根拠への反論
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は根拠の否定という点について説明します。
何がポイントなのかというと、小論文はディベートに似ているという話です。
中学、高校時代にやったことがありますね。
最近はどこの学校でも盛んに取り入れています。
社会、英語、国語などの授業でやりませんでしたか。
ディベートは大変に難しいです。
論点を冷静に語り合うのは、一朝一夕にはできません。
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元々、日本人は基本的に議論があまり得意ではないのです。
相手の論理に対してNoを言うのは気分がよくないのでしょう。
できれぱさりげなく仲の良い関係をキープしておきたい。
敬して遠ざけるなどという言葉があるくらいです。
面と向かってあなたの論理はここが間違っていると言い切るには、かなりの知識量も必要です。
そのディベートを1人でやるのが小論文だと言われたら、どう思いますか。
なるほどと思う人もいるでしょう。
考えたこともないという人はいませんか。
1人ディベートの世界がまさに小論文そのものなのです。
根拠を否定し反論する作業を正面からしなくてはなりません。
思考の深さ
小論文の1幕目は課題文で提出された筆者の思考を理解するところから始まります。
ところがやってみればわかりますが、すぐに頭の中がゴチャゴチャになってくるのです。
つまり相手の論点がはっきり読み取れない。
これが1番つらいです。
反対意見を出したいけれど、どこから攻撃すればいいのかよくわからない。
誰もが陥る典型的なパターンだと言っていいでしょう。
自分の中で2、3度議論を往復させているうちに、もうワケがわからなくなってきます。
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結局最後のジャッジも不明確なまま終わるという結果になりがちなのです。
すなわち結論が出ません。
どうしたらいいのか。
小論文は1人ディベートです。
自分の中に仮想対立軸を作り、そこへ向けて全力で邁進する。
どこが弱点なのかを瞬時に読み取って判断する作業が必要です。
1番のウィークポイントはどこにあるのか。
探すのは容易ではありません。
相手の論理の枠組みがきちんとみえていなければできないからです。
みなさんは相撲をみたことがありますね。
基本の技は押し出しや、寄り切りなどです。
しかし大きな体格の相手を倒すためには、並々でない力量が必要でしょう。
身体が小さい人はすぐに押し出されてしまいます。
そこでどうするのか。
相手の土台をたたくのです。
それはどこか。
足もとです。
地面に立つために人は両足で踏ん張ります。
そこをめがけるのです。
接続詞がヒント
目指すのは相手の根拠です。
提起された内容とその説明にあたるところです。
なぜこのような発言がされるのか。
必ず理由の説明があります。
そこに述べられている論理に反論するのです。
どうやって違う考え方を導き出せばいいのか。
ほとんど経験がないという人には、まさに難問です。
接続詞なども参考になりますね。
理由をあらわす接続詞を探して、筆者の論点をまとめましょう。
順接なら「なぜなら」「すなわち」「だから」「したがって」などに着目します。
逆接なら「しかし」「ところが」「それなのに」などを探せばいいのです。
筆者はそこへ話を導いていこうとしています。
どういう根拠があると言っているのか。
ここにあるような接続詞で判断しましょう。
ポイントを見つけたら次は徹底的に土台を崩しましょう。
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どんなに大柄な力士でも、足元を払われると意外にもろいものです。
途端に崩れ去ります。
トッピングのような細かな内容をいくら否定しても少しも痛くはありません。
それよりも足をひっかけて1度で倒すことを考えてください。
相手が持っている最も弱いところを突くのです。
これができない限り、小論文で生き残ることはできません。
つまり1人ディベートで成功しないのです。
そのためにはどうしたらいいのでしょう。
相手の論拠は何かを早く見抜くことです。
必ず弱点があるはずです。
わかっていても書いてないことがあるのです。
知っていて書かないのですから、タチが悪いですね。
しかしそこが弱点です。
鋭く突いて下さい。
書いてないこと
課題文に書いてないことはなんですか。
それを深掘りしましょう。
白日の下に晒すのです。
相手が最も触れられたくないことです。
脱炭素社会に最も核エネルギーは向いている。
全く大気の環境を汚染しない。
だからこれからの社会にとって原子力発電は必要なのだ。
こういう論理がでてきたら、どこから攻めますか。
脱炭素社会などという、トレンド用語をもってきたのはわかりますが、危険性という意味ではどうなのでしょうか。
福島第2原発を廃炉にするため、どれほどの費用を払っているのか。
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汚れた水を海に捨てることの是非はどうか。
大気だけが汚れなければいいワケではありません。
海洋への汚染について全く触れていないのは、意図的なものです。
他にも脱炭素型の発電システムはないのでしょうか。
いくつもの視点を出せば、相手がわざと隠してしまいたい事実を浮き彫りにすることができるのです。
そこまで目を向けられるといういうことは、ある程度の学習を必要とします。
しかしそれが1人ディベートには求められているのです。
ここではごく単純なパターンを書きました。
プラスチックフリーについても同様です。
海の汚染はひどくなる一方です。
しかしだからといって紙の素材ばかりにしたらどうなるのか。
少し考えてみてください。
森林破壊が進みますね。
論点はつねにいくつもの要素を持っています。
それぞれの論理の別の側面をつねに考えるようにしてください。
そうするだけで、1人ディベートに勝てます。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。