【令和6年度推薦入試速報・新宿高】伝統文化と酒の醸造法に戸惑う【高倍率】

学び

推薦入試速報

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は1月26日(金)に行われた都立高校推薦入試の速報をします。

新宿高校です。

応募倍率が非常に高かったですね。

7.66倍です。

推薦入試は合格したら必ず入学するのが前提なので、この倍率は驚異的です。

わずか32人の定員に245名が応募しました。

この高校は長い歴史を誇っています。

しかも単位制です

以前から定員に男女の枠がありません。

上位から順番に合否を決めるというスタイルなのです。

通常の普通科の場合、50~60人が定員なので、倍率も3倍を超えればかなりのものなのです。

都立高校の推薦入試が8倍近くに達するというのは実にすごいことです。

試験時間は50分。

例年ならば大問が2問という形式でした。

それが今年は3問です。

しかし実際は4問の構成になっています。

全て会話文などを読ませる問題です。

どのような内容だったのか、詳細にチェックしていきましょう。

現在行われている「大学入学共通テスト」を意識して作成されているのがよくわかります。

大問1(1)(2)

大問の1(1)が最も長く、日本の伝統文化に関するものでした。

設問は「華道」「茶道」「能楽」についての文章を読み、3つの伝統文化に共通する特色を5つあげろというものです。

字数は15~25字以内。

それぞれの文を「伝統文化」の語から始めるというのが、ポイントでしょうか。

ただし近現代についての言及はしないものとするという条件がついています。

問題文には伝統文化の現在の様子も記されています。

その部分はカットしてよいというのですから、それだけ読む量が減ると考えていいでしょう。

短時間で、それぞれの文章に共通するものをみつけるというのは、かなり厳しいものがあります。

時間との勝負です。

普通なら、同じ表現はないかと探すところです。

しかし完全に重なるものはありません。

逆にいえば、近似値を探すということになるのです。

それも特色を5つ探さなくてはならないのです。

焦ったらダメですね。

大問の1(2)は老舗企業に関する表の読み取り問題です。

数字だけの表が8つ出ています。

そこから老舗企業とよばれるものに、どういう特徴があるのかを探れというものです。

この問題が厄介なのは、それぞれの解読に誤りを含んでいるとあらかじめ断ってある点です。

それをきちんと指摘したうえで、さらに誤っている部分を正しい説明に70字以内でなおせというのです。

ここには「出現率」という表現が使われています。

ある母集団の中で、ある条件に合致するする人がどのくらいいるのかをあらわす数値だということを、「注」で説明してあります。

初めて目にした受験生は、少しとまどいを覚えたかもしれません。

大問が2つに分かれているので、ここまでですでに2問解いたような気になった人もいるはずです。

大問2

次が大問2です。

長い会話文が示されています。

日本酒とワインの醸造の違いについて示した文です。

要点はワイン作りには麹菌を使わないのに、なぜ日本酒には使うのかということです。

その違いをさぐるための参考として、白米とブドウの主な炭水化物の分量を示した表が掲載されています。

設問はワインが麹菌を使わずに酵母だけで製造できる理由と、日本酒の製造には酵母の他に、麹菌が必要である理由を225字以内で説明しなさいというものです。

解答のポイントはとにかく、与えられた表を何度も見て、米とブドウの組成の違いを読み解くことです。

この種の問題では数字の違いが解答のヒントになります。

uzilday / Pixabay

同じ数字が並んでいるところをいくら見ても、解答には結びつきません。

徹底的に差のつくところを探すのです。

グラフや表の問題はそこが1番のキモです。

ずっと眺めていると、最後に残るのがブドウ糖と果糖があるかないかというところに目がいきます。

それがみつからなかったら、この問題はアウトです。

あとは、お酒をつくるには糖分が必要であることを知っていれば、解けます。

つまり米には糖分が全くないのです。

そこでデンプンを糖化しなくはなりません。

そのために麹菌が必要となるのです。

この基本的なメカニズムが見えない限り、正解は出せないのではないでしょうか。

大問3

最後に大問の3番です。

ここまでにかなりの時間を使い果たしているはずです。

残りの時間でどの程度、最後の問題の解答が書けるかがカギです。

この設問も会話で成り立っています。

新宿高校の伝統行事のなかに遠泳があることを話の発端にして、船の話題に入っていきます。

そこで、登場するのが「石釣船」です。

図も掲載されています。

なぜ、この船が沈まないのか、その理由を考えなさいというものです。

喫水線を直線で示せというのが問題です。

船にはたらく重力、石にはたらく重力の2語を使って75字以内で書きなさいというのが設問なのです。

最初にこの古い図を見た時、どのような印象を持つでしょうか。

驚いた受験生もきっといたはずです。

船の下に巨大な石を釣って、沈まずに走るということに奇妙な感覚を抱いてもおかしくはありません。

これは物理の問題です。

キーワードの「重力」という言葉に反応できれば、何を論じればいいのかがみえるはずです。

設問は最大のヒントという言葉を忘れてはいけません。

この解放のヒントは「アルキメデスの原理」ですね。

「流体(液体や気体)中の物体は、その物体が押しのけている流体の質量が及ぼす重力と同じ大きさで上向きの浮力を受ける」というものです。

体積と同じだけの浮力を受けるのです。

石は通常の重さではなく、その体積分の水の重さを浮力として得ることができるのです。

つまり、船の上に石を載せるのと、船の下に石を釣るのでは全く力学的に意味が異なるのです。

よく考えればわかることですが、掲載された図があまりにも突飛なので、驚きの方が先にきてしまうかもしれません。

この3問を50分で解くのは、至難です。

8倍に限りなく近い倍率です。

発表は2月2日です。

それまでの日々が待ち遠しいですね。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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