【小論文・対立点】問題発生の構造を分析し議論する【リニアと環境】

学び

構造の分析が大切

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

毎日、暑いですね。

今年は本当に特異な年になりました。

コロナウィルスをテーマにした小論文がたくさん出題されるでしょうね。

それもあらゆる角度からです。

今からきちんと準備しておいてください。

小論文の難しさは内容が高度になればなるほど幾何級数的に増します。

特に結論がどこにあるのか全く見通せない時はどうすればいいのでしょうか。

その場合はもう一段高い段階でシステムそのものの持つ構造について考えなければなりません。

しかし言うほどに簡単でないのも事実です。

たとえばリニアの問題などはどうでしょうか。

高度に政治的なテーマではありますが、それをはずしてみると、自然保護の問題が透けてみえます。

一言でいえば、「保全」か「保護」かということになります。

確かに政治的なレベルでは本当にそこまでの移動手段が現在の日本にとって必要なのかというのは大きな問題でしょう。

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東京・名古屋間を40分で結ぶと聞いただけでちょっと空恐ろしく感じる人もいることと思います。

しかしそれが現在開発中のリニア中央新幹線の実態なのです。

なぜそこまでのスピードが必要なのか。

世界の経済の流れの中でどこまで有用性があるのか。

これは非常に難しい問題です。

そこまで言い出すと、既存の新幹線も飛行機も、あるいは高速道路も争点になります。

しかしそれらを突き抜けて、今回のリニアモーターカーの開発にはさまざまな意見があります。

膨大な予算

現在まで投入された資金も莫大なものです。

約9兆円と言われています。

東京、山梨などですでに着工されているリニア中央新幹線は、東京―名古屋間の86%がトンネルです。

途中に活断層がいくつもあります。

大深度地下での工事、南アルプス山岳地を貫くトンネル掘削など難工事が予想されています。

建設費が膨れ上がることは必至です。

それだけの開発予算をかけてまで必要なのかどうか。

南海トラフ地震に備えるための措置だという考え方も一方にはあります。

しかし2027年開業の予定もここへきて、かなり遅れる見込みとなりました。

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これも大きなテーマです。

7月、開発の最終段階にきて静岡県知事と国交省次官が会談をしました。

その際に何が問題となったのか。

簡単にチェックしておきましょう。

静岡県が着工を認めないのは、トンネル工事で南アルプスの地下水が漏れ出すからです。

県中西部を流れる大井川の水量が減少するという「水問題」が表向きの理由です。

延期の理由となった静岡の「水問題」について少し考えてみましょう。

予定されている静岡県内の工区は8.9キロ。

南アルプスの真下を全てトンネルで通るのです。

トンネル工事やトンネルが完成すると、湧水によって地下水を源泉とする大井川の水量に影響が出るのではないか、と懸念されています。

JR東海も何もしなければ毎秒2トンの水が失われると試算しています。

そうならないようにトンネルの湧水をポンプでくみ上げ、導水路で水を川に戻すと主張しているのです。

県は大井川に影響が出ないという科学的な根拠が専門家会議などから出ない限り、工事着工を認めない考えです。

大井川は流域60万人以上の水道や特産のお茶などの農業に使われています。

渇水に悩まされた地域の歴史もあるのです。

今回、県が着工を認めなかったのは、トンネルを掘るために作業員の詰め所や電気設備などを設置する「ヤード」を整備するための工事です。

この建設を認めなかったため、開業時期にも大きな影響が出るとされています。

リニア問題の本質

もちろん県が反対しているのには他にもいくつか政治的な理由があると言われています。

静岡県はのぞみが県内に停車しないことにも不快感を示してきました。

利便性が落ちるのは今度のリニアも同様です。

やはり県内に駅の予定はありません。

しかしこの問題が出題されるとは思えません。

小論文で問題になるのはもっぱら大井川の問題でしょう。

こちらの方が環境をテーマにした課題文とうまく適合するからです。

ポイントはなんでしょうか。

基本は自然の「保全」か「保護」かの問題としてまとめることができます。

近代文明は自然を人間にとって有効に利用することを前提に進んできました。

しかしその結果として、現在大きな岐路に立たされています。

地球温暖化がそのいい例です。

もうこれ以上、開発をやめて保護に全力をあげるべきではないかという意見も多いのです。

今回のリニアの問題もその図式に乗せると理解しやすいでしょう。

南アルプスの真下を全てトンネルで通るというだけでもすごい話です。

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それも8.9キロの区間です。

さらに毎秒2トンの水が失われるのです。

それをポンプで汲み上げ、導水路を使って元の大井川に戻すというのです。

これが工事期間中ずっと続くと考えただけで怖ろしくありませんか。

このような例はダムの工事をはじめ、河口堰の工事などを想像すれば理解できると思います。

有明海内の諫早湾における干拓事業などいまだに完全な決着がついていません。

保全か保護か

ここまでの工事をして東京・名古屋間を40分で移動する必要があるのかという根本の問題に再び戻ります。

自然を改変し、人間の生活に有効な方向へ進んできたのが近代の文明そのものです。

この論点を進めていくと、核開発も同様です。

いくつもの原発事故を抱えた今、それでも核開発は必要であり基本的なエネルギー政策であると言い切れるのかどうか。

これは大変に本質的で難しい議論です。

化石燃料がいずれ燃え尽きる時が来た時、人間は次の確実なエネルギーを手にしていなければなりません。

それには何がふさわしいのか。

核のゴミといわれる廃棄物を考えてみても、現在大きな問題になっているのは最近のニュースで報道されている通りです。

自分の居住区にさえなければいいというエゴイズムだけでは、生きていくことができなくなっています。

このようなテーマを論じる時、本当に苦しくなりますね。

国家や、人類が発展を遂げていくのはいいことだと単純に喜べない場面をたくさん見る機会が増えてきました。

今回の感染症に対する人間の戦いもそれと同様です。

食物連鎖の中を強引に突き進もうとした人間に対する自然の仕返しかもしれません。

それでは結論をどのようにつければいいのか。

本当に悩むところです。

意見が対立するのは目に見えています。

川の水を戻しつつ工事をするくらいのことはなんでもないと考えるのか。

自然にこれ以上のダメージを与えてはいけないと考えるのか。

このような場合は対立に至る必然性を探ることです。

その構造をしっかりと見抜かないと、単純に賛否を論ずることはできません。

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少しでも高次の論理をそこで打ち立てていくこと。

これが小論文の常道でしょう。

表面的な対立は所詮形だけのものです。

もっと深い哲学的な基本概念まで掘り下げないと、解決策は出てきません。

スピードがそれでも必要なのか。

開発に大義があるのか。

勉強を続けてください。

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小論文は生きることの熱意と倫理に支えられていない限り、完成しません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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