【悟浄歎異・中島敦】沙悟浄の目から見た孫悟空・三蔵法師の真実とは

中島敦の名短編『悟浄歎異』を扱います。学校では全く授業をした記憶がありません。もっぱら『山月記』が中心でした。しかし彼の小説『名人伝』などと並んで、味わい深い内容を持っています。互いの真実をどう見抜いたのかという点がポイントです。

【朝日新聞政治部・鮫島浩】特ダネへの執念が最後まで炎に【全貌】

朝日新聞の政治部記者となった著者がその内部の様子を書いた本です。実名で多くの人が登場します。会社の社員として生きていく道だけでなく、社会の木鐸として不正を暴くという側面も持っています。そのため息苦しい人生を歩むことになってしまいました。

【僕ならこう考える】思想家・吉本隆明の老年論には絶妙な味がある

吉本隆明は偉大な思想家です。彼の著書に刺激を受け、学びを続けた人はたくさんいます。しかし詩人としての地歩も、思想家としての仕事と並行してかためました。初期詩編は今も大変高い評価を受けています。ここでは彼の老年論について考えます。

【平家物語・木曽の最期】義仲の叫びと悲しみが切ない【巴への愛】

『平家物語』の中でもよく読まれる木曽義仲の最期のシーンです。朝日将軍と呼ばれ、権力を一時期は握ったものの、長くは続きませんでした。やがて合戦が続き、ついにはその命を失う時がきたのです。戦さの様子を読んでみてください。

【山月記・中島敦】臆病な自尊心と尊大な羞恥心のゆえ虎になった男の話

中島敦の小説『山月記』は必ず高校で習う小説てす。人間ならば誰でもが持つプライドが邪魔をして、素直になれないということがあります。その故についに仕事をやめ、詩人になろうとしました。しかし挫折し、やがて虎に変身してしまうのです。

【赤い繭・安部公房】非在の証明にこれほど真剣な主人公は皆無だった

安倍公房の小説はどれも存在の本質に迫ろうとする難解なものです。しかし理解できないのかと言われると、そんなことはありません。どれも大変に面白いのです。それは戯曲も同じです。見た後、その世界で立ち止まらざるを得ないものばかりです。

【平家物語・祇園精舎】滅びの美をここまで感動的に描いた古典はない

平家物語はすばらしい歴史書です。一族が隆盛を誇り、やがて滅びいくという話は日本人の感性に合うのでしようね。特に滅んでいくものは美しいと感じる意識が無常観とあわさると、みごとなものになります。是非、声に出して読んでみてください。

【静縁のこけ歌・無名抄】過ぎたるは及ばざるが如しとは【鴨長明】

鴨長明の著書『無名抄』は中世の歌論書としてよく知られています。その中にある歌を作った高僧の話があります。自分ではいい歌だと思ったものの、批判され、どうにも納得できずに、他の歌人にみてもらいました。その結果どうなったのでしょうか。

【漢文・世説新語】人生の達観した生き方を一兵卒から学ぶ【身の丈】

『世説新語』という本をご存知ですか。高校の漢文の授業でも習います。今回はその中でもよく取り上げられるある兵士の話です。命を狙われている人を助けるために、お酒を飲み、酔っ払ったフリをして、わざとここにお尋ね者がいると叫んだのです。その結末は。

【先哲叢談・儒者伝】君子の心構えを説いた伊藤仁斎のスケールの大きさ

先哲叢談という儒者伝について勉強しましょう。あまり高校でも扱うことはありません。ここでは伊藤仁斎を批判する態度について書かれています。その時、批判された仁斎は大きな心のまま、動揺もせず反論もしませんでした。

【鶏鳴狗盗・孟嘗君】勝ちすぎれば必ず滅亡を早めると信じた政治家

鶏鳴狗盗という言葉を知っていますか。高校の漢文で必ず習います。内容はそれほど難しいものではありません。孟嘗君の話です。宮城谷昌光の小説にもあります。その話から展開し、政治家の生き方についても考えてみました。

【禁色・三島由紀夫】金屏風に描かれた絢爛たる異世界の絵巻【同性愛】

三島由紀夫の小説『禁色』は特異な作品です。同性愛者たちの生態を描きながら、同時にかつての女性たちに対する復讐を描いています。そのための道具が、若くて美貌の私大生です。彼の持つ魅力に翻弄されていく姿をよみといてください。

【源氏物語】紫式部が女性の生きざまを本気で描いた愛の世界の神話

『源氏物語』は高校で何段も習います。しかし敬語が非常に難しいため、原文で読むのは苦しいです。むしろお勧めはマンガと現代語訳です。読み始めたらやめられなくなります。人間の生きざまをそのまま描き切った渾身の作品ですね。

【漢文・百喩経】笑いに包んで人生の真実を説いた特異な仏教経典

仏教の経典にもいろいろなものがあります。この『百喩経』は寓話を主題にして作品です。最初はおかしくて、つい笑ってしまいますが、その後で人生の教訓を学ぶのです。ユニークな古代インドの話が満載されています。

【文学の未来・小野正嗣】新しい切り口から自分と世界との関係を築く

文学の持つ力とは何でしょうか。私たちはどうして本を読むのか。これは永遠のテーマです。1つだけ言えることは、本を読むことで、自分が何を考えていたのかを知るということです。新しい世界との関係をどうしても探しださなくてはいけません。

【言葉を生きる・若松英輔】たった1つのことばをみつけるために人は

若松英輔氏のエッセイを紹介しましょう。高校3年用の教科書に所収されている文章です。非常に柔らかな言葉が並んでいます。けっして難しい表現を使っているワケではありません。しかしその内容は深いです。人の悲しみの意味を探ります。