【小論文・生物多様性】生態系の回復は可能か【モーリシャス沖座礁】

学び

輸送船座礁

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はインド洋にあるモーリシャス沖で起こった座礁事故について書きます。

もちろん、小論文との関連でポイントを探していきます。

この内容について全く知らないという人はいないと思います。

しかし概要についてはもう1度チェックしておいてください。

環境に関わる大きな問題です。

事故が起きたのは7月下旬。

商船三井がチャーターした貨物船がインド洋の島国モーリシャス沖で座礁し、大量の燃料油が海に流れ出しました。

今回、流出した重油は1200トンとみられています。

モーリシャス政府は今月の24日、2つに割れた船体のうち、船首部分を沖合15キロまで曳航し、水深3200メートルの海中に沈めました。

海洋汚染や船舶の航行に支障がない地点を探したと言われています。

問題は流れ出した燃料重油の処理です。

日本政府は8月19日、環境、外務両省の職員や生態系などの専門家らを国際緊急援助隊として追加派遣しました。

今回最も問題になっているのが近海の環境汚染です。

座礁の原因はニュースなどで流れています。

それ以上に緊急なのが事後の処理なのです。

燃料の抜き取りは現地が冬のため、想像以上に波が高く困難だということです。

モーリシャスのサンゴ礁には地球上のイシサンゴ類の40%の種が生息しているとされています

さらにマングローブの林が座礁地点から3キロの場所にひろがり、水鳥などが生息しています。

ラムサール条約に登録された湿地などもあるのです。

回収作業の難しさ

専門業者やボランティアの手により、少しずつ回収されてはいるものの、油を分解するための薬剤は使用されていません。

モーリシャス当局の許可が下りていないからです。

1番面倒なのはマングローブの根にからみついた油の処理です。

海中で複雑にからみあっているため、ボートで近くに寄り手作業で拭き取るしかないという話です。

さらにサンゴ礁に付着した油をどうとるか。

黙っていればサンゴが死滅する怖れがあります。

サンゴの回復には数10年かかるという予測もあります。

日本の国際緊急援助隊の調査によれば、船から800メートルの地点で通常30メートルある視界がわずか3メートルだったそうです。

サンゴに酸素を供給している藻類の光合成ができなくなる可能性もあります。

マングローブについても同様です。

呼吸根と呼ばれる根が油で覆われたままでは、やがて枯れてしまいます。

しかし人が入り込むと、逆に地表の油を地中に入れてしまう怖れもあります。

実に厄介な手作業を息長く続けないと、回復は望めないのではないでしょうか。

この地域はまれにみる自然の宝庫と呼ばれていました。

生物多様性に満ちた豊かな場所だったのです。

そもそも多様であることがなぜ豊かさに通じるのでしょうか。

生物多様性は種の多さだけを誇るのではありません。

大切なのはさまざまな種の生物が存在し、その種の間に多くの差異や相互作用が存在することを意味します。

生態系は質の異なる多くの生物たちが相互に複雑な関係を結んでできているものです。

それだけに予測が大変に難しいのです。

ラムサール条約に指定されている理由もまさにそこにありました。

日本からかなり離れているはいえ、日本がチャーターした貨物輸送船が起こした大事故です。

特に環境問題に関心を持っている人々にとっては痛恨の惨事なのです。

生態系とは何か

私たちはよく生態系という言葉を使います。

しかし本当の意味をきちんと理解している人はそれほど多くありません。

生態系の定義は次の通りです。

ある地域に住むすべての生物と、その環境とをひとまとめにし、その中での物質やエネルギーの流れに注目して全体を機能的に捉えたもの。

意味がわかりますか。

全ての生物の営みを1つの円環として捉えるという考え方です。

生態系とは質の異なる多くの生物たちが相互に複雑な関係を結んでできているもののことを言うのです。

ここから生物の多様性という思想が出てきます。

①すべてのものを質的に違ったかけがえのないものとみなす。

②多様性という質的に違うものに価値を置く。

③質の違ったものがいろいろあることが豊かさである。

④質の異なるものがいろいろとあり、それらはかけがえがなく、金銭では買えないものである。

⑤価値を測る物差しを複数持ち、それぞれの物差しに関しては量がそれほど多くなくてもいい。

⑥多様性の受け取り手は多様であることを必要とする。

⑦生物多様性に関する数値はすべて曖昧で予測も不確かである。

⑧曖昧さのない数値で生態系を予測することは困難。

どうでしょうか。

これが生物多様性に関する議論の基本コンセプトです。

モーリシャスの海

生命の起源が海にあるのは承知の事実です。

あらゆる命がそこから生まれました。

この事実を生物多様性の概念に当て嵌めてみてください。

まさに相互の関係が複雑系であることは間違いありません。

何がどのような関連性を持って次の生命体を生んだのかということを、容易に明らかにはできないのです。

複雑にからみあって、現在の生命体があるからです。

もちろん数理学的に数が多いから優位であるなどということも言えません。

よく言われることは、人間があらゆる生態系のトップに立ち、優位なものを次々と捕獲していったために、今日の感染症などを招いたという説です。

例を1つあげましょう。

人はイワシより、マグロを好みます。

なぜか。

マグロの方が生態系の中では上位にあるからです。

それと同様なことがあちこちでいくつも起こっています。

密林の中に踏み込み、生態系を壊した果てに、現在のコロナウィルス蔓延を引き起こしてしまったとする学者もいます。

このような問題をどう小論文に反映させればいいのか。

はっきり言って難問です。

大学はどの角度から問題をつくりあげてくるのか。

明確なことは言えません。

しかしここにあるテーマは大変に重いものです。

人間が今度の事故で生態系の1部を破壊したとするなら、当然生物多様性の一角を崩したことになります。

そのことが次の災いを呼ばないとは言い切れません。

それが多様性の輪ということです。

この言葉は勢いがあり、現在多くの分野で使われていますが、本質は怖ろしいものです。

そのことをしっかりと認識しておいてください。

そうでないと、小論文が書けなくなります。

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基本の概念をもう1度、必ずチェックしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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