我慢強さ
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はちょっといつもと違うテーマを考えてみます。
大人がよく使う言葉の1つに子供が我慢をしなくなったというのがあります。
ひとつのことをじっとやり続けることができない。
教室でも椅子に座っていられない。
人の話を黙ってきくことができない。
なるほど言われてみると、そういうタイプの子供が増えたような気もします。
少子化の時代ですから、兄弟同士の争いも少なくなりました。
親も子供に少し甘いのかもしれません。
食事のシーンなどを思い出してみればよくわかります。
かつてはのんびり食べていたら、おかずもすぐになくなってしまいました。
何人も食べ盛りの子供がいれば、好きなものだけをマイペースで食べるなどということは到底できません。
そこへいくと、今は暢気なもんです。
どうしても我が儘を許してしまう傾向が強くなりますね。
競争そのものがないのです。
しかしこれは子供だけの問題なのでしょうか。
最近のコンビニはあまりに商品の入れ替えが激しすぎるという声をよく耳にします。
1ヶ月単位で棚の中身はどんどん変わっていく。
消費者のニーズを的確に捉えているといえば、確かに恰好はいいです。
しかし実際はメーカーに消費者が踊らされている側面もあります。
これが次のトレンドだといわれれば、ついその気になってしまうのが現代人の心理なのかもしれません。
今はSNSが全盛です。
ネットでさりげなくPRを打つこともできます。
あるいは広告とはわからない形でニュースを装って流す手もあるのです。
ニーズの喚起
私たちは毎日さまざまなメディアで言葉や映像に触れています。
その分、目が次第に鈍くなっているのではないでしょうか。
むしろそういう狭い場所へ追い込まれているといった方がいいのかもしれません。
選択眼が虚弱化しているのです。
だからそこにメディアなどが忍び込む余地もあります。
新しい味だといわれればそうかと思い、それを試す。
すぐ1月後には次の新しい味が現れる。
この繰り返しなのです。
色でも形でも、これがトレンドだと言われればそこに群がってしまう。
自分から能動的に何かをするということが少なくなりました。
巷でよく聞く言葉は「かわいい」です。
消費者はいつも待ちの姿勢だけをとっていれば、最新のものが手に入ります。
買いに行けなければ、ネットで注文すればいいのです。
まるでフォアグラをとるために無理に太らされているアヒルのようにも見えます。
情報が多すぎますね。
スマホから毎日流れてくるトピックスが頭の中で溢れかえっているのです。
無理矢理つめこまれた食事を拒否する自由さえもありません。
我慢することができないのは、本当のことをいえば大人達なのかもしれないのです。
誰もが定番のコースに乗りたくてうずうずしている。
少しはずれたと思わせるもう1つの仕掛けもあります。
原宿がいいという人が多くいれば、すぐに裏原宿を作るようなものです。
必ずある事柄の裏側にもう1つのサブカルチャーを配置する。
そのことで表側が一層光って見えるのです。
人々は見えない焦りを常に持ちながら、安住の地を求めています。
しかし簡単に、それが見える時代でもありません。
この繰り返しの中で、無意識のうちに感性が麻痺させられていくのです。
気がついたら、本当の自分の嗜好を全て失っているというケースがないワケではありません。
子供たちだけを責める以前に、自らを責めなければいけないところです。
そうでないと、本当に大切なものを見失ってしまうかもしれません。
たっぷりと太らされた後に、肝臓をとられるのだけは、ごめんこうむりたいものです。
8対2
組織というものはすべからく、8対2の法則で成り立っているといいます。
すなわちできる人間が2、その後についていくだけの人間が8だという図式です。
確かにそういわれてみれば、そんな気がしないでもありません。
常に2割の構成員は時代の先を見て、組織の未来を考えています。
逆にいえば残りの8割の人は、その日その日をただなんということもなく暮らしているワケです。
不思議なことに、どんなにすぐれた人間ばかりを集めた組織でも、この比率はあまり変わらないといいます。
黄金分割に近いといっていいのかもしれません。
考えてみれば、先見性を持つということは苦しいことです。
他人に見えていないことを考え、それを実現していくのです。
セブンイレブンを日本で立ち上げたメンバーなどは、いわばこのジャンルに入る人達でした。
社内の半端者数人だったのです。
与えられた机と椅子は、部屋の最も隅にある日の当たらないところに置いてあったそうです。
彼らは本家のアメリカにもないマニュアルを作り出し、さらには冷蔵庫の仕様まで特殊なものにしました。
全て何もないところからの発想です。
小分け配達を実現し、ポスシステムを導入しました。
最期には銀行までつくり上げたのです。
わずか数名の異端児達が作り出したコンビニが、日本の流通のメインになると誰が考えたでしょうか。
当時の責任者は後に親会社の会長になり、その後静かに去っていきました。
ニッチ・マーケットと言葉でいうのは容易いです。
しかしそこに目を向ける人間のストレスは想像以上のものがあるはずです。
どちらになるのか
組織に入ったら、自分は2割になるのか、残りの8割になるのかを決めなくてはなりません。
守りだけを考えていると必ず芯から腐ってきます。
ところが飛躍はもっと怖いのです。
たくさんの会社が似たパターンで消えていきました。
いずれにしても日々、そのための場があなたの前にも用意されています。
黙って乗せられる人間になるのか。
それとも積極的に仕掛けていく人間になるのか。
当然のことながら、富は仕掛ける側の人間の元で増殖していきます。
彼らはいつも塀の上を歩いています。
失敗することも当然あるでしょう。
しかし何度も繰り返すだけの知的財産を持っています。
トレンドを作り出せるのです。
あなたはユニクロの第1号店がどこにあったか知っていますか。
それを調べるだけで、現在との差が見えてきます。
つい最近、銀座に新しいユニクロの店がオープンしたそうです。
その間に既存の衣料品店がどれほど消えたことか。
新しい時代のトレンドは2割の人がつくり、残りの8割は消費します。
組織は冷徹なものです。
必要がなくなれば、やがて会社も消滅し、社員もいなくなります。
新しい格差社会は今も底深くで密かに無限ループを繰り返しているのです。
今回も最後までお付き合いただきありがとうございました。