コンクールは花盛り
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回もチャットGPTの話を書きます。
7月2日づけの朝日新聞に取り上げられていた記事の話です。
生成AIを夏休みの作文コンクールなどで禁止するという、文科省のガイドラインについての話題なのです。
夏休みをひかえて、ものすごい数のコンクールが催されます。
学校の掲示板に貼り切れません。
税の作文、水道の作文、人権の作文、国際理解教育の作文、読書感想文。
さまざまな団体が、これでもかというくらいコンクールをやります。
表彰状の他、金一封や海外研修旅行などもつき、なかなか魅力的な内容です。
しかしここで大きな問題が持ち上がりました。
それがチャットGPTに代表される「生成AI」の影響なのです。
昨年の11月に登場して以来、その進化は目を見張るものがあります。
コンクールに応募する人が、このアプリを使おうと考えても、少しも不思議ではありません。
もちろん文章の全てをこれでまとめるのは無理です。
現在の生成AIにそれだけの能力はありません。
実際に使ってみれば、それがよくわかるはずです。
内容があまりにも平板で、およそ独創性に欠けるからです。
しかし甘くみてはいけません。
文体も「である」「ですます」など、かなり正確に選べます。
例えば「水道」についてほとんど情報がなかったとしても、それを「ある程度」の形に「それらしく」文章化してみることは十分可能なのです。
水道の重要性(試み1)
水道は私たちの生活にとって非常に重要な役割を果たしています。
清潔な水を利用できることは、私たちの健康と生活の質に直接関わっています。
以下に、水道の重要性について詳しく説明します。
まず第一に、水道は私たちの健康に欠かせません。
飲料水としての水道水は、私たちが毎日体内に取り入れる重要な要素です。
清潔で安全な水を利用することで、細菌やウイルスなどの病原体から身を守ることができます。
また、水道水は料理や食品の調理にも使用されます。
十分な水道の供給がなければ、適切な衛生状態を維持することができず、病気のリスクが高まるでしょう。
さらに、水道は私たちの生活の快適さを支えています。
水道を利用することで、手洗いや入浴、衣類や食器の洗浄など、日常生活のさまざまな活動をスムーズに行うことができます。
水道の普及により、生活の効率性が向上し、時間と労力を節約することができます。
また、水道の存在により、都市部や農村地域での生活環境が改善され、生活の質が向上します。
さらに、水道は環境にも大きな影響を与えています。
水道を利用することで、地下水や河川などの天然水源への負荷を軽減することができます。
これにより、自然環境や生態系を保護し、水資源の持続可能性を確保することができます。
また、水道の普及により、衛生設備の整備や廃水処理などの環境保護活動が進展し、水質の改善と生態系の保全が促進されます。
しかし、水道の利用には責任も伴います。
私たちは水道を節水することや、水の浪費を避けることが重要です。
また、水道設備の定期的なメンテナンスや改善も欠かせません。
持続可能な水道システムの維持と管理は、私たち自身と未来の可能性を作り出しているのです。
国際理解教育の重要性(試み2)
国際理解教育は、現代のグローバルな社会において非常に重要な役割を果たしています。
国際理解教育は、異なる文化や価値観を持つ人々との相互理解を深めるための教育手法であり、以下にその重要性を詳しく説明します。
まず第一に、国際理解教育は相互尊重と寛容さを促進します。
世界は多様性に満ちた文化や民族の集合体です。
異なる背景を持つ人々との接触を通じて、相手の文化や言語、信念を理解することで、対話や協力の基盤が築かれます。
国際理解教育によって、他者を尊重し、対話の場を設けることで、互いの違いを受け入れ、共存する力を養うことができます。
さらに、国際理解教育は平和と協力の概念を育む手段となります。
国境を越えた交流や協力は、戦争や紛争の予防につながります。
異なる国や地域の人々との交流を通じて、相手の立場や視点を理解することで、対立や偏見を解消し、共通の利益を追求することが可能となります。
国際理解教育は、相互依存の時代において、持続可能な平和を築くための基盤を構築する重要な要素となっています。
さらに、国際理解教育はグローバルな問題に対する意識を高めます。
地球規模の課題である気候変動、貧困、人権、教育などは、国境を越えた協力が必要です。
国際理解教育によって、学生たちは世界の現状や問題についての理解を深め、共通の価値観や目標を追求する意識を醸成します。
これによって、国際社会での主体的な参加や解決策の探求が可能となります。
最後に、国際理解教育はグローバルな市民としての力を養います。
国際的な視野や異文化理解、コミュニケションの広がりが世界の安定と平和の基本になりうるのです。
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2つのケースをチャットGPTで検索してみました。
あなたはこれを読んで何を感じましたか。
このままで応募するのは無理です。
あまりにも平板に過ぎますね。
しかしここに自分の経験などをさりげなく織り込んでいったらどうなるでしょう。
審査をする人に、それが見抜けると思いますか。
見抜く方法
博報堂教育財団主催の「読書推せん文コンクール」には昨年、小中学生から約2万5千点の応募がありました。
今年はその募集要項に注意書きが追加されたのです。
「自分以外の人やAIが作成したり考えたりした文章での応募はできません」という一文がそれです。た。
いよいよ現実になったかというのが、実感ですね。
チャットGPTの使用を見抜くのは至難の業です。
以前からあったコピペを見破るソフトレベルでは、難しいのではないでしょうか。
生成AIは日々進化しています。
それにあわせてアプリを開発するのは、事実上不可能に近いと考えられます。
使用したことが判明すれば、応募の資格が停止されるのは当然のことです。
しかしそこまで審査員に見抜けるのかどうか。
もし自分が担当者であったら、いくら直観を働かせろといっても、限界を感じます。
今回の記事は夏休みの宿題のレベルの話です。
これが大学受験の推薦入試、総合型(旧AO)の場合だったらどうでしょうか。
あらかじめ、自宅で論文を書いて提出する場合、最大限、このアプリを使いたいとは思いませんか。
もちろんわからないように、表現や構成をかえ、論点だけを借りるということも考えられます。
あるいは小論文の練習に使うこともありえますね。
問題集を使って1つのパターンだけを勉強するより、いくつかキーワードをとりかえるだけで、新しい視点の文章が生成するのです。
それをうまく自分なりにアレンジしていくことで、小論文の型を覚えることもできます。
生成AIの裾野は想像以上に広いと思われます。
今年の試験には、必ずこのテーマが出ますね。
意識して取り組んでおいてください。
自分で実際に試してみることをお勧めします。
今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。