東宝と劇団四季
みなさん、こんにちは。
ブロガーのすい喬です。
今回は5月末から帝劇で始まるミュージカル「レ・ミゼラブル」の話をさせてください。
今までに何度上演されているのでしょうか。
今や押しも押されもしない東宝の看板ミュージカルになりました。
元々、ぼくは音楽劇が大好きで、劇団四季の舞台も見ます。
特に「キャッツ」は好きですね。
ニューヨークでも見ました。
曲はほとんど覚えています。
しかしストーリーが難解なのです。
T・S・エリオットの詩が原作です。
よくぞあのミュージカルに仕上げたものです。
今までに4回ぐらい見ています。
「ライオンキング」「オペラ座の怪人」「アイーダ」なども好きです。
ダンスのレベルがすばらしい。
もちろん、音楽もいいです。
「美女と野獣」「アラジン」のデュエットもきれいです。
ここ30年ほど、四季はディズニーとのコラボに次々と成功しています。
ディズニーのミュージカルはなんといっても音楽がきれいです。
テーマ曲が必ずヒットしています。
四季は元々フランスのストリートプレイが中心の劇団でした。
日下武史など初期のメンバーはミュージカルとは無縁だったのです。
『アンチゴーヌ』(アヌイ)、『間奏曲』(ジャン・ジロドゥ)などの難しい芝居ばかりやっていました。
四季の芝居を意識したのは「ジーザス・クライスト=スーパースター」が最初でした。
日生劇場がその舞台です。
鹿賀丈史が主演でしたね。
あの不思議な形をした空間が、新しい時代の演劇によく似合っていたのを覚えています。
四季は少しづつミュージカルをやるようになっていったのです。
あの後記憶にあるのは「エビータ」ですかね。
スターシステム
東宝と四季を比べると、劇の作り方に微妙な違いがあって面白いです。
四季の創立者、浅利慶太はスターシステムと正反対の道を辿りました。
すばらしい舞台があればそれでいいというのです。
出演者の名前などは消えてしまっていい。
劇団の名前など憶えてもらわなくていい。
ただ感銘を受けた舞台がそこにあったという記憶が残れば、それでいいというのが彼の考えでした。
今も公演間近にならないと、誰が出演するのかわかりません。
同じ役を何人もでやっています。
全国同時公演に耐えるだけの技量をもった俳優が在籍しているという自負があるのです。
それに比べると、東宝は写真入りでキャストの名前を全て公表しています。
四季を退団した俳優の中には東宝のミュージカルに参加した人もいます。
きっと四季とは違う空気感に憧れたのかもしれません。
今度の「レ・ミゼラブル」で重要な役割を演じている濱田めぐみさんもその1人です。
彼女の歌唱力は群を抜いていますからね。
濱田さんは「アイーダ」をほとんど1人で1000回以上やり抜きました。
もちろん、同じ役を何人もで受け持ちます。
今回も大阪、福岡、松本など主要都市をまわるのです。
スターシステムの極限は宝塚です。
この話はいずれどこかで書きましょう。
歌がすごい
いよいよ5月末から「レ・ミゼラブル」の公演が始まります。
コロナ禍の中、無事にスタートが切れればいいんですけど。
ちょっと心配です。
東宝のミュージカルの中では「ミスサイゴン」「屋根の上のバイオリン弾き」「ラマンチャの男」などと並んで、ぼくの好きな芝居です。
なんといっても歌がすごい。
試しにYoutubeを見てみましょう。
東宝は意識して、動画を流しています。
広告プロモーションの量が半端じゃありません。
稽古場の様子から、本番の名演シーンまで、これでもかというぐらい公開しています。
もちろん、四季もやっていますけどね。
明らかに意識しあっています。
いい勝負なんじゃないでしょうか。
これからはネットでのプロモーションが主流になるのは間違いありません。
「レ・ミゼラブル」がなぜここまでの人気を得るようになったのか。
それにはストーリーの巧みさもあります。
ビクトル・ユーゴーの作品を読んだことのない人にもわかるように、きちんと構成しなおしてあります。
あらすじを書くとキリがありません。
1815年ツーロン。
パンを盗んだ罪で逮捕されたジャン・バルジャンが主人公です
仮釈放されて外に出たバルジャンを助けたのはミリエル司教でした。
ところが彼は銀の食器を盗み出し逃げ出してしまいます
ところが司教は食器を与えたのは私だと言い、罪を咎めません。
バルジャンは自分の行いを恥じます。
新たな道へと進むのです。
それから8年後。
バルジャンは名前を変え、工場を経営し市長になっていました。
執念深く彼を追いかけていたジャベールは逃げた囚人が市長ではないかと疑います。
追ってきたジャベールを怪力で捻じ伏せ難を逃れたのです。
ストーリーがものすごく複雑です。
ここから先は舞台をみるのが1番いいような気がします。
歴史と人間
この作品が大きく見えるのは、政治の荒波の中を生きる人間が描かれているからです。
ナポレオン1世没落直後の1815年から、ルイ18世・シャルル10世の復古王政時代。
さらにその後の時代まで。
フランス革命と当時の社会情勢や民衆の生活が物語の背景にあるのです。
その背景がこのミュージカルにはうまく反映されています。
さらに舞台を見事にしているのが歌です。
ほとんど台詞も歌で構成されています。
ある意味でオペラのようなつくりになっているのです。
先日NHKで放送された「レ・ミゼラブル」関連の番組で1番驚いたのは、訳詞をした岩谷時子さんのことでした。
この芝居に出てくる歌の翻訳に1年かかったとか。
日本語の1つ1つの音を、音符の上に重ねていったそうです。
だから聞いていても違和感なく、音が耳の奥でなります。
自然なのです。
重ねてつめて発音する必要がありません。
1つの音符に1つの音がのっています。
これを忠実に守るためにものすごい苦労をして訳詞をしたというのです。
岩谷さんのプロ根性には頭が下がりました。
有名な曲がいくつもあります。
最もよく知られているのはなんといっても「民衆の歌」でしょうね。
これはフランスの国歌をイメージして作られたそうです。
高校時代、世界史の先生が黒板にフランス語で歌詞を書いてくれました。
「ラ・マルセイエーズ」です。
今でも歌えます。
その音の流れをうまく使っています。
「民衆の歌」は元気がでますね。
一緒に歌いたくなります。
コロナ禍であえいでいる時に声を出すと、力が湧き上ってくるような気がします。
長調から短調へうつり、やがてまた長調の曲想にもどるところが見事です。
是非、覚えて歌ってください。
きっと元気になれますよ。