【都立西高校推薦入試速報】人はパンのみにて生きるにあらず【国分功一郎】

小論文

都立西高校推薦入試

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は1月26日(金)に実施された都立高校の推薦入試について考えます。

都立西高校は毎年、ユニークな文章を題材にした課題文を出題するので、よく知られています。

以前にもこのサイトで問題例を紹介しました。

文末にリンクを貼っておきます。

読んでみてください。

西高の小論文は課題文が大変に短いことで有名です。

どのようにも書けるのが特徴なのです。

一見したところ易しそうですが、実は大変に難しいです。

しかし、受験生の資質を見るには十分といえます。

生徒の側からすれば、何が出るのか全く予想がつかないだけに、油断ができません。

作家や、評論家などの文章を読んでいるだけでは準備不足です。

文字を自分の周囲に置いて、つねに読み、考え、書くという生活をする必要があります。

そうでないと、わずか50分のあいだに600字の文をまとめるのは困難です。

文章が短いから楽だろうなどと甘くみていると、とんでもないことになります。

その中に自分の考えのエッセンスとでも呼べるようなものを、じっくりと書き切る力が要求されるのです。

今まで何人もの生徒の答案を添削してきました。

うまく合格にたどり着いた生徒もいれば、そうでなかった生徒もいます。

何が、合否を分けたのでしょうか。

競争倍率と小論文の比率

1つの要素は単純に倍率です。

西高には毎年、かなりの受験生が殺到します。

文武両道を堂々とうたう学校の様子が、多くの受験生の憧れの的になっているのです。

それでも年によって、かなりのばらつきがあります。

これだけは、個人の力ではどうにもなりません。

ちなみに23年度入試は男子3.06倍、女子5.80倍でした。

女子の倍率が異様に高かったため、苦戦した人が多かったと推測されます。

24年度入試からは男女別の定員制が廃止されました。

以前からの懸案がついに解決したのです。

男女あわせて、2.95倍です。

今年度は64人の定員に対して、189人の応募がありました。

内申点と当日の小論文、面接の比率は学校によって違います。

以前は内申点が50%、それ以外で50%という扱いの学校が大半でした。

しかし近年は学校によってかなりの違いがあります。

応募する年度の割合には十分に気をつけなければなりません。

西高校の今年度の比率は調査書360点、面接240点、小論文300点でした。

40%、27%、33%の比率です。

明らかに調査書の比率が以前より下がっている傾向があります。

学校間格差があり、調査書に対する信頼が微妙に影響していることも考えられます。

今年の問題

今年度の課題文を紹介します。

大変短いので、しっかり読み込んでください。

「人はパンのみにて生きるにあらずと言う。いや、パンも味わおうではないか。そして同時に、パンだけでなく、バラももとめよう」國分功一郎

制限時間、50分、制限字数、600字以内。

この文を読んであなたが考えたことを書くのです。

国分功一郎は哲学者です。

最初の文章は誰でもが知っているはずです。

新約聖書の中の言葉を引用しながら、自分の考えを示しています。

意味はそれほどに難しくはありません。

人間は、物質だけではなく、精神的にも満たされることを求めて生きる存在であるということを示しています。

ポイントはむしろその後のパンを味わい、さらにバラを求めようというところです。

このバラとはなんの象徴なのか。

Wokandapix / Pixabay

それを分析し、考えなくてはなりません。

一般的に推論すれば、やはり美しいものの譬えと考えるのが一番スッキリくるでしょう。

人間が生きていくためには、まず基本的な生活のための資源が必要です。

具体的には衣食住です。

いわゆるライフラインですね。

わかりやすくいえば、生きるために必要な物質的な所産です。

それを謳歌することが大切です。

パンを味わうという表現には、生活を楽しむ様子が見て取れます。

しかし人生がそれだけで出来上がっていないことは、誰もがよく知っています。

人はなんのために生きているのか。

それをあなたなりに考えてみる必要があります。

すなわち、美しいものを見たり聞いたりして、感動したいからなのです。

生活を豊かにするあらゆるジャンルのものこそが、人を人たらしめる要素だということです。

バラはもしかすると、目にはみえないものかもしれません。

それは人によってかなり違うものであるかもしれないのです。

それでも人間は、その美や感動を追求するために、生きていると考えるべきなのではないでしょうか

「バラ」をなんの象徴と考えるかによって、後半の構成が微妙に変わるはずです。

入試で差をつけるには

今回のテーマは入学試験の課題文です。

短い文章に対するあなたの考えを、600字以内にまとめなければなりません。

その上、他の受験生との差を出さなければならないのです。

実はそこが1番、この問題のカギとなる部分だと考えてください。

どうしたら差がつきますか。

必死に考えてみてください。

大切な表現を探さなくてはなりません。

1つのキーワードは「価値観」です。

何が自分にとって最も価値あるものなのか。

具体的なものでもいいし、行為でもかまいません。

それを求めるために、どのようにこれから生きればいいのか。

どこで発見可能なのかを考えてみてください。

当然、これからの未来にあるものでしょう。

あなたの人生そのものの中にあるはずです。

直近なのは、入学後の高校生活かもしれません。

そこで何を得て、それをどう育てていきたいのか。

そのためにこれから何をしなければならないのか。

内容は当然、人によって違うはずです。

その内容にどの程度のリアリティあるのかも大きな差です。

ここは一般論ではなく、あなたにとっての価値観が大切です。

精神的な満足を得るために、何をしたいのか。

実際に何をするのか。

そのための一歩をどう自分のものにしていくのか。

字数があまりないので、内容を過不足なくコンパクトにまとめる必要があります。

ここが腕前の見せどころです。

とにかく短く効果的に話を集中させてください。

もちろん、詩的な表現も可能です。

しかしあまりに夢想的だと、地に足がついていないと判断されがちです。

あなたらしさをどう表現するかが、合否の分かれ目になります。

発表は2月2日です。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

【都立推薦入試・西高校編】小論文のテーマはズバリ風と自分だった
都立西高校の今年の推薦入試課題を取り上げてみましょう。毎年短い警句のような文章が出題されます。どのように書いてもいいのです。それだけに大変難しいです。あまり気負うことなく、自分に正直にまとめ上げなくてはなりません。

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