【小論・ベーシックインカム】メリットとデメリットを比較して考察する

学び

ベーシックインカム

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

最近、よく耳にする言葉の1つがこれです。

ベーシックインカム。

耳にしたことがありますね。

意味はそのままです

基本的な収入ということです。

国民全員に毎月決まった額を国家が支払うという仕組みです。

基本的な生活を送るため、条件を限定することなく一定の額を給付します。

生活保護などは条件が細分化されていますが、ベーシックインカムにはそれがないのです。

子どもがいてもいなくても、収入の多寡に関わらず、全ての人に一律に基本所得が配布されるのです。

まさに基本所得そのものです。

無条件というところが大きなポイントなのです。

これ以上、公平かつシンプルで「小さな政府」を実現するのに役立つシステムはないともいわれています。

最低限の生活を保障することで、人々はつらい労働から解放されることになります。

企業も雇用調整を簡単に行うことができるようになり、雇用の流動性が向上するというワケです。

格差が解消し、社会不安はなくなり、新しい産業の創出される効果があるという意見もあります。

しかしこのシステムにはメリットとともに、その反対のデメリットもあります。

同時にいくつもの難題がついてまわるのです。

小論文問題

小論文試験としては、2018年大分大学経済学部後期試験で出題されました。

設問は最初に両者の持つプラス面とマイナス面をまとめて300字で総括し、そのあとに自分の考え方を500字で示せというものです。

資料文が5つに分かれ、それぞれの項目ごとに問題点がまとめてあります。

➀ベーシックインカムの対象が無条件に国民全員であるという特徴。

②財源の確保に毎年216兆円が必要になるという現実。

③現在の社会福祉予算を全て一律に現金給付しても、問題解決にはほど遠い額しか配分できないという弱点。

④労働からの解放によって大きな社会変革が可能であるという命題。

⑤勤労意欲の維持が図れるか未知数であるという疑問。

この内容をすべて理解するところから、小論文の試験が始まります。

完全に内容を読解する実力がないと、混乱してしまうでしょう。

しかしそれぞれのテーマが特別に複雑だというワケではありません。

1番理解しやすいのが、財源の問題です。

これは非常に具体的なので、説得力を持ちます。

日本国民全体に一律15万円を給付するために必要な財源は216兆円かかります。

2016年現在の社会保障給付額の総費用は118兆円です。

もしこの金額をすべての人に同額配布するとしたら、8万円にとどまるという試算が出ています。

そのかわりとはいっては語弊がありますが、年金、生活保護などのシステムが廃棄されるのです。

ベーシックインカムが抱えている問題は、なんといっても財源の確保でしょう。

制度が進めば、勤労意欲が低下することも十分に考えられます。

確かに仕事と余暇の割り当てを自由に行えるという点からみれば、非常にすばらしいことです。

多様な生き方を認めるという思想とも取れます。

このシステムが十分に機能する国家はそれほど多くはありません。

実施可能な国の条件

最初に人口が少ないことが大きな条件の1つです。

さらに豊富な天然資源があること。

イメージしやすいのは石油でしょう。

国家に膨大な歳入源があれば、十分に機能する可能性があるでしょう。

現在でもすべての社会保障がほぼ無料という国も、ないわけではないのです。

ベーシックインカムという名前で実施しているワケではありませんが、枠組みとして似ているのは中東のカタールです。

カタールでは、医療費、大学までの学費、電気・水道・光熱費が全て無料です。

原油生産国であるカタールだからこそ、できるシステムと考えられますね。

豊かな財源がなくては実施するのは不可能です。

もちろん多くの国で、現在も実証実験はしています。

任意に抽出した人々を対象にしたり、無業者を対象にしたりして実施しているのです。

ドイツ、イタリア、イギリス、フランスなど、多くの国で、対象者や区間を区切って実験しています

その結果については、やはり財源の問題が大きなネックになっているようです。

クラウドファンディングなども併用して、可能性を探っているというのが実情です。

ベーシックインカムはその財源をどこに求めるのかという点が議論の中心になりがちです。

しかし財源以外にも、課題はいくつもあります。

その1つが働くことに対する意欲の欠如です。

労働意欲をそれほど強く持たなくても、生活が可能だということになれば、働く人は減ってしまうかもしれません。

すると当然、国家の歳入は減少します。

仕方がないので、政府はベーシックインカムを維持するために、ますます税金を引き上げることになるという悪循環に陥ります。

結論のまとめ方

ここで給付される人々心の問題にも立ち入ってみましょう。

すると、ベーシックインカムが消費者金融からの借金や賭博に使われる可能性もないわけではないことに気づかされます。

「何もしなくても生活できる程度の収入が手に入る」という言葉は確かに甘い響きを持っています。

さらに働かなくても生活保障を厚くしてくれるという制度の甘さを覚えてしまうと、勤労意欲が低下していくのではないでしょうか。

あらゆることに対して、無責任になる動機付けが起こる可能性もあります。

このようにみてくると、確かにメリットも多くある反面、デメリットも多いということが実感としてわかるのではないでしょうか。

ワーキングプアを解消するための方策として、考案されたシステムですが、効果的な一面だけではないという現実もみえてきます。

しかし少子化対策や地方の活性化などにつながる面もあります。

さらに鬱病などの精神疾患の患者に対して、症状が改善していくための動機付けともなりえます。

メリットも多いことは確かなのです。

ここでまとめ方が問題になります。

賛否を明確にして、そのための理由を正確に書き込むことが大切です。

自分の立場をどこに置くかで、文章の内容が180度変わります。

結論からいえば、どちらでもかまいません。

自分が書きやすい方向からまとめていくことです。

制限字数が500字なので、それほど複雑なことは書けません。

最初に賛否どちらかの立場を最初に示してその後に、なぜその意見になったのかという理由を示せば十分です。

大きな争点はこの記事に示しましたので、そこから書きやすいテーマを選んでください。

どちらに自分の視点がある方が書きやすいかを考えましょう。

ベーシックインカム肯定論の立場からみた場合、次のように論じることができます。

義務化された労働から解放されることには深い意義がある、と最初に言い切るのです。

ただし、人間はただ生活に必要な給付を受ければ、それで「人間的に」暮らせるワケではないという論点が必要です。

教養や文化を身につけ、精神的に豊かな生活をしていくことこそが、真に生きるという意味ではないかという注があれば、肯定のパターンも十分可能です。

もう一方は、ベーシックインカムを実施すべきではないという論点です。

全国民に一律に給付するための膨大な財源を、確保することは事実上、不可能であるという視点から切り込みます。

そのためにあらゆる社会福祉費を削減したら、社会が機能しなくなるという、より現実路線の書き方です。

どちらでもよいので、より高い精度で読者を納得させられる文章にしていくことが大切でしょう

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両者の立場をもう1度しっかりと復習してください。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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