「思う」と「考える」
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文の書き方についておさらいをします。
いよいよ入試小論文の季節です。
今年はコロナ禍でとにかく大変でした。
授業も遅れ気味です。
暑い夏が終わったと思ったら、急に寒くなってきましたね。
受験シーズン到来です。
先生、小論文を書きました。
添削してもらえないでしょうかという生徒が次々とやってきます。
もちろんいつだってウェルカム。
ところが最初の文章からもう読みづらいのです。
なぜでしょうか。
きちんとした日本語になっていません。
簡潔な文章を書くということが小論文の基本なのです。
それには単文で構成しなさいと今までもずっと言い続けてきました。
短文じゃありません。
単文です。
主部があって述部があるというもっともシンプルな形の文章です。
少し個性がなさすぎないかと思う人もいるでしょう。
入試の小論文はそれでいいのです。
文学賞をとるためのものではありません。
まず目に入ってくるのは「私は~思う」「私は~考える」。
さらに「私は~思った」「私は~考えた」のオンパレード。
これはもう絶対にやめてください。
何度も言っておきます。
このタイプの文を書いちゃダメ。
初心者ほど、このサンドイッチ形式の文章が好きなのはなぜなのでしょうか。
添削の具体例
1 私は環境問題は地球にやさしくしなくてはいけないのだから、とても重要な人間にとっても動物にとっても大切な問題だと考えた。
2 私はプライバシーの保護のために人権を守らなくてはいけないが、個人に情報を管理する力がどれくらいあるのかと思った。
3 私はやさしい人間になるということの難しさを知ることで、同時に最近いろいろな本を読みながら考える。
4 私は学校の規則を守らないと人に迷惑をかけることになるから、やはりとても大切なものであると思う。
どうでしょうか。
文章を読んですぐに意味がとれますか。
全くわからないということはありません。
しかしこれは初心者に典型的なパターンの例です。
主語が「私」であるのはOKです。
小論文の主語は「私」だけです。
他の表現を使ってはいけません。
問題は間に文章を挟んで、最後に「思う」「思った」「考える」「考えた」で終わらせたところにあります。
はっきり言っておきます。
「思う」「考える「感じる」などという表現で文を終わらせるはやめましょう。
こういう文を書いている限り上達しません。
もう1つ。
間に挟んだ文章がねじれています。
その理由は2つの内容を1つの文にしたからです。
長くなったら文を切る
長い文章は初心者には不向きです。
特に「が」「だから」などで繋げるといくらでも伸びます。
それをさらに「私は~考える」でサンドイッチにするのですから、なにを言おうとしているのか、わからなくなってくるのです。
1の文章をぼくが添削するとしたらどうするのか。
最初に「私は~考えた」を消します。
不要です。
次に「だから」をとります。
少し表現をかえて「環境保護は」を主部にします。
「とても」もいりません。
「大変」「特に」「とても」「非常に」はつい書きたくなる魔法の言葉です。
これをなるべく使わずにすませるのです。
① 環境保護は人間や動物にとって大切なテーマである。
これを最初にもってきます。
典型的な単文です。
わかりやすいですね。
② 地球にやさしくするために、私たちはどのように行動すればいいのだろうか。
①と②の文章を続けて書きます。
これでこの小論文の方向がはっきりみえてきました。
最初の1の文と比べてどうですか。
すっきりしたでしょう。
簡単にいえば2つに文を区切ったのです。
中に入っていた部分を出しただけで、外の部材を全部取り除きました。
もう1つの添削例
2の文章についても書き直します。
「私は~思った」を消去。
① 人権保護のためにプライバシーを守らなくてはいけない。
最初にはっきりと言い切ってしまいましょう。
② 情報を管理することの難しさが、今あらためて問われている。
①と②を続けて書くと、確かにセキュリティを維持するのは大変だということがよくわかります。
これも単文の構成です。
長い文章を2つに切り、さらに挟んでいた部材を取り去りました。
ただこれだけのことで、無駄な表現がみな消え去ってしまうのです。
小論文はあまり水気を含んではいけません。
どちらかといえば、乾いた状態で最後まで文章を運ぶのが理想です。
個人の体験や比喩など織り交ぜなくても十分に意味のある内容になります。
もちろん、大切なのは事実と論理です。
この2つでぐいぐい押していけば、内容が理解しやすい文になります。
うまく書けそうですか。
それくらいはいつもできているという人は、もう1度自分の書いた文章を見直して下さい。
案外と不十分なケースが多いのです。
同時に表現にも気を使ってください。
同じ言葉を繰り返さないこと。
読んでいる人が飽きてしまいます。
繰り返しもいりません。
800字程度で同じ内容をリピートしていたら深化しないのです。
「です・ます」調との混在は絶対にNG。
「である・だ」調をキープしてください。
難しいのはわかります。
しかしこの文章スキルは社会人になっても十分に通用します。
自信をもって勉強を続けましょう。
長い文を絶対に書かないこと。
これだけで見違えるように読みやすくなります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。