【小論文・8050問題】ニート・フリーター・引きこもりと少子化

学び

違いが見えない

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

今日は呼び方によって微妙な差のある3つのパターンと少子化の関係を考えます。

小論文のテーマとして頻繁にでるワケではありません。

しかしコロナ禍で職を失った人も陥る可能性があります。

頭の中に違いをしっかりと入れておいてください。

なぜこのテーマを選んだのかというと、つい先日『「山奥ニート」やってます。』(石井あらた著、光文社)という本を読んだからです。

最初はなんの気なしに手にとりました。

しばらく読んでいるうちにこういう生活も現代では可能なのだと半ば感心したからです。

名古屋市出身で32歳の石井さんは浪人、大学での留年、中退を経て、ついにひきこもりに。

2014年、友人に誘われて和歌山県の山奥に移住しました。

それ以降、ネットを通じて集まった男女と共同生活を送っています。

ここでもキーワードはネットです。

これがあるから山奥でも生きていけるんでしょう。

和歌山県田辺市の最寄り駅から、バスを乗り継いで約1時間半の場所にある限界集落。

20~40代のニート10数人で共同生活を送っているのです。

MabelAmber / Pixabay

生活の場所は廃校になった小学校を改装した建物です。

生活費として月に1万8000円を納める決まりがありますが、明文化されたルールはありません。

メンバーは、ときどき梅の収穫など地域の人たちの仕事を手伝うことで、収入を得ています。

働きたくない時は1日中ゲームをしていることもあるといいます。

こんな生き方もあるのかなと思いながら、遠くを見るような気分で本を読み終えました。

アイデンティティ

一口にニートといいますが、結構ちゃんとやろうすると厄介です。

アイデンティティの問題と深い関わりを持っているからです。

働く意欲があっても実際に就業活動をしていなければ、ニートになります。

本来フリーターとは一線を画すのです。

元々この言葉はイギリスからきたものなのです。

正式名称はNot in Employment, Education or Trainingといいます。

直訳すれば「就業、就学、職業訓練をいずれもしていない人」となりますね。

いつの間にかこの呼び方はポピュラーなものになりました。

今では知らない人はいません。

インターネット上では完全に『働く気のない怠け者』『無気力』『心を病んでいる人』『親に寄生して生活している人』(パラサイトシングル)などといったジャンルに入っています。

完全にネガティブな色に濃く染まってしまいました。

むしろ相手の性格を全否定する時に使われることさえあるのです。

罵倒語の一種ですね。

経済や社会の構造的な要因などそっちのけにして、全て「若者の側に問題がある」という捉え方が主流です。

もちろん、懐疑的な見方もないワケではありません。

つい先日、ハローワークのホームページを見て驚きました。

そこには親の相談コーナーから相談日までが掲載されていたのです。

つまり自分で就業活動ができなくなった子供をみかねた親たちが、自らかつての職安と呼ばれた施設へ足を運んでいるのです。

もう子供だけにまかせてはおけないところへ来ているということなのです。

少し前なら自分で行って相談してこいですんだものが、残念ながらそう簡単にはいきません。

ニートと呼ばれる人たちの中にはある意味、コミュニケーション不全に陥っている若者もかなりいるのです。

その彼らにかわって親が相談に行くというのも、時代の変化を感じさせます。

そこまで問題は深刻になっているのです。

パラサイトシングル

8050問題というのをご存知ですか。

80代の高齢の親と、50代の引きこもりの子が同居する家族における問題のことを言います

引きこもりは、若い世代に多いという印象が強いです。

しかし引きこもりが長期化するにつれ、当時は若かった人が現代では中高年と呼ばれる世代になりました。

80歳の親の年金に頼って50歳の子供が生きていくという構図が多くみられるようになったのです。

引きこもりになった人は元々どんな性格だったのでしょう。

どちらかといえば、おとなしく目立たず優しくて親切だったという調査があります。

それが何かのきっかけで外にでられなくなってしまうのです。

最近は、家族間のトラブルや学校でのいじめ、会社での人間関係のもつれなどが多く報告されています。

SNSなども複雑な現代の負の遺産になりかねないのです。

親が悩むのはごく当然のことです。

親自身の生活も苦しい上に、自分たちがいなくなった後はどうしたらいいのか。

どのように一人歩きしていくのか考えると、夜も眠れないということになります。

近所の人に顔を合わせることを嫌がるとなれば、ますます外へ出ることが難しくなります。

「引きこもり」という表現だけが先行してしまうのです。

親がいなくなった後、彼らは年金ももらえず、生活保護を受けるということになっていくのでしょうか。

国民年金の額より生活保護の方がはるかに水準が高いのです。

最後は国が彼らの面倒を全てみるということになると、財政破綻は必至です。

というより、だれも年金を払わなくなってしまうでしょう。

いずれにしても最低の生活を営めるだけの費用が出るのかどうか。

かなり疑問です。

ハローワークのサイトからまさに現代が仄見えたような気がして、ちょっと考え込まざるを得ませんでした。

少子高齢化

厚生労働省はニート対策のひとつとして、地域若者サポートステーション(通称サポステ)を各地に置いています。

引きこもりやニートと呼ばれる若者が仕事に就き自立するための取り組みを行っているのです。

ニート、フリーターは低賃金のケースが多いです。

すなわち晩婚化への道を余儀なくされます。

非婚のまま生涯を終える人も増えるでしょう。

ますます少子化が進む心配があるのです。

生活保護受給者の増大を放っておくワケにはいきません。

日本の少子高齢化は今後もますます進みます。

65歳以上の人口は2010年には全体の23.0%でしたが、2060年には39.9%になると予想されているのです。

これに伴って、15歳から64歳の生産年齢人口も、2013年は8000万人を下回りました。

2060年には4400万人まで減少すると予測されています。

ニートの生活を捨てて社会に出るということは、大変な勇気が必要です。

コミュニケーションを苦手としている若者をどう社会に取り込めばいいのか。

これは難問です。

小さな自信の積み重ね以外にはないでしょうね。

安心して長く働き続けることができるまで、社会が面倒をみる以外にはありません。

フリーターや失業者との区別も大切です。

引きこもりとも重なる部分が多いのです。

その違いをはっきりさせるのも難しいのが現状です。

小論文の問題として、ニートや引きこもりのテーマが出てきたら、少子高齢化、社会保障などの問題とからめてください。

さらには労働環境の改善やサポステの促進なども大切なポイントになります。

みなさんの周囲に似たような状況の人はいないでしょうか。

彼らの日常をきちんと把握することもこの問題への理解を深めるはずです。

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いずれにしても区別が大変難しいのです。

これを機会に少し問題を整理しておくといいでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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