【コミック】寄席芸人伝は大人買いしても全巻揃えたいレア風味満載

プロとアマの違い

みなさん、こんにちは。

ブロガーのすい喬です。

アマチュア落語家でもあります。

最近は社会人落語家という言い方のほうがいいのかな。

かつては天狗連と言いました。

我こそはと鼻を高くしていたんでしょう。

最近はあまり聞かない言葉ですけどね。

今まで、随分いろいろなアマチュアの人の噺を聞かせてもらってきました。

中にはプロより上手な人がいます。

このまま寄席に直行しても十分やっていけるという人が…。

春風亭一之輔によれば、上手下手は生まれつきの素質が8割とか。

噺家の世界では符丁で化けるといいます。

突然上手になって人気が出ることです。

しかし化ける人がそんなにたくさんいるワケじゃありません。

やっぱりヘタな人はなかなか上達しません。

アマチュアだって同じです。

いくらやってもヘタな人はヘタ。

うまい人は本当にうまい。

しかしプロとは明らかに一線を画します。

どこが違うのか。

亭号を持っていないのです。

わかりますか。

柳家とか古今亭とか春風亭とかという名前のことです。

つまり噺家の正しい系譜に繋がっていなければなりません。

なんだとそんなことかと言っちゃダメです。

これが決定的なんです。

大師匠がいて師匠がいてという落語家の系図の中に組み込まれない限り、プロではないのです。

だからプロの噺家はどんなことがあっても亭号にしがみつきます。

そこが命の源泉だからです。

コミック

そういう芸人の世界を描いた本はたくさんあります。

ぼくは三遊亭圓生の『寄席育ち』が一番好きですね。

読み始めると、すぐ寄席の楽屋にいる気分になれます。

ほとんど学校に通ったことのない圓生にとって、楽屋が学校そのものでした。

明治から大正にかけての暮らしぶりが目に見えます。

今とは全く違う芸人の生き方とでもいえばいいのでしょうか。

ところでそんな気分を持ったまま、読み始めるとやめられなくなるコミックがあります。

古谷三敏の『寄席芸人伝』がそれです。

全11巻、153話でできています。

これはなんといったらいいんでしょう。

今風のコミックではありません。

セピア色ですかね。

カラーの風景ではない。

しかし確実にそこに存在していたことを感じさせるリアリティに満ちています。

今までに落語を題材にしたコミックはいくつも読んできました。

しかし今は家に1冊もありません。

全て手放してしまいました。

雲田はるこ『昭和元禄落語心中』は記憶に新しいですね

アニメにもなり、テレビでも実写版が放送されました。

ぼくもつい見ちゃいました。

尾瀬あきらの『どうらく息子』も毎回読みました。

ほかにもいろいろなコミックがあります。

しかしどれもしばらくするとやっぱりいらないということになったのです。

理由はなんでしょうか。

自分にもよくわかりません。

残っているのは『寄席芸人伝』だけです。

rawpixel / Pixabay

この本には何かがあるんでしょう。

もちろん、出版された時に買ったものではありません。

全巻揃いを古本屋さんで購入しました。

奥付には昭和57年とあります。

随分と昔のコミックです。

漫画の性格

『寄席芸人伝』は古谷三敏が『ビッグコミック』に昭和53年から平成元年まで連載した漫画です。

舞台は明治時代から始まります。

もうそれだけで色がなくなったかのようです。

架空の噺家、関係者が登場人物です。

実際にいた人というわけではなく、こんな芸人なら必ず存在したに違いないという人の横顔をていねいに掘り起こしています。

『ダメおやじ』で有名な古谷三敏はこの本でその名をコミック史上に残したといってもいいのではないでしょうか。

とにかく懐かしい味わいを持った芸人達が登場します。

もちろん実在の人物ではありません。

こんな人がいただろうなと想わせる芸人です。

落語のネタに題材をとったものもありますが、それだけではありません。

何回もストーリーをひねって、その果てに作画しています。

よほど落語に通じていないと、わからないようになっています。

Photo by Norisa1

登場人物の造形は古谷三敏が師事した赤塚不二夫に似たものです。

デフォルメされているために愛嬌があります。

コマ割りもシンプルです。

それだけに読者の想像力に訴えかけてくるものがあります。

余白の部分に全て自分の色を塗れるのです。

時代は明治から昭和まで。

寄席が庶民の娯楽の場だった時代の話です。

人々にもどこかのんびりした空気があって、それが心を和ませます。

登場人物も名人だけというわけではありません。

若手の真打や前座、芸がうまく伸びない噺家など、いろいろな立場や地位の人がいます。

その分、テーマが分散し読んでいても引き込まれてしまいます。

芸というものの持っている魔性の姿が実にみごとに描かれています。

誰もがうまくいったワケではありません。

芽の出なかった芸人にも同じようにあたたかな視線が注がれています。

その優しさに安らげるのです。

登場人物に共通しているのは落語に対する情熱です。

これだけは皆同じです。

落語を愛し寄席を愛し自分の仕事に誇りを持っています。

だから読んでいても気持がいいのです。

オムニバス構成

内容は連続していません。

師匠と弟子、落語家と妻、落語家同士、演者と観客など、寄席とそれを取り巻く人間模様がこれでもかと描かれます。

ダメ親父にも通じるギャグもあり、それが時に心をなごませてくれます。

この本は毎日読むようなジャンルのものではありません。

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時々疲れた時にふと手に取り、かつての時代にワープする。

効率全盛の時代だからこそ、全く異質な世界を覗く。

そうした効果があるのではないでしょうか。

続けて読む必要なんかありません。

しかし読みたくなる。

そういう不思議な力を持った本です。

時代に取り残されたことを自覚しつつ読むコミックです。

やっぱり大人買いでしょう。

といってもそれほどの額ではありませんけどね。

最近は全巻というより、ムックがたくさん出ています。

それでも十分だと思います。

ビッグコミックのムックを探せばすぐに出てきます。

古書店に行くまでのことはないかもしれません。

ぼくにとっては大切な本です。

第1巻は「写実の左楽」「女好きの小三太」「学者の文平」から始まる13話が載っています

タイトルだけでも前の時代にワープできますね。

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是非、手にとって読んでみてください。

現代のコミックにはない不思議な味わいを感じられると思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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