【都立高推薦入試・日比谷】SDGsがついに直球コースで出題された

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みなさん、こんにちは。

小論文20年の添削歴を持つ元都立高校国語科教師、すい喬です。

現在、2021年度都立高推薦入試問題をチェックしている最中です。

コロナ禍の中、どのような問題が出題されたのか、大いに関心のあるところですね。

受験生の皆さんは合格発表も終わり一段落しているところでしょうが、これから分析にかからなければなりません。

また惜しくも不合格だった人にとっては、一般受験が待っています。

実力を出し切って栄冠を勝ち取ってください。

今回の入試でも難問の出た学校がいくつかありました。

大学入試にそのまま転用しても十分に通用する内容だと思います。

よほどの予備知識がないと、立ち向かえなかったのではないでしょうか。

日比谷高校の問題はまさに直球ストライクコースでした。

SDGsに向けて有無を言わせないまっすぐの球です。

三振するならその覚悟でバットを振れとでもいわれているような小気味よさといえばいいのでしょうか。

詳しい内容を知りたい方は同校のHPにPDFが掲載されています。

制限時間は問1、問2あわせてわずかに50分。

字数は問1が120~140字。

問2が420~460字でした。

正直なところギリギリだと思います。

特に問2は難しかったのではないでしょうか。

図が3枚出されています。

図1は誰でも1度は見たことのあるごく有名なものです。

17の目標がわかりやすいイラストで描かれています。

問題は図2です。

これはほとんどの人が初めてだったのではないでしょうか。

世界のSDGsの達成度評価を表にしたものです。

意外な視点

この表が意味するところは実に深いです。

正直なところ、世界の国々はここまで達成度が低いのかという驚きがありました。

受験生にそこまでの余裕はなかったでしょう。

順番が逆ですが、問2から先にみていきます。

問題文を要約しておきます。

図2と図3を見て、現在の日本が世界をリードしてその取組を発信できる目標を示しなさい。

その目標を選んだ理由と具体的に日本がどのような取組を行い、国際社会に貢献していけるのかを書きなさいというものです。

正確に2つの図を読み込まないと、的外れになってしまいます。

ここでSDGsについておさらいをしておかなくてはいけないでしょうね。

中学3年生でどの程度の知識を蓄えておかなければいけないのか。

これはなかなかに難しいです。

ここしばらくの間、このテーマは出題されるだろうと思われます。

以前簡単にこの内容に触れる記事を書きました。

最後にリンクを貼っておきます。

後で読んでみてください。

SDGsは2015年、国連加盟国により採択されました。

正式名称は「Sustainable Development Goals」です。

「持続可能でよりよい世界の実現を目指すための国際目標」と訳しています。

17の目標が掲げられ、その達成目標は2030年。

169のより細かなターゲットから構成されています。

貧困、環境、教育、経済といった目の前にある問題ばかりです。

前身はMDGs(ミレニアム開発目標)と呼ばれました。

以前はここまでの盛り上がりには欠けていたのです。

しかし途上国だけでなく、先進国と呼ばれている国にも多くの問題があることが浮き彫りになりました。

それがまさに今回の試験に出た図2の衝撃です。

先進国の貧困問題

提示された図2をみていると、ヨーロッパやアメリカでも貧困の問題は解決されていません。

日本でも子供の貧困などが話題になっています。

アメリカ、ブラジルでは重要な課題にランクされ、カナダ、日本、ドイツ、イギリスなども継続して取り組むべきテーマになっているのです。

飢餓や貧困といえば、アフリカやアジアの国を連想しがちですが、けっして単純な構図ではありません。

教育の問題も複雑です。

インドなどでは農繁期が終わると、都市へ出稼ぎにいくケースも多くみられます。

子供を一緒に連れていけば、教育の機会が失われます。

地元に雇用がないということが教育の場の放棄につながるのです。

農閑期にも雇用を生み出すための方法を考えなければなりません。

卵と鶏のどちらを与えれば、より豊かになれるのか。

現金を直接渡すことと、雇用を生み出すミシンの使い方を知ることとどちらが大切なのか。

ムハマド・ユヌスが立ち上げたグラミン銀行を御存知ですか。

バングラデシュにある銀行でマイクロファイナンスの機関です。

貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資を主に農村部で行っている組織です。

こうした考え方もここでは重要なものとなります。

わずかな予算でも何かできることはないかと工夫することが大切なのです。

しかし2030年という短い目標値までに達成可能なのかどうか。

それも大きなテーマとなり得ます。

特にコロナ禍の中で、本当にやり遂げられるのかという疑念が沸き起こってしまいました。

それまで生きて達成するだけの意志を持続できるか。

もっと言えば、世界が遠くなりつつあるというのが実感です。

外国への渡航が著しく制限され、活動をすることそのものが難しくなりつつあります。

代替装置としてのネット利用に全てを託さなければなりません。

そのもどかしさは、実際に運営している人たちの実感です。

内向きの思考

今回の問題であらためて認識しなおさなくてはいけないことがいくつかありました。

それは17の目標を支える169のターゲットです。

今回のことでこの169の内容をもう1度再確認するべきだと思いました。

詳しい内容はネットや書籍などにあります。

実に細かなもので、逆にいえばこれを1つ1つ達成していくことの道の遠さを感じました。

わずか10年で世界がここまで進めるのは不可能だと考えてしまいがちです。

日比谷高校の問題でも問1は、各目標の背景にある複雑な関係を問うものでした。

つまりテーマは相互に依存しあっているのです。

ある目標を達成しようとすれば、別の目標とバッティングします。

犠牲にしなくてはならないことが必ず出てくるのです。

問1の設問は次の通りでした。

仮に「飢餓をゼロにする」という目標のために「農地を増やす」という解決策を考えたとする。

これにより良い影響が及ぶと考えられる目標と、悪い影響が及んでしまうと考えられる目標をそれぞれ示し、その理由を書きなさいというものです。

農地を増やすとどうなりますか。

当然のことながら地球温暖化が進みます。

qimono / Pixabay

環境問題を悪化させるのが目に見えます。

陸の豊かさを守るという意味で、自然林が減少していきます。

木を伐採すれば樹木に吸収されるはずの二酸化炭素が大気中に残ってしまうのです。

農地の拡大は温室効果ガスの排出を増やしてしまう結果になります。

しかし農地を増やせば、作物が増産され、飢餓を少しでも減らすという効果が出ることは誰にでもすぐに理解できることです。

その意味では大きな効果があるといえます。

たった1つのアクションでも、このように次々と問題が波及していくのです。

それだけにこのテーマが一筋縄ではいかないという理由が理解できるのではないでしょうか。

今回の入試問題はその入り口のところを示唆したものにとどまります。

しかし内容は非常に高度で難しいです。

今後ますますこの問題があらゆる角度から出題される可能性があります。

時間がありましたら、169のターゲットについても調べてみてください。

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そのうちの1つのテーマを考えるだけでも十分な意味を持ちます。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。

【小論文】世界が合意したSDGs(接続可能な開発目標)に着目する
国連サミットで決まったSDGs(接続可能な開発目標)。これに関する問題が高校入試の小論文によく出題されています。ポイントがどこにあるのか、きちんと確認しておきましょう。大変に難しいテーマですが、コロナ後の世界のあり方をまさに示しています。

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