「なぜならば」のヒミツ
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
文章を書くのは大変に難しいものですね。
誰でもトライしていますが、書いては消しての連続です。
とくに小論文は短いとはいえ、論文です。
なにより大切なのは論理の筋道なのです。
どこへ結論がいくのかがみえないようじゃ、どうしようもありません。
もちろんキーワードも大事。
しかしせっかく考えついたいい言葉も、論理がアイマイでは正しく評価してもらえません。
とにかく文章を明るく書ききることです。
「明るく」という言葉の意味がわかりますか。
誰が読んでもわかりやすいということです。
一点の曇りもない。
必ずこの結論に達したことが当然だと思わせなければダメです。
いやあ、この文を読んだら、こういう結論もありなんじゃないと言われてはNGです。
とにかく明晰であること。
そのために必要な言葉を惜しんではいけません。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/08/会話_1567061500-1024x640.jpg)
ところで英語の文章を読んでいて気になる言葉がありませんか。
あるいは会話でもいいです。
自分が外国人と話していて、気づかずによく使っている単語。
少し考えてみてください。
そうです。
「~は~だ。なぜならば~だからだ」の「なぜならば」です。
becauseです。
それまでにそんな単語を使ったことのない人が、英語を喋ると突然このbecauseをよく使います。
そのワケは理由の説明がしやすいからです。
意味のわかりやすい文
とにかくbecauseで文をつなげると、簡単に説明できます。
わたしは犬が好きだ。
なぜならば~だからである。
聞いている人は、「なぜならば」の後は説明だなということがすぐにわかります。
こうした単語が接続語と呼ばれるのです。
もっとわかりやすく説明しましょう。
接続語とは、①語句と語句、②文と文、③段落と段落をつなぎ、前後がどんな関係であるかを表す言葉です。
ポイントは前後がどんな関係かを説明するということです。
ではどういうものがあるのでしょうか。
逆説 「しかし」「だが」などのように前と逆の事柄が後にくる関係をあらわすもの
説明、補足「つまり」「ただし」などのように前の事柄を説明あるいは補足するもの
ところで、接続語とまぎらわしい文法用語に接続詞、接続助詞というものがあります。
これらは、似たような用語ですが、文法的にははっきり区別しなければなりません。
接続語は文節の働きを指します。
接続詞・接続助詞は単語の種類を指すという点にあります。
接続詞と接続助詞は、接続語をつくることができる単語です。
「だから」は接続詞ですが、接続語になれます。
しかしここでは細かい文法の説明は省きましょう。
今回のポイントは接続語のことだけです。
とにかくわかりやすい文章を書くためには、前後の文の関係がはっきりしていなければいけません。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/08/関係_1567061683-1024x731.jpg)
ところが日本語にはアイマイなものが多いのです。
受験生はその表現を使いたがる。
なぜか。
便利だからです。
頭の中がきちんと整理できない時、突然この表現を使いたくなるのです。
それはなにか。
「そして」です。
「そして」って何の意味?
実はあんまり文章のうまくない人の論文にはこの「そして」がよく出てきます。
何がそしてなのか。
前の文章からどういう関係で「そして」が出てくるのか、よくわかりません。
当人はきっといい気持ちで書いたんでしょう。
読む方は戸惑うばかりです。
「そして」は難しくいうと、「添加」の接続語です。
前の内容にさらに付け加える時に使うのがこの表現の基本です。
しかし多くの受験生は「そして」を「順接」の接続語と捉え違えています。
だからテーマが先にどんどん進んでいく時、イエスを繰り返す時、「そして~だ」を連発するのです。
読んでいる方は、それでもなんとか想像しながら先に進みます。
意味が全くわからないワケではありません。
解釈もします。
しかし元々の意味に順接はありません。
あくまでも付け加えて言う時の表現なのです。
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これはNG。
全部即刻消去しましょう。
別の表現に書き換えます。
どのようにすればいいのか。
時間経過 その後 やがて かくして かくて こうして
結果 その結果 したがって そのため
言い換え つまり すなわち 言い換えれば
これらの言葉になおしてください。
なんでも「そして」を連発して文を書くのは即刻やめること。
添加というのは、別の言葉でいえば、「よって」「以上のことから考察してみると」などという意味です。
けっして順接の意味ではありません。
ぼくは結論を導く時よく「すなわち」を使います。
いろいろと意見を述べた後に「すなわち」このような結論に達したと書くと、文章が引き締まってみえます。
絶対にユルユルした文を書かないでください。
とくに小論文でこれをやられると、読まされる方はたまったもんじゃありません。
接続語をきちんと
いい文章は論理の組み立てがしっかりしていると書きました。
そのため、文章の前後関係がはっきりしていなければいけません。
短文を推奨します。
一文は40字までという記事も書きました。
ここにあげておきますので読んでください。
そうなると、ますます短文どうしの関係が重要になります。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/08/文章_1567062281-1024x1024.png)
特に順接なのか、逆接なのかはとても大切です。
その時の判断をする基準が接続語なのです。
このような表現を使ってください。
同じ表現を重ねないこと。
文章が冗長になります。
リズムが悪いと、読んでいる人が飽きます。
ここまで書いてくると、なぜ「そして」がダメなのかわかってくれたと思います。
あまりにも文の関係がアイマイなのです。
こうした接続語は他にもあります。
「あるいは」などという「選択」の接続語を並列の接続語と間違えて使うケースもあります。
似た言葉にはどんなものがあるのでしょう。
「または」とか「もしくは」などというのがあります。
「もしくは」は複数のうちそのいずれかを選ぶ場合のみ
「あるいは」は二者択一かどちらも同時に成り立つ場合
厳密に言葉を突き詰めていくと、アイマイな言葉を使うことの危険性を感じますね。
しかし受験小論文の場合はここまで、複雑に考えなくてもいいのです。
とにかく接続語をうまく使って、前後の文を正確につなげてください。
それだけで十分です。
同じ表現を絶対に繰り返さないことです。
採点官の印象がガラリとかわります。
今回はたった1つのことをいろいろな側面から説明しました。
もしあなたの文章に「そして」があったら、即刻消去。
別のもっといい、文章の関係が正確に伝わる表現を選んでください。
いい小論文が書けるようにお祈りしています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。