複数のデータ
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。
今回は統計資料問題について考えてみます。
主にグラフなどの読み取りをさせるタイプの問題です。
今までは課題文のあるものを中心に考えてきました。
しかし最近の傾向として、統計資料をもとにした設問も出題されています。
それも1つではありません。
複数のデータを読み取りながら、文章を書くというタイプのものが多いのです。
現在のトレンドはつねに客観的なデータから何を取り出すのかにあります。
ビッグデータと呼ばれる膨大な資料は大きな価値を持っています。
しかしそれをきちんと分析して読み取れなければ、なんの意味もありません。
もちろん試験にそれほど複雑なデータを出題するケースは少ないです。
ポイントは受験生が提示されたものをどのように処理する力を持っているのかを見極めたいということです。
複数の統計資料を出す問題が普通だと考えてください。
このタイプの出題で1番のキモは勝手に都合のいい結論を出さないということです。
ともすると、自分の知っている命題に合わせようとして、無理をすることがあります。
ごく常識的な一般論を導き出してしまうのです。
これは大きな落とし穴です。
一見するとなるほどと感心させられますが、この結論は提出されたデータからは導けないということがよくあります。
このパターンは絶対にNGです。
ある現象は複合的な原因によって起こります。
それを与えられたデータの中から読み取るのです。
それができなければ、このような問題を出した意味がありません。
採点者はそこをチェックします。
学問は科学です。
必ずある仮説をたて、そこから現実に起こる事象を分析します。
そのメカニズムが提出できないということは、つまり能力がないとみなされるのです。
数値を客観的に
基本はいくつかあるデータから数値を読み取ることです。
この作業に時間をかけてください。
勝手な先入観でものをみないこと。
与えられた資料が全てです。
そこに世界のキーワードが含まれているのです。
なぜこのような現象が起こるのか。
その理由は何か。
それをグラフから読み取ってください。
その際に必要な作業は何か。
ズバリ比較と対照です。
相互のデータの違いをしっかり読み取ることです。
そこから原因を推論してください。
自分に考えられる事実を発見してください。
ここが最も難しいところです。
自分の知識を総動員することはあってもかまいません。
しかし事実を発見する時に、知識だけに偏ってはいけません。
どんな時も提出されたデータが1番の事実です。
その現実の上にたって読解、解釈へと進んでください。
それがうまくいけば、提案や理由の説明も可能だと思います。
こでもっとも大切なことはデータからは読み取れない無関係な提案をいくらしても意味がないということです。
採点者はここをじっくりとみます。
グラフの解釈
どこからこんな提案が出てくるのかという不審があるようでは、高い評価を得ることはできません。
必ずグラフの解釈から可能なモデルを作り出し、そこから解答を考える。
それ以外のことを考えてはいけません。
有効な提案はそれほどに多く出せるものではありません。
だからこそ、じっくりデータと向き合うという姿勢が必要です。
なぜその提案なのかという説明の場合も、一般論を書くのではありません。
データの中からこれだけのことを読み取ったからだということを強調してください。
その方が評価が高くなります。
書くのが苦しくなると、どうしてもありきたりの結論になりがちです。
その点を1番注意すること。
初心者であればあるほど、どこにでもあるような結論を導く傾向が強いです。
トレンドがどこにあるのかを探るのは大切なことです。
しかしそればかりにこだわってしまうと、本質を見失います。
推定は大胆に、しかしその背景にあるデータの分析は慎重に行わなければなりません。
現在の状況がこうなっているから、こういう点を改善した方がいいという提案をしていくのです。
それが理にかなったものであるかどうかは、採点者が判断します。
もちろん、データで読み取れもしないことを声高に述べても、なんの意味もありません。
テーマはいくらでも考えられます。
喫緊のテーマは膨大です。
少子高齢化などはデータ分析と非常に相性のいい問題になります。
老年人口と出生数
単純にいくつかのデータを出題すると仮定しましょう。
厚生省の資料などをみれば、データはいくらでもあります。
女性の初婚年齢の変化
出生数の変化
日本における人口ピラミッドの図式
女性の労働者数の推移
平均寿命の変化
ざっと考えただけでも5種類のグラフが頭に浮かびました。
実際はこんなもんじゃありません。
必要な資料は数限りなくあります。
これらの中で問題の趣旨にふさわしいものをいくつか出題すればいいのです。
そこから読み取れる内容は数多いでしょう。
1つの視点を作り出さなくてはいけません。
仮説と呼んでもかまわないのです。
日本の社会の高齢化と少子化には労働に携わる女性の数が増加したというところに1つの要因がある。
例えばこうした論点をつくります。
あるいは女性の高学歴化が、今日の少子社会の原因である。
これも可能性があるかもしれません。
ただしデータから読み取れない内容を絶対に書いてはいけません。
もちろん、そこから仮説を取り出すのはNGです。
社会背景が読み込める保証も必要ですね。
いずれにしても統計資料問題はピッタリと内容にくっついて考えなければダメです。
そのことを何度も繰り返しておきます。
データと関係のない提案をいくらしても評価されません。
じっくりと課題のグラフに目を凝らしてください。
必ず見えてくる風景があるはずです。
最後までお読みいただきありがとうございました。