ボキャブラリーの鍛錬
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今まで、小論文に関する話題をたくさん書いてきました。
600本以上の記事があります。
初期にまとめたものも、毎日誰かが読んでくれています。
本当にありがたいことです。
少しでも勉強する時の参考になれば、これ以上の喜びはありません。
そのなかには、YesNoで自分の意見を最初にまとめようという記事もあります。
小論文の技術として、これは大切なポイントですね。
しかし、難関校を受験する人にとっては、このスキルはあまり役に立たないことが多くなってきました。
最近の出題テーマはあまりにも複雑なのです。
賛否を簡単に述べることが、できなくなりつつあります。
このやり方は、どちらかといえば、作文型の小論文にはピッタリです。
ところが、そう簡単に文をまとめきれない段階に達しているのも事実です。
賛否両論が並行して進んでいるケースの場合、簡単にYesNoを言えないことが多くなりました。
例えば「不登校」の問題を考えてみましょう。
その原因は現代の学校教育にあるというテーマがあったとしましょう。
家庭にも子供自身にも原因があるという考え方もあります。
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社会の構造が、あまりにも効率優先になりすぎているという意見もあります。
あるいはそもそも、評価の仕方に原因があるのではないかという論点も考えられます。
教師はどうなのでしょうか。
あまりに多忙で、生徒の現実を受け止めきれない状況にあります。
このようにあらゆるテーマが、たった1つのキーワード、「不登校」から飛び出してくるのです。
これに対して、どの視点から書き込んでいったらいいのか。
課題文があれば、その記述に対してのYesNoも可能になるかもしれません。
しかしなにもない場合はどうすればいいのか。
自分で論理を組み立てるところから始める必要があるのです。
論理的に文をまとめる
よく参考書などを読むと、「論理性」という表現がでてきますね。
論理的に文章を運ぶことが、大切であると書いてあります。
しかしどうすれば「論理的」になるのか。
これが実に難しいのです。
型を守れというセオリーもありますね。
よく4部構成で結論まで突っ走れと書いてあります。
問題提起からはじまって、意見をのべ、次に展開として理由と方法論を説き、最後に結論まで持っていくやり方です。
確かに理屈はわかります。
しかし、これが簡単にできる受験生は、それほど多くありません。
残念ながら、初心者の場合は、どこからどうしたら論理的に文章を運べはいいのかさえ、わからないのです。
思いついたままに、ただ書きなぐったという印象の文が圧倒的です。
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これがSDGsやジェンダーなどといった、より複雑なテーマになったらどうなると思いますか。
もう手に負えず、ギブアップしてしまいます。
近年、小論文は明らかに変質しています。
日常的な作文に近い、やさしいタイプの問題と、そうではない、より複雑で解答するのに苦労する問題に二極化しているのです。
入試小論文そのものが、大きく展開点を迎えているといってもいいでしょう。
入学者の大半を推薦入試で合格させる大学の場合は、ほぼ作文型に近い内容に偏っています。
一方、難解な問題にチャレンジする受験生は苦しんでいます。
当然、解説も複雑化せざるを得ません。
最良の方法
難関大学のなかには、小論文を国語の試験のかわりに位置づけているところがあります。
面接と小論文、志望理由書の3点セットで合否を決めるのです。
総合型の場合、高校での内申点を問わないケースもみられます。
この場合は、本当に尖った実力が要求されます。
面接の中で、小論文の答案に書いた内容を問われることすらあります。
その場合、何が見極めのポイントになるか。
それは入学後、この受験生がどの程度伸びるかということです。
そのための判断材料は何か。
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それは語彙です。
言葉の数といってもいいでしょう。
ボキャブラリーをどの程度持っているのか。
それをじっくりとみます。
ただし、難しい単語をいくら知っていても、それを縦横に使いこなせなければなんにもなりません。
自分の言葉に咀嚼して、どこまで応用しているのか。
それが最重要項目になります。
大切なことを覚えておいてください。
小論文を書く時、同じ語彙を何度も使わないことです。
初心者にありがちなのは、似た言葉の繰り返しです。
そのうえ、一文が長い。
さらにいえば、複文構造にしがちで、主語と述語の関係がねじれています。
こういうタイプの文章ではほぼ、不合格だと考えてください。
同じ意味の単語は、続けて使ってはいけません。
徹底的に言い換えることです。
「言った」と最初に書いたら、次は「述べた」さらに「言及した」「論じた」と幾らでも表現はあります。
言葉をどの程度、使いこなせるのかを採点者は見ています。
このことはあらゆる単語についても同じです。
漢字とカタカナの割合い
外来語はどうしてもカタカナで表記されるケースが多いです。
しかしあまりカタカナを多用すると、文が軽くなります。
幸い、日本語はほぼ全ての外来語を漢字で表記できます。
全ての言葉を漢字にしろとは言いません。
しかしバランスを整えてください。
心地のよいリズムが大切なのです。
自分が得意とするネタをいくつか持っていることも有効でしょう。
音楽、美術、文化、建築、言葉、哲学、数学、物理学。
しかしそればかりにこだわると、採点者に足元を掬われます。
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彼らはたくさんの答案を読んでいます。
不得手なところを見破られないようにしなくてはなりません。
上から貼った紙を剥がされてしまうようなことがないように、注意してください。
資料文、グラフ、表などの読み取りも同じです。
自分に都合のいいところだけを切り取ると、相手の思うツボです。
小論文の勉強をするのなら、評論文の過去問を解き、語彙を増やしてください。
ケースに応じて、脱出術を知ることは無駄ではありません。
しかし策士は術におぼれやすい、という喩えがあります。
いい気になって言葉遊びに堕した時、不合格の烙印がおされてしまうのです。
自分に正直に、しかし同じ表現は使わない。
言葉を弄ぶのではなく、正面から大胆に切り込むことです。
そうした態度が、入学後の学業の伸びを証明します。
YesNoばかりにこだわりすぎてはいけません。
とにかく語彙を豊かにすること。
必ず論理性が後からついてきます。
慌ててはいけません。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。