【歌詠みの系譜】古本説話集9話に紫式部と伊勢大輔の魂の交感を見た

古本説話集第9話に紫式部と伊勢大輔との間に行われた魂の交感の様子が出てきます。歌を詠むということは歌人にとって命と引き換えにするだけの厳しい作業でした。その重責を短時間で見事にやってのけた話の中に、歌人の系譜が見えてきます。みごとな話です。

【徒然草礼賛】百四段の味わいは特筆もの【王朝文学の華やぎに酔う】

『徒然草』は兼好法師の書いた日本を代表する随筆です。中には滑稽な話などもありますが、百四段は特に王朝文学の味わいが残る段です。彼が実際に宮中で見た豪華絢爛とした世界を、自分の想像でまとめたものでしょう。『源氏物語』を髣髴とさせるところもあります。

【池波正太郎・人間通】没後30年企画が続々【人気の秘密は何か?】

池波正太郎の人気は没後30年たった現在も衰えることがありません。テレビ、映画、劇画などになって、たくさんの人を楽しませています。その秘密はどこにあるのでしょうか。浅草で生まれた彼が見てきたものは何だったのか。魅力への糸口はなんでしょうか。

【小論文ノート・おすすめ】代ゼミ講師の神解説は他に類を見ない逸品

長い間、小論文の問題集や参考書をみてきて、これが1番という本はどれかと言われたら、この本を勧めます。それは代々木ゼミナール編『新小論文ノート』です。解説を現役の講師陣が全てしています。それも実に細かくていねいな分析が加えられているのです。

【村上春樹】短編・レキシントンの幽霊は喪失の悲しみが揺らめく逸品

村上春樹の短編『レキシントンの幽霊』は人間の喪失感を扱った小説です。人が亡くなった後の悲しみをどうすればいいのか。悩み苦しむストーリーなのです。主人公はただ眠り続けます。亡くなった人との魂の交感の儀式を終えるまで目を覚ますことはありません。

【月刊文藝春秋】赤坂太郎の名コラムを読めば政界の鳥観図が一目瞭然

「月刊文藝春秋」赤坂太郎の名コラムをご紹介しましょう。筆者は実在しません。数人の若手政治記者の持ち回りです。政界与党の裏話を実に面白く綴っています。新聞の記事とは全く違います。政権を維持し続けたい権力者の欲望が丸見えなのです。一読して下さい。

【村上春樹】短編・象の消滅は不思議で寂しくミステリアス感100%

村上春樹の短編『象の消滅』は不思議な味わいの小説です。どこかふわっとした現実味のない、それでいて心象風景をみごとに捉えた傑作なのです。アメリカの雑誌「ザニューヨーカー」に翻訳されて掲載されました。後に舞台化もされ大きな話題になったのです。

【舞姫】主人公・太田豊太郎は自意識過剰ないい子を演じすぎたのか

森鴎外の代表作『舞姫』は高校時代に必ず習う教材の定番です。近代的自我の萌芽をどのように育て、どこで失敗したのか。主人公、太田豊太郎の人格をどのように判断したらよいのか。あらすじを追いながら分析してみました。文章は難しいですが内容は豊かです。

【コミック】寄席芸人伝は大人買いしても全巻揃えたいレア風味満載

古谷三敏の『寄席芸人伝』は不思議な味わいのコミックです。実在しない芸人達がいかにもいたかのように感じるのはなぜでしょう。登場人物は全員が落語を心から愛しています。しかし売れずに悩みを抱えている人もいます。その姿に不思議な愛着を覚えるのです。

【葉山嘉樹】セメント樽の中の手紙はワーキングプア・トラウマ小説

非正規雇用やワーキングプアの問題をきっかけとしてプロレタリア文学が注目を集めています。小林多喜二の『蟹工船』は新しい読者を獲得しました。なぜ今なのか。教科書所収の作品『セメント樽の中の手紙』を題材にして、現代の持つ側面を考察してみましょう。

【夏目漱石】名作・こころは高校で必ず習う国民的ネタバレ小説

夏目漱石の小説『こころ』は誰もが高校時代に習う国民的ネタバレミステリーです。三角関係と同性愛の要素をあわせ持った複雑な小説です。登場人物の関係を丁寧にときほぐしながら、主題に迫っていきます。なぜ先生とKは自殺せざるを得なかったのでしょうか。

【梶井基次郎】短編・檸檬は鋭敏な感受性に裏打ちされた抒情的童話

梶井基次郎の短編『檸檬』は国語の授業で取り扱われる作品です。彼の他の小説を読むチャンスはあまりないのではないでしょうか。31年の短い生涯の中で何に苦しみ、何を描き出そうとしたのか。それをじっくりここで検証していきたいと思います。

【芥川龍之介】黒澤明監督の映画・羅生門の原作は全く別の短編だった

芥川龍之介の名作『羅生門』は誰もが高校で習う小説です。同じタイトルで映画を撮ったのが名匠黒澤明監督です。しかし厳密にいうと、映画の「羅生門」は芥川の別の短編『藪の中』をメインにして描いたものです。2つの作品で事実はどう扱われたのでしょうか。

【谷崎潤一郎】名作・細雪は滅びの哀しみを美に昇華した昭和の金字塔

谷崎潤一郎の『細雪』は滅んでいく家を舞台に4姉妹の日常を描いた小説です。衰退していく家を絢爛たる美で包む筆致は他の追随を許しません。哀しみとともに、その華麗さに酔いしれてしまいます。日本人が好む『平家物語』『源氏物語』に通ずる美の系譜です。

太宰治・名作津軽は屈折した故郷への愛と自虐的な作家魂の結晶である

太宰治は屈折した故郷への愛と自虐的な作家魂の持ち主でした。彼の代表作『津軽」は彼の出自を探すための旅を題材にした作品です。乳母たけに会うため、運動会の会場を探すシーンは有名です。不思議な明るさに満ちた作風に驚くことでしょう。一読を勧めます。

【三島由紀夫】豊饒の海は必ずいつか読みたい輪廻転生の物語

三島由紀夫の最後の小説「豊饒の海」。輪廻転生をテーマにしたスケールの大きな作品です。最初は全4巻のうち『春の雪』をお勧めします。流麗な文体で綴られた名作です。きっとあなたを別次元へ誘ってくれます。失われた時を作者とともに探してください。