他者の目
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文を書き上げた後の話をします。
これはよく言われることですが、自分の書いた文章はうまくみえるものなのです。
書き終わったときの高揚感を味わった人は多いでしょう。
誰でも少し興奮状態になります。
自分の文はわかりやすく、まとまったものと感じやすいのです。
ちょっと自慢したい気分ですね。
はっきり言っておきます。
そんなことはありません。
やはり不十分なところがあちこちにあるのです。
ではどうしたらいいのでしょうか。
他者の目で冷静に読み取ることが最も大切です。
なぜそうしなければいけないのか。
その証拠に自分の書いた文を、しばらく寝かせておいてみてください。
意味がわかりますか。
時間をおいて読み直すのです。
それも他人の目で冷静に読むのです。
意味がきちんと通っているか。
ことばが対応しているか。
しばらくしてから読むと、修正したいところがあちこちに出てきます。
接続詞の使い方が間違っていたりします。
文末表現が単調で読みにくいケースもあります。
さらには、1つのセンテンスが長くて、文脈が入り乱れている場合もあります。
何度も読み直す
繰り返します。
冷静になること。
他者の目になることが大切です。
繋がり方が曖昧であったり、論理展開が不自然であったりするところが必ずあります。
どこが良くて、どこがよくないのか。
解決策を示せたかをチェックしてください。
小論文には必ず解決させるための方法が必要です。
どうしてもそこまでいかない場合でも、こちらの方向へ舵を切れば、必ずよくなるという示唆が大切なのです。
解決への可能性を切り拓くための具体策がどの程度あるのか。
それを実際に応用したとき、どれくらいの効果があるのか。
そうしたことをこまかく検証していくのです。
そうすると、ただ小論文を一時の気分で書いたということよりも、内容に大きな問題点があることに気づきます。
つまり書くということは、自分の考えを紙の上に対象化することなのです。
それまでは気分として、こんなこともあるかなと思っていたことを現出させます。
それを他者の目でもう一度眺めてみたとき、より冷静に判断ができるということなのです。
賛否どちらの場合でもこのことは言えます。
その際に大切なことを2点あげておきましょう。
ここに視点を集中して読んでください。
そうするだけで、自分の書いた文章が客観的にみえてきます。
2点に着目
次に視点をかえて、他者の目でどう論文を読むかについて検討してみましょう。
それは何か。
次の2点に着目して、文章を読んでください。
あくまでも自分ではない人間が書いたものを読むというスタンスをキープします。
どこを読めばいいのか。
ズバリこの2つのポイントです。
①筆者が暗黙の前提として提出した内容に整合性はあるのか。
②筆者の主張通りにしたとき、無理な展開が予想されないか。
筆者とはつまりあなたのことです。
しかしここではあくまでも第三者です。
自分ではない誰かが書いた文です。
この2点に着目すると、マイナスの地点がみえてきます。
そこから内容の整合性を問うのです。
もちろん、それでもダメな時もあります。
あまり無理をしすぎないで、順番に内容をチェックすることです。
そこで整合性が途切れたと思ったら、課題文まで戻ります。
つまりあなたの書いた論文以前にまで戻るのです。
課題文はヒントの宝庫です。
そこにあるキーワードが文章を書く上で、水先案内人の役割を果たしてくれたはずです。
あの時にここでNoを言おうとしたものの、やはり無理があったとか。
結局課題文の内容を繰り返しただけで終わってしまったなどという構図がみえてきます。
いいも悪いもすべてが課題文の論点の延長上になっていたとしら、評価はあまり高くなりません。
なるべく違う角度から内容を把握していく努力を重ねましょう。
具体的にどうやったら違う角度を得られるのか。
難しいですね。
それもこれも訓練です。
再度、課題文と正対する
どうしてもおかしな部分があったら、もう一度課題文をゆっくり読んでみてください。
慌てて、読み取ったと思った内容が違っていたということも、よくあります。
Noの言い方を間違えたということもあります。
筆者の提出した前提に対する疑問を述べるのなら、その内容がより正確でなければいけません。
あちこちに落とし穴があります。
気をつけて前に進んでください。
課題文の方法で進んだら、きっとうまくはいかない。
そう考えた根拠に自信がありますか。
そこがぐらつくと、論文が根底から覆されてしまいます。
そういう場合の基本は、自分の立場との違いを明確にすることです。
ではどういうふうにそれを表現したらいいのでしょうか。
小論文はあなたの国語力を見せる場所です。
幼稚な語彙ばかりを重ねてはいけません。
必ず知性を感じさせる表現を使うことが大切です。
書き言葉と話し言葉の違いをはっきり認識しているということをアピールする場でもあります。
ある程度の読書体験がなければ、文章はうまくならないでしょうね。
自分が受験したい大学の過去問をチェックする必要もあります。
とにかく解答を試みてください。
決められた時間で字数を守ることです。
実際の試験と同じ条件でどこまで書けるのかというのが、勝負の分かれ目です。
何度もやっているうちに、他者の目で自分が書いた文章を見ることができるようになります。
その頃はかなりスキルが上がっています。
時間をかけて学んでください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。