看護系小論文のキモは弱者へのやさしさと思いやり

学び

看護系小論文の難しさ

こんにちは。

小論文添削経験20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

毎年必ず、某大手予備校医療系小論文入試の採点をしてきました。

一度の試験で100~200枚は読みました。

採点ももちろんします。

医療系の小論文は他の学部、学科とはかなり違う面を持っています。

それをきちんと把握していないと、なかなか合格点にはなりません。

看護学校によっては内申点が基準に達していれば、あとは小論文と面接というところもかなりあります。

さすがに4年制看護大学はそれほど甘くはありません。

推薦入試以外はかならず学科試験があります。

看護 photo

今回はいずれにしても看護系小論文にとって何が必要なのか。

どのように文章を組み立てていけばいいのかを考えてみます。

他の学部と違って気をつけなければならないこと。

その第1はやさしさを強調する必要があるということです。

病人は健常者からみれば圧倒的に弱者です。

その病人の立場にたってやさしくふるまわなくてはいけません。

つまり弱者への視線が非常に大切なのです。

仕事が幾つも続いていると、つい患者への対応がおざなりになりがちです。

だからこそ常にやさしさを意識すること。

これが小論文の中にあらわれます。

文章を読んで、効率優先、論理優先で仕事をしていく態度がみえると、評価は下がります

このことを第1に意識してください。

勿論専門性は大切です。

技術がつたない、医療知識が不十分というのでは話になりません。

つねに科学的にものごとを処理していく冷静な視線も必要です。

しかしあまりに原理原則に流れる文章を書くと、それだけで減点の対象になります。

今、医療現場でどのような問題が起こっているのか。

最新の知識を貪欲に自分のものにしようとする姿勢も評価されます。

あくまでも医療は科学の分野に属します。

新しい知識をどのように得ようとしているのか。

学問に対するまっすぐな姿勢が必要になります。

さらにさまざまな意見に別れる最先端医療の現場で、人間の道徳との戦いという現実も垣間見ることになります。

その時、どう自分は対処するのか。

具体的な場面に即して、問題が提起されます。

一般論ならば簡単にこたえられるケースでも、一つ一つの特殊な場面では、そう簡単ではありません。

試験にはわざとそうした意見の対立する最先端の問題も出されます

つねに新しい知識を仕入れ、それを自分はどのように考えるのかということを、意識して、文章を書くようにしてください。

それが合格への一番の近道です

では具体例をみていきましょう。

キーワードを覚える

看護系小論文には必須の知識があります。

はじめて聞いたとか、一度も聞いたことがないというのは論外です。

その幾つかを示します。

Quality of lifeの大切さ

生命の質と訳します。

以前は患者の命を少しでも長らえさせることが医療の使命でした。

しかし現在は患者の意思を最大限に尊重するという姿勢に変わっています。

なるべく高い質を保ちながら、主体はあくまでも患者にあるという姿勢がポイントになります。

延命治療をどこまでおこなえばいいのか。

リビング・ウィルと呼ばれる生きる意思の強弱をつねに測る必要性が出ています

チーム医療の充実

現在の医療は医師1人で行うものではなくなりました。

それぞれの専門分野の担当者が集まり、そこで最善の医療を行うために協同します。

これにより医療ミスを極力減らすことも可能になるのです。

インフォームドコンセント

この言葉をもしはじめて聞いたというようでは、あまりにも勉強が足りません。

きちんと自分の言葉で説明できるようにしておいてください。

なぜこの考えが出てきたのか。

その背景を説明できなければなりません。

一言でいえば、かつて患者は医療従事者の言うことを黙ってきいていればよかったのです。

そのかわり医者は全ての治療行為をしてくれました。

今は医療の主体は患者の側にあります

医者を含めて、医療者側は助言者という立場になります。

だからこそ、患者は自分の治療の方向を助言を得ながら、決めていかなければなりません。

つまり患者が納得して治療をうけるという基本中の基本的な考え方をインフォームドコンセントというのです。

最近の入試でこの言葉が出ないことはありません。

最重要語句です

着実に内容を理解し、記憶してください。

生命 photo

安楽死などの問題を含めて、身体や生命はだれのものなのかということが基本的に問われています。

それだけに自分のものだという意見と、いやそうではなく社会の一部であるという考え方もあります。

この両者の立場をそれぞれとるだけで、小論文の書き方は180度違うものになってしまうのです。

逆にいえば、安楽死の問題を提出すれば、違う立場で書かれた多くの小論文が提出される可能性もあります。

これは出生前診断の是非、がん告知の是非などあらゆるテーマに拡散していく可能性を持っています。

それだけに自分がどの立場になって文章を書くのかということを、ある程度問題を想起しながら、書く練習をしていくことが大切でしょう。

添削をしてもらう

そしてできたら必ず先生にみてもらうことです。

小論文の採点だけは自分ではできません。

論理の矛盾や、段落の欠落など、自分より一段高い目で高所から判断してもらわないと、なかなか全体像がよくみえてこないのです。

そこが小論文入試の一番難しいところです。

さらに言えば、看護系小論文の場合、テーマが大変に込み入っていて、どの立場で書くかにより、内容がかなり違ってくるのです。

それをどう判断したらいいのか。

その判定が難しいと言わざるを得ません。

最終的には看護のあり方を自分なりに把握しておくことです。

従来は病気を治すということにだけ、看護は特化してきました。

しかし高齢化社会の今、看護は患者の病気を治してあげるだけのものではありません。

むしろ老いや障害、病気に悩んでいる人によりそってともに生きていくという看護本来の姿に立ち返る必要も出てきています。

ところが実際は日勤、夜勤を含めた超過勤務が精神のゆとりを削り、医療ミスを起こす現場も多々あります。

看護のあり方は理想としてはわかるものの、それをそのまま実行するのはかなりの難問です。

小論文試験を受ける受験生はそうした今日の看護師がおかれている状況をどの程度理解しているのか。

生命 photo

それが文章の中に如実にあらわれてきます。

いわゆる紙の上のきれいごとになってしまっては、採点官の心象もよくありません

最先端医療への視点も

今日、遺伝子の研究がすすみ、生命の概念を根本からかえつつあります。

ヒトゲノムの研究は遺伝という分野にまで医療を進出させました。

出生前診断の是非などは大変に重いテーマです。

どの視点から書くにしても、相当勉強しなければなりません。

ここにいくつものテーマをあげましたが、この他にも高齢化社会と医療など、問題は山積しています。

そのどれにも正解はありません。

字数があれば、自分や家族の体験なども書き込めるかもしれません。

ただし具体例をあまりに多く書くことは危険です

最低限にして、本論の内容を補佐するというレベルにしておいた方が得策です。

自分がどれほど看護師さんにお世話になり、そのことにより医療従事者をめざす気持ちになったのかというタイプの文章は「志望理由書」に委ねた方がいいでしょう

その方が自然です。

文体は通常は「である」調で、志望理由書に限っては「ですます」調でいいです。

看護師受験小論文はどこまでいっても「やさしさ」を忘れず、正確な医療知識に基づいたものでなければなりません。

医学や看護に関する新書などを読み、さらに自分で何度も練習をして、添削をしてもらうことを勧めます。

環境、栄養、生と死など、複雑な問題が多く出題されています。

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けっして楽観することなく、地道に勉強を続けてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

希望をかなえて、看護師への道を必ず切り開いてください。

期待しています。

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