年度もこれが主流を占めるでしょう。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
ただし内容はさらに複雑なものになると考えられます。
一般的には17項目の目標が目に浮かびますね。
つねにこのポイントが先行しているのです。
しかしその内側には169のターゲットがあります。
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最初にこの内容をきちんと調べておいてください。
そこから自分に最もヒットするものをいくつかとりあげます。
大切なのはその問題を解決するための糸口を自分なりに構築することです。
小論文のカギは解決策を提示することなのです。
もちろん、簡単ではありません。
SDGsの基本中の基本は貧困と飢餓の撲滅です。
しかし現実をみてください。
ロシアのウクライナ侵攻によって、次々と住民が各国へ避難しているではありませんか。
この厳しい現実の前で、SDGsを現実化することがいかに困難なことか。
掛け声だけではダメです。
現実を直視してください。
アフリカでは新しくサル痘と呼ばれる感染症がみつかりました。
世界中に伝染するかもしれないという危機感が広がっています。
この事態の中で、あなたに何ができますか。
それを自分の言葉でまとめておくことです。
気候変動
夏の猛暑が日本全体を襲っています。
かつての暑さとは格段に違いますね。
気候変動の波が地球全体を覆っているのです。
熱を持った大気を外に逃がす手段がありません。
地球温暖化もSDGsの大きなテーマの1つです。
二酸化炭素の放出量をどのようにしたら減らすことができるのか。
自分の言葉で真剣に考えてください。
電気自動車の開発、再生可能エネルギーへの依存。
原子力発電は炭素を出さないものの、高い危険性をつねに孕んでいます。
それでも問題解決への糸口はあちこちにあります。
179のターゲットを全てチェックしてください。
その他ではAIと関連させて、人間らしさとはなにかということが来年度のポイントです。
人間の幸せとは何かという最も根本的な問題です。
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これはどのようにでも書ける難しいテーマです。
これだけ複雑になった格差社会の中で、私たちは何を目標に生きていけばいいのか。
よくわからなくなっているのです。
少子高齢化などは、日本だけに固有の問題ではありません。
コロナ禍を我慢して生き抜いてきたものの、これから先は未知数です。
多くの人たちがアイデンティティの喪失に直面してます。
未来に対して不安な親たちは、こどもに何を託せばいいのか。
生きることそのものへの懐疑も消えていません。
ここまで2023度入試に対する予想をしてきました。
基本は昨年度とほぼかわっていません。
大切なのは「分かち合う」思想でしょう。
しかしそれがなかなか現実のものになりません。
多数の文化が共生していくために、想像力が必要なことは言うまでもないのです。
しかしそれを実践することの難しさも、同時に考えなくてはなりません。
それぞれのテーマに対する理解の幅を広げることが大切です。
正義をふりかざすだけでは、何も解決しません。
今は共感がなによりも必要なのです。
難しいテーマばかりです。
全て自分の問題として引き受け、考えをまとめてください。
どれが出ても書き込めるように準備しておくことが必須なのです。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。