【都立推薦入試・キャッシュレス化・立川高】日本も90%レベルへ!

小論文

普及しない背景

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は2020年度立川高校の推薦入試問題を考えます。

毎年2問が出題されます。

後半が日本のキャッシュレス化の問題でした。

中学生にとってはまだあまりなじみのないテーマかもしれません。

しかしここ数年の流れからいって、十分想定内にあったことだけは間違いありません。

問題の趣旨はキャッシュレス化があまり日本で普及しない背景について考えるというものです。

問いには資料が4つ添付されています。

資料1は各国のキャッシュレス決済比率の状況(2015年度)です。

韓国の90%に比べて日本は20%と非常に低い値です。

資料2は日本で普及しにくい主な理由が7つ挙げられています。

まとめてみました。

1 盗難が少ない

2 現金に対する高い信頼がある


3 店舗のレジ処理が高速かつ正確である


4 ATMの利便性が高い


5 支払い端末の導入にコストが発生する


6 キャッシュレス支払いでは店側に支払い手段利用のための手数料が発生する


7 実際に現金化するまで1カ月程度のタイムラグがある

さらに資料3では逆に現金支払いの仕組みを維持するための費用を概算で示しています。

これもまとめておきます。

1 紙幣の製造、650億円、銀行での窓口人件費、1000億円。

2 ATMの警備費、1400億円、運営費1460億円、機器設備費4120億円。


3 小売店の設備費、600億円、警備費500億円、人件費5000億円


4 現金被害900億円。

最後に資料4ではキャッシュレス社会に対する反対の主な意見をまとめています。

1 支払いの実感がないため、金銭感覚が麻痺する

2 個人情報の流出など犯罪が多発する


3 システムの故障などに対処しきれない。

以上が資料の全てです。

出題内容

この資料に対して問いが2つ出題されました。

問1 日本におけるキャッシユレス決済の現状について答えよ。

問2 キャッシュレス社会を推進するためにはどのようにしたらよいか。考えを示せ。

資料は全て経済産業省「キャッシュレス・ビジョン(平成30年)」を元に作成したものでした。

なんといっても最初に驚くのは日本のキャッシュレス決済率が圧倒的に低いことです。

諸外国の事情とはまるで違うことに驚かされます。

韓国の90%は別格としても中国、カナダ、イギリス、オーストラリアなど軒並み50~60%を超えています。

なぜ、日本はこれほどまでにキャッシュレス決済が普及しないのでしょうか。

中学生には全く遠い世界の問題だったかもしれません。

受験生はキャッシュレスと言われて最初に何を連想したのか。

基本的な認識がとても大切です。

そこをきちんと押さえておかないと、とんでもない解答をしてしまう可能性があります。

キャッシュレスの範疇には何が入るのでしょうか。

ここがポイントです。

通常はクレジットカード、デビッドカード、電子マネーによる決済をそう呼びます。

中学生などはつい「**ペイ」という名前のついた電子マネーだけを連想しがちです。

ここではカード類全体の決済を意味することをしっかり把握しておくことです。

クレジットカードは割合に普及しているので、理解がしやすかったかもしれません。

1番耳にしたことがないのは、多分デビッドカードです。

銀行預金からその場で決済されるので誰でも口座さえ持っていれば利用できます。

未成年でも開設可能というのがこのカードの特徴です。

あとは最近よく話題になる「**ペイ」です。

マイナンバーカードの普及を目的として、政府はかなり広報活動をしました。

現金をキャッシュバックする「マイナポイント」の入金に使えると宣伝したのです。

しかし全体からみればまだ非常に利用者は少ないです。

インバウンド

なぜ政府はキャッシュレス化を推進しようとするのか。

その理由も頭に入れておかなくてはなりません。

1番の理由は訪日外国人への対応です。

その主眼は経済の活性化にありました。

もちろん、そのための目玉として東京オリンピック・パラリンピックの開催も予定されたのです。

キャッシュレス化の進んでいる海外から来た外国人観光客が1番のターゲットでした。

日本で観光する際に、不便なくキャッシュレス決済を行える必要があったのです。

とにかくお金を落としてもらう。

そのために彼らが望むことはなんでもしようとしたのです。

その結果、中国人が特に好む銀聯カードを使える店が日本にも増えました。

Republica / Pixabay

今や約60万店以上が銀聯カードに加盟しています。

つまり中国からの旅行客にとって自国で使っているクレジットカードでそのまま買い物ができるワケです。

国内のインフラとして整備するのは当然のこととなりました。

しかし日本人にとってキャッシュレス化はあまり魅力がありません。

その理由は資料2にある通りです。

紙幣が大変きれいでニセ札が作りにくいという背景もあります。

さらに現金に対する信頼が厚いのです。

いまだにタンス貯金などという言葉があるのも日本の風土でしょう。

おそらく現金でしまっておくなどという思想は殆どの国にはないと思われます。

金やダイヤモンドなどの貴金属に換えておくのが常識です。

インフレやデフレを経験した国の人ほど、現金への信頼は薄いのです。

キャッシュレス化への道のり

昨今、高額な現金を持たずにカードで買い物をするという風景が増えてきたのは事実です。

しかしそれ以上にQRコードを使った決済の端末導入が急ピッチで進んでいます。

銀行の利息がほぼなくなったのにあわせての現象です。

資料3にある通り、銀行はATMの保守さえ苦しくなりつつあるのです。

他の銀行と提携を結び、効率の悪いATMを次々と撤去しています。

一方、各自治体のキャッシュバックキャンペーンとあわせて、「**ペイ」が乱立しています。

しかし話は簡単ではありません。

物やサービスを提供する店側で、キャッシュレス化に難色を示すところも多いのです。

特に中小の店では実施したくてもできない事情があります。

一番問題なのはコストです。

クレジットカードでも電子マネーでも、決済の際には情報を読み取るための専用端末が必要です。

クレジットカードの場合は数%の決済手数料も発生します。

わずかな儲けのために店側が負担しなければなりません。

さらに1カ月後までは資金が回転しないのです。

しかしグローバル化が進む現在、そうしたことばかりも言ってもいられなくなりました。

インバウンドが低迷している今の間に、システムを整備しようという政府のシグナルも点灯しています。

韓国では、利用額によって優遇税制を適用したりするケースもあるといいます。

店側に対して、一定額以上の売り上げがあるところにはカードの取り扱いを義務付けるという方法もとっているのです。

こうした諸外国の取組みを参考にしつつ、日本でも具体的な方策を次々と打ち出しています。

キャッシュレスの背景には少子高齢化による、労働力の不足もあげられます。

国力を衰えさせないために業務効率をあげることが必須です。

消費者に財布の口を開けてもらわなければなりません。

インバウンド対策ももちろん進めなくてはならないでしょう。

今後、キャッシュレス決済への流れはとどまることがないと思われます。

背景が多様で難しいだけに、それにあわせた対応が必要になるでしょう。

QRコード決済の会社の乱立もやがて自然淘汰がされるはずです。

スマホの普及に合わせて、流れが加速することは間違いありません。

キャッシュレスに関する基本的な知識をしっかり頭に入れておいてください。

このテーマがいつ出題されても、準備さえしておけば万全です。

今回も最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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