【小論文・食料自給率】過去最低の水準から抜け出すための3つの方法

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みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は食料の自給率について考えてみましょう。

食料自給率とは国内で消費されている食料のうち、国内生産でまかなわれている割合を示す数値のことです。

日本はカロリーベースで計算すると、自給率が約40%にすぎません。

先進諸国の中では特に低いのです。

戦後直後は食料自給率が88%もあったのです。

ところが、1965年度に73%の水準を記録して以降、緩やかに下がり始めてしまいました。

2000年度以降は40%前後でほぼ推移しています。

カナダ、オーストラリアは200%を遥かに超え、アメリカ、フランスは優に100%を超えています。

日本がどれほど低いかはこの数字を見るだけでだけで歴然としているのです。

どうしてこんなことになってしまったのか。

食の安全を考えると、自給率の低下に歯止めをかけたいところです。

しかし課題は単純ではありません。

難問が山積しているのです。

大きなポイントとして、農業に従事する人の高齢化があります。

農村部から都市部への人口流出が続いているのです。

この50年の間に約700万人が減少したと言われています。

実に80%にあたる数字です。

現在、農業を仕事にする人の平均年齢は70歳に近いのです。

このままではさらなる減少が見込まれます。

若者が農業法人へ就職するルートなどもないワケわけではありません。

しかし人材確保が十分に行われているとは言えないのが現状です。

コメ離れ

近年、コメ離れが特に顕著です。

日本人の主食ですから問題は深刻です。

現在はほぼ100%自給ですが、その消費は年々下がり続けています。

日本各地で品種改良が重ねられ、味にこだわった新しいブランド米がどんどん発表されています。

それにも関わらず、米離れの傾向は止まりません。

日本人の食生活はもともと国内で生産される米や野菜を中心としていました。

しかし1950年頃から徐々に欧米風に変化し、パンや肉を多く食べるようになりました。

学校給食ではパンと牛乳が定番になったのです。

高度経済成長期には人々は生活が豊かになるにつれ、外食を多くとるようになってきました。

1970年代からはハンバーガーなどのファストフードも爆発的な人気となりました。

パンは原料となる小麦のほとんどを輸入に頼っているのです。

価格がどうしても不安定になりがちです。

肉の需要も食習慣の変化で高まりました。

飼育されている動物の飼料用穀物も大量に輸入しなければなりません。

国産牛肉1キロを生産するためには11キロの穀物が必要なのです。

そのほとんどを輸入に頼っています。

もう1つのポイントが大豆です。

日本人の食卓には切ってもきれない食材です。

重要な食品です。

味噌やしょうゆ、豆腐、納豆などの材料が自由化されてから販売農家数も減少の一途をたどっています。

食料不足の危機

かつて経済官僚だった堺屋太一は『油断』という小説を書きました。

日本に石油が入ってこなくなると、経済はどのように変化するかという近未来小説でした。

それまで誰もそんなことを考える人がいなかったのです。

日本の石油備蓄が底をつく。

その瞬間に経済生活が大パニックを起こすのです。

エネルギーの供給がストップします。

インフラがたちまちのうちに崩壊するのです。

農業も全く状況は同じです。

地球規模で大干ばつが起こるなどとは誰も想像していません。

しかし地球温暖化による異常気象は当たり前のことになりました。

新型のコロナウイルスが世界中に脅威をもたらし、国際紛争も絶えません。

予測のつかないことが起こるというのが現代なのではないでしょうか。

日本の食料自給率が40%という数字は、やはり不安の材料に違いありません

地球規模での食料不足を懸念する声もあります。

かつて冷夏に襲われ、緊急にタイからコメを輸入したことがありました。

1993年のことです。

しかし翌年になって問題が解決してしまうと、なにごともなかったかのように人々は日常生活を送っています。

喉元過ぎればの喩え通りです。

日本は国土の70%を森林に覆われています。

1人当たり農地面積はオーストラリアの約500分の1しかないのです。

生産量を増やすには省力化や効率化が喫緊のテーマになります。

当然ロボット技術やICT、人工知能等の先端技術を活用しなくてはなりません。

その結果がどうなるかは予測不能です。

3つの方法

この状況をなんとかしなくてはなりません。

方法はいくつか考えられます。

第1に地産地消が基本でしょうね。

最近よく聞く表現です。

地域生産、地域消費の略です。

それぞれの土地には気候や地形等の環境に適した食べ物が育ちます。

地元で採れた食料を食べる「地産地消」の取り組みが、食料自給率を上げることにもつながります。

第2に食べ残しを減らすことです。

フードロスの量が半端ではありません。

食べ残しを減らす努力をすることは基本中の基本です。

スーパーなどでは賞味期限切れの商品を大量に廃棄しています。

飲食店や家での食べ残しなども同様です。

その量はあわせて年間1900万トンと言われています。

供給される食料の25%以上を捨てている計算になるのです。

世界の現状を考えれば、この問題の深刻さがよく理解できるでしょう。

アジア、アフリカの飢餓を救うためにできる最も有効な方法です。

経済大国がコロナのワクチンを独占してしまったという事実と同じ論点です。

食べたい者達が食料生産を勝手に支配することは許されません。

ここに大きな問題があります。

2018年に発効したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)です。

cherylholt / Pixabay

参加国間での関税が撤廃され、海外産の農産物などが輸入しやすくなりました。

これが逆に食料自給率のさらなる低下につながると懸念する人もいます。

TPPについては自分の考えを必ずまとめておいてください。

最後の3つ目の手段がスマート農業による省力化や収量アップです。

高齢化が進む農業の担い手に対して、労力を軽減することです。

ドローン、ロボットなどによる農作業の省力化が必要です。

若い農業従事者に対して経験不足を補うAI技術などの導入も喫緊の課題となるでしょう

もの珍しさだけでなく、確実に技術を習得するための場が提供されなければなりません。

食料が安定的に確保されるということは、人心の安定につながります。

今日のように複雑な社会の中では最も基本的なテーマなのです。

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小論文のテーマとして提出された時には、最後に掲げた3つの方法論に集約して書き込んでください。

ポイントを絶対にはずさないことです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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