#教師のバトン
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はつい数日前にあった裁判の結果から書き始めます。
大阪府立高校教員が訴えた裁判の判決が出ました。
それによれば、大阪地裁は府に対し230万円あまりの賠償を命じたのです。
地理歴史の先生、Nさんは、2017年にクラス担任とラグビー部の顧問をしていました。
それに加えて海外留学の案内役も務めていたのです。
結果として時間外労働が1か月で約120時間に達しました。
単純に計算すると20日間で1日6時間の残業ということになります。
しかしこれはあまりにも雑な計算で、実はクラブ活動の大半は土日に行われるのです。
練習試合や公式戦など、いろいろケースがあります。
特にラクビーなどのラフプレイがある競技は、顧問の引き受け手がありません。
頸椎などに損傷が起こる場合もあります。
その時に顧問はどこでどのような指導をし、救急搬送などにどう関わったのなど、責任の所在を問われます。
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最悪の場合、学校内の事故に対する保険の事務手続きや、ヒアリングに付き合わされます。
その間にも当然授業があるワケです。
担任をしていれば、毎日のHR活動もあります。
時間がいくらあっても足りなくなるのです。
保護者から電話があれば、それにも対応します。
登校拒否児がコロナ前に比べて、確実に増えています。
心身を病んだ生徒が多数発生しているのです。
家庭への連絡は必須です。
適応障害
結局、彼は適応障害と診断されました。
誠実に関わろうとすればするほど、蟻地獄に陥ります。
どこかで手を抜かないと、とてもやってはいけないのです。
最近は主幹、主任などといったヒエラルヒーが教員内部につくられるようになりました。
以前ならば管理職以外はみな、ヒラだったのです。
それが今は細分化されています。
当然、給料も違います。
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主幹教諭になると、次は教頭、または副校長の試験をうけることが期待されます。
それでなくても管理職になりたがる人が少ないのです。
しかたなく、受験年齢をさげて、対応しなくてはなりません。
なぜか。
朝から夜までぎっしりと仕事が詰まっている管理職をみていれば、自ずと大変なことがよくわかるからです。
生徒の成長を見守り、ともに未来を見つめるというより、管理職の仕事は、もっぱら学校全体の流れをつねに掌握することに主眼が置かれます。
言葉は悪いですが、とにかく問題を起こさず、平穏な日々をどう築き上げるかに尽きます。
親からのクレームもかつての比ではありません。
何かあれば、学校のワクを超えて、すぐに教育委員会へというのが、現在の流れです。
今回の裁判では、「教頭や校長らが仕事を適正に割り振らなかった」というのも1つの理由です。
現実には問題が表面に浮き上がらなければ、平穏に現状を続けていくというのが、今の学校です。
今回も裁判になったので、今までの労働環境を精査したというのが本当のところでしょう。
ブラックな職場
試みにツイッターで次のように打ってみてください。
「#教師のバトン」です。
文科省は令和の日本型学校教育を実現していくためにという理由から、働き方改革の推進などをあげて、このプロジェクトを始めました。
質の高い教師を確保するために、教職の魅力をアピールしようと試みたのです。
現職の教師が前向きに取り組んでいる姿を知ってもらうことが最初の目論見でした。
教育への熱意に満ちた若者に、夢を与えたかったのです。
そのためのプロジェクトだと考えれば、いいでしょう。
「#教師のバトン」というハッシュタグをつけたTwitterは瞬く間に、ひろがりました。
それも文科省が目指した方向とはかなり違うところへ向かい始めたのです。
地域の教師の取組みを知り、相互の絆を深める。
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ベテランの先生が若い教師に自分の培ってきたノウハウを教える。
教師を目指す学生や社会人に、現場の声をもっと伝える。
目的はいろいろとありました。
しかし実際にツイッターを開いて、SNSを読んでみれば、文科省の狙いが大きくはずれてしまったことを強く実感します。
小学校の先生の人並外れた労働時間には目を見張りますね。
こんな書き込みがありました。
これが長時間労働の原因だというのです。
小学校5、6年の英語、道徳の教科化、キャリアパスポート、プログラミング学習。
意見はさまざまにあるでしょうね。
道徳は中学でも成績をつけなければなりません。
これは想像以上に苦しいです。
観点別による成績の絶対評価について、少し調べてみてください。
ものすごく難しい作業です。
仕事が少しも先へ進まず、それでいて時間ばかりが空しく過ぎていく日常がよくわかります。
この夏休み前に退職をしますといったツィートもかなりありました。
まるで学校に未来がないかのようです。
現在、教員に残業代はつきません。
教職調整額という名の手当てがつくだけです。
教育職員には給料月額の4%が「教職調整額」として支給されています。
時間外勤務をいくらしてもそれ以上の賃金はもらえません。
特に昨今のように残業が非常に多くなると、不満も募る一方です。
授業時間数が多い
率直な感想として、授業の時間数も多いと感じます。
以前に比べて、その他の雑務も極端に増えました。
毎学期、自己申告書を提出しなければいけません。
フォーマットは決まっています。
この学期には何をするのか。
あなたは何ができるのか。
その結果、生徒にどのようなフィードバックが可能か。
研修の計画はどのようなものか。
分掌のなかで、自分の役割は何か。
ありとあらゆる側面から自己分析シートをまとめあげます。
作文力のテストのようなものです。
その間に試験をつくり、生徒のノートをチェックし、英検や漢検などの費用を集めます。
校外学習があれば、その下調べや業者との対応も。
親のクレームには猶予がありません。
不登校の生徒本人に対してコミュニケーションもかかせないのです。
体調不良の生徒を逐一把握することも大切です。
それ以上に近年はICTの活用が盛んになりました。
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リモート授業の枠組みも作らなくちゃいけません。
そのための研修もあります。
苦手な人にはつらいですね。
家庭によってはルーターの貸し出しも必要です。
そのための書類を作成します。
保管庫のチェックも大事です。
中学では入試説明会から進路指導まで。
推薦入試を受ける生徒のために面接の練習も必要です。
夏休みにやる三者面談。
近頃は両親とも働いているケースが多いので、時間がなかなか決まりません。
さらに小学校でのプログラミング学習と英語指導。
毎日の給食指導。
時に起こるいじめなどの生徒指導は正確に行わなければいけません。
きちんとやらないと、教育委員会へ親がクレームをつけるケースもあるのです。
毎日神経を張り詰めていないと、持ちません。
その間に中学は週20コマ以上の授業。
最近、若手教師が増え、ベテランの先生が次々と退職していきます。
せっかくのノウハウがみな、立ち消えになってしまいつつあるのです。
コロナ禍での指導方針も猫の目のように変わりました。
これが「#教師のバトン」です。
1度、読んでみてください。
想像以上に現場は病んでます。
今回も最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。