書く力
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はあらためて、小論文の書き方を考えてみましょう。
そんな記事、今までに何度も読んできたという人も多いでしょうね。
いまさら、言われなくてもわかっていると言いたい気持ちもよくわかります。
大切なポイントは1つです。
あなたはその類の参考書や記事を読んで、文章が上手になりましたか、ということなのです。
『小論文これだけ』といった種類のハウツー本は、たくさんありますね。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2023/08/10_05_02.png)
ぼくも必ず書店では目を通します。
確かに、たくさん役に立つことが書いてあります。
この通りにいったら、短時間でかなり上達するだろうなと思います。
しかし、生徒が持ってくる答案を読むと、がっかりすることが多いのです。
なんにも伝わっていない。
肝心な注意点が守られていない。
結局、内容がはっきりとみえていないのです。
なぜか、わかりますか。
ぼくは教師になる前、ある雑誌社で記者をしていました。
毎日、取材をし、帰ってきてそれを原稿にします。
最初は人物紹介欄を担当させられました。
インタビューをしてそれを記事にまとめるのです。
それくらいは誰でもできるだろうなどと、甘く見ていました。
しかし実際に記事として印刷されるまでは、長い道のりでした。
削る力
原稿をデスクに渡すと、彼がしたことはどんどん斜線をひいて文章を短くすることでした。
贅肉を落とす作業です。
無駄な表現が次々と消されていきました。
自分ではどこがいいところなのか、よく見えないものです。
第三者の目で、冷静に読み取ると、それがわかります。
どうやって削っていくのか。
最初は無駄な言葉からです。
同じ表現が重なるところは全てバツです。
これが初心者ほど多いのです。
語彙が少ないことも1つの理由です。
自分で気がついていないので、全く指摘されるまでわかりません。
添削の基本は、同じ言葉を使わないというごく初歩的なことから始まるのです。
小論文などでは、よく使う言葉というのがありますね。
「言葉」「理解」「主体性」「多様性」「アイデンティティ」などといった表現は便利なのです。
それだけに続けて使わないことを、念頭に置く必要があります。
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重なる主語は誤読されない限り省略します。
最初に固有名詞を書いたら、次は代名詞にその役割を譲ります。
しかしあまりにそれが続くとうるさいので、さらに別の表現を考えます。
接続詞も無駄なものは、極力省かなくてはいけません。
いい調子で書き込んだ代名詞は、ほぼカットされました。
読んでいると、前後の文脈がどうしてもうまく続かないケースもあります。
そういう時は無駄な段落のカットです。
小論文の場合は地の文章がメインなので、会話はほぼ省略されますね。
初心者の書いたものには、意味のない会話が多いです。
全てとってしまうと、かなりスッキリして骨格がみえてきます。
単文と短文
編集者の格言ご紹介しましょう。
「短い文章ほど怖い」というものです。
よくカルチャーセンターなどに「エッセイを書く」という講座がありますね。
自分の身の回りに起こった出来事を、文章にまとめるという作業です。
最初は作文を書くような気分で始めてはみたものの、その難しさに次第に怖くなっていくのです。
そうならない人は上達しません。
これはあらゆる芸事に繋がります。
終わりがなく、自分との戦いが始まるということを実感した時から、勉強が始まるのです。
修行といった方がいいかもしれませんね。
なぜ短い文章は難しいのでしょうか。
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圧倒的な構成力を身につけなければならないからです。
エッセイなどの場合は、自分の視点が試されます。
どこからその出来事を眺めているのか。
難しくいえば、正確な鳥瞰図があるかどうかです。
それが整っていれば、次第に文は短くなります。
特に日本語は1つの言葉に多くの意味を持たせることができる、すぐれた言語です。
掛詞などを知れば、おのずと文章が洗練されます。
これは「短文」の場合です。
もう1つ大切なのが「単文」です。
主語と述語がワンセットの文章です。
難しくいえば、「一文一義」ということです。
接続詞
文章を短くさせるためには、1つの文に主語を2つ入れないことです。
必ず主語は1つだけ。
当然、述語も1つだけです。
その繰り返しを続けます。
それだけでは息苦しくなるので、初心者はつい接続詞を使いたくなります。
これが失敗の原因です。
「そして」「それから」「だから」「したがって」などは最悪ですね。
なくても意味が通じます。
接続詞のない文章は、明るくて見晴らしがいいのです。
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これだけで随分と文が短くなります。
生徒には1文が80字を越えてはならないと指導しています。
原稿用紙でいうと、2行です。
それ以上書かせると、必ず文脈がねじれてきます。
いわゆる複文構造になるのです。
初心者には無理です。
言いたいことがたくさんあると、つい繋げたくなるものですね。
それが失敗のもとです。
リズムはたくさん書かないと体得できません。
畳の上でいくら水泳の練習をしても、うまくならないのと同じです。
制限時間との戦いです。
やってみてください。
実際に書こうとすると、本当にわからなくなってしまうものなのです。
それが小論文の怖さです。
しかし書けるようになると、一生のスキルになります。
ここまでが初心者用の説明です。
こんなことはわかっている。
自分にはできるという人は、早速やってみてください。
それほど甘くはありません。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。