【侵官之書・韓非子】法や規律に背く行為は善意によるものでも認めず

韓非子の「侵官之書」を読むと、一見簡単そうなことが書いてあると感じます。しかしその考え方を遡ってくと、法治主義の持つ厳しい現実につきあたるのです。儒家の考え方とは違う、法家の思想を学んでください。

【野分の垣間見・源氏物語】嵐の後六条院を見舞った夕霧は偶然継母を見た

『源氏物語』の中に「野分の垣間見」という章があります。それまで一度もみたことのない継母を始めて夕霧が見かけるシーンです。美しい母の姿にそれまで別の女性に寄せていた心が、失せてしまうほどのものでした。紫の上です。

【落語の国の精神分析】東大入試に登場した落語関連の難解な評論はコレ

落語に関係した本というのは、だいたい噺家の聞き書きが大半です。しかしかつて東大の国語の入試問題に出た評論は、全く違う趣向のものでした。精神分析学者が、落語という素材を使って、噺家の精神のありようを分析したものだったのです。

【蜜柑・芥川龍之介】疲労と倦怠の日を送る作家が生の意味を垣間見た瞬間

芥川龍之介の短編の中から1作を選んでみましょう。『蜜柑』はどうでしょうか。ほんとうに短い作品ですが、当時の芥川の心理状態を見事に描き出しています。奉公にでる少女が、汽車の窓を開けて蜜柑を投げたというだけの話ですが。名作ですね。

【宮城谷昌光・春秋時代】心憎いまでの柔らかな描写力を持った作家

宮城谷昌光の小説をご紹介します。多くの本がベストセラーになっていますね。そこにあるのは歴史だけではありません。人間が描かれているのです。どのようにして人は生きていけばいいのかということが、彼の小説にはたくさん散りばめられています。

【花山院の出家・大鏡】藤原兼家と道兼親子の陰謀に騙された天皇の悲劇

「花山院の出家」という話は『大鏡』の中でも代表的なものです。必ず高校の教科書には所収されています。権力闘争の中で、半ば騙されて出家してしまった天皇の悲劇です。その後、藤原摂関政治が大きく動いていった政変でした。

【三顧の礼】有能な人材を登用すれば自ずと展望が開ける【劉備と孔明】

『三国志』は魅力的な話ですね。登場人物にそれぞれの味があって、引き付けられてしまいます。その中でも軍師である諸葛孔明の存在は絶大です。彼の知略によって、どれだけの戦いに勝利できたのか。一つ一つチェックしていくだけで楽しいのです。

【汚れつちまつた悲しみに・中原中也】失ったものを無我夢中で追いかけて

中原中也の詩を読んだことがありますか。高校の教科書に必ず所収されています。「汚れつちまつた悲しみに」か「1つのメルヘン」のどちらかでしょうか。悲しみが汚れるとはどういうことなのか。少し考えてみてください。

【刺客・荊軻】秦の始皇帝を暗殺するために考えついた秘策とは【史記】

秦の始皇帝を暗殺しようとした荊軻の話です。このシーンはよく映画などにもなります。大変スリリングな場面なのです。生きて帰れるとは思っていませんでした。しかし暗殺を成功させるためには、他にもいくつかの秘策が必要だったのです。

【黒鳥のもと・土佐日記】長い船旅の間には歌人の横顔が色濃く【紀貫之】

紀貫之の『土佐日記』にはさまざまな段落があります。今回はよく知られた「黒鳥のもと」をとりあげましょう。55日間の旅の間にはいろいろなことがありました。天気のいい日は比較的楽に船が進んでいったのです。しかし海賊は怖かったと思われますね。

【藤壺の入内】亡くなった桐壺の更衣に似た先帝の娘を帝は密かに慕った

藤壺の宮と光源氏の関係は複雑です。一言でいえば、実の母によく似た女性ということになります。しかしそれだけではすまず、契りまで結んでしまうのです。その結果、子供が次の帝になるという複雑な出生の秘密を抱え込むということにもなりました。

【阿倍仲麻呂の歌・土佐日記】日本に帰ることができなかった文人の望郷心

阿倍仲麻呂といえば、遣唐使の時代の人です。その人が詠んだ歌をになぜ紀貫之は『土佐日記』ら載せたのか。その秘密がわかれば、この話はなかなか味のある内容になります。当時の船旅のつらさを想像することが大切ですね。

【誰かの靴を履いてみること】息子の学校生活に学ぶ【ブレイディみかこ】

エンパシーという言葉を知っていますか。他人の感情や経験などを理解する能力とあります。忖度などというのとは違い、徹底的に議論をして、その上で相手の立場を想像することが大切なのです。シンパシーとは根本的に違う考え方なのです。

【晏子・江南の橘、江北の枳となる】人の善悪は環境によるという教え

春秋時代の斉の宰相、晏子の話です。賢い人でした。宮城谷昌光の本『晏子』を読むと、そのことがよくわかります。彼をからかってやろうとした楚王が、逆に1本とられてしまうという話です。キーワードは橘と枳です。ぜひ覚えておいてください。

【此木戸や・去来抄】言葉ひとつに描写と風情のあはれを探る芭蕉門弟の姿

向井去来の俳諧本『去来抄』を読みます。俳聖と呼ばれた松尾芭蕉をあたたかなまなざしで見つめ、その様子を描き出しています。字の読み間違えをして低く評価した句が、実はすばらしいものであったという、心温まる文章です。

【倭建命・ヤマトタケル・古事記】大和の美しさを詠んだ辞世の歌が響く

『古事記』は日本最古の書物です。高校でも教科書に少しだけ載っています。今回はヤマトタケルが辞世の歌を詠んだ時の話を学びましょう。最も有名な歌の中には「まほろば」という美しい日本語が使われています。ぜひこの歌を覚えて下さい。