ChatGPTの底力
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はChatGPTの底力をみてみましょう。
夏以降、生徒の書いた文章を読み、毎日添削をしています。
受験校のレベルによって、内容は千差万別です。
高校入試の問題が、時に大学入試の小論文より難しいケースも多いです。
1年間に何枚読んでいるのか。
はっきりしたことはわかりません。
以前は大学入試小論文テストの採点もしました。
毎回100枚単位で答案を読んでいくと、自ずと構成力、文章力の良しあしもわかります。
これは理屈ではありません。
最初の数行を読むと、直感的に評価がつくのです。
もちろん、構成力、文章力、読解力などに分けて採点しますが、はずれることはありませんでした。
一言でいっていい文章は、読みやすいです。
無駄な表現がありません。
論理の筋道が通っているため、最後まで一直線で読めるのです。
語彙も正確です。
特に助詞の「てにをは」がはっきりしています。
そのため、主語と述語の関係がすぐに読み取れるのです。
下手な文章はまわりくどく、論理の筋道も通っていません。
何を論じようとしているのか、さっぱりわからないのです。
今回はあまり出題されないタイプの課題を例にして、小論文の難しさを考えてみましょう。
文章をまとめる時の参考にしてほしいです。
課題文型が主流
最近の入試は課題文型が主流です。
ほぼ70%が課題文を読ませ、それについて考えたことを書かせるものです。
文章だけでなく、グラフや表なども添えられています。
文章量も長いものが多いです。
特に難関校は何ページにも及ぶ長文を出題します。
確かに読解力をチェックするためには、最良の方法に違いありません。
しかしその逆に、わずかワンセンテンスだけの問題を出す学校もあります。
このタイプの学校は、生徒の持つ潜在的な能力を見抜きたいとするケースに多いです。
都立高校でいえば、ズバリ西高校ですね。
この学校は小論文の配点比率も高いです。
通常、都立高校の推薦入試は内申点が50%なのですが、西高校はそうではありません。
はっきりいえば、絶対評価と学校間格差のため、内申書に対する信頼感が少し弱いのかもしれません。
大学でも似たようなケースがあります。
たった1行の課題しか出さない設問もあります。
早稲田大学ではかつて「科学とは疑うことである」という書き出しで1000字書けという問題が出ました。
ぼくも時々、似たような課題を生徒に試みることがあります。
数日後、彼らが持参してくる解答を読むと、その能力の差が歴然としていることに驚かされます。
問題は短ければ短いほど、難しいのです。
今回のテーマについて、あなたも考えてみてください。
設問はたった一行です。
「窓」という設問
「窓」という言葉から考えたことを800字以内で文章にしなさい、というものです。
はっきりいって、これは論理性を最大限にチェックする問題ではありません。
むしろ詩的感受性などのありかを探るテーマに近いでしょう。
それでもこれが小論文の問題に出るということは、ここから論理の整合性を探れということに違いありません。
自分の持つ文学的なイメージだけで、文章を綴ったときにどの程度の評価を得ることができるのか。
大きな分岐点です。
最近はChatGPTが進化したこともあり、小論文は苦戦しているようにみえます。
簡単な文章なら数分ですぐに完成してしまうからです。
その内容もある程度勉強した生徒が書くようなものより、ずっと整っています。
極端なことをいえば、添削などをしてもらうよりも、ChatGPTに頼った方が確実な合格答案が書けるようになるのかもしれません。
志望理由書などにも同様のことがいえます。
自分が望む大学の様子などをいくつかのボキャブラリーにまぜて書いてもらえば、それだけで、一定のレベルの文章になるのです。
もう小論文など不必要なのでしょうか。
そうはならないのです。
そこが1番のポイントです。
ChatGPTは言ってみれば最大公約数に過ぎません。
いくつかの大切な要素は入っていますが、そこに「個」はありません。
あくまでも大きなテーマを切るための、判断基準が点在しているだけに過ぎないのです。
あなたなら、「窓」という題からどんな文章を書きますか。
これは実際、入試に出た設問です。
そのことを頭の隅においてください。
実際に検索すると
試みに「窓」から連想されるものは何かをChatGPTで検索してみます。
結果は次の通りでした。
目をあちこちに配りながら、解答を用意しようとしているのが、よくわかります。
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「窓」という存在は、私たちの日常生活において非常に重要な役割を果たしている。
物理的な機能だけでなく、精神的な側面からも多くの意味を持つ窓について考察してみたい。
まず、窓の物理的な役割について触れる。
窓は建物において外部と内部をつなぐ重要な構造物である。
自然光を取り入れ、風を通し、外の景色を楽しむことができる窓は、居住空間を快適にするために欠かせないものだ。
また、窓を通して見る外の風景は、私たちの気分や感情にも影響を与える。
例えば、晴れた日の青空や、秋の紅葉など、窓からの景色が私たちに喜びや安らぎをもたらすこともある。
次に、窓の象徴的な意味について考える。
窓は「見えるもの」と「見えないもの」を隔てる存在であり、私たちが内面的にどう向き合うかを示す鏡のような役割を果たしている。
心理学的に考えると、窓は心の状態を反映する象徴として捉えられる。
たとえば、「心の窓」を開くことで、新たな考えや感情に触れたり、他者とのコミュニケーションを促進したりすることができるのだ。
一方で、窓が閉じられている場合、それは防御や閉鎖を示すこともある。
このように、窓は私たちの心の状態を表す重要なメタファーとなり得るのである。
わずか1分
ChatGPTはわずか1分でこの文章をたたき出すのです。
怖ろしいと思いませんか。
ここで大切なことは、あなたがChatGPTに勝たなければならないことです。
そうでないと、合格できないところまで時代は来てしまっているのです。
この文章のポイントは何でしょうか。
当然、後半の内容ですね。
つまり心理学とメタファーの部分です。
心の問題です。
小論文の設問として選ばれたということは、窓の建築学的な問題を超えたものを要求されているのです。
もちろん、建築学関係の学科を受けるのなら、物理的な窓について持論を展開することは可能です。
しかし文系の場合は、その方向性でまとめるのは難しいでしょう。
新たな考えや感情に触れたり、他者とのコミュニケーションを促進したりすることができる心の窓というイメージは使えます。
他者に対して、防御や閉鎖を意味する暗喩的な要素も同時に考えられます。
どちらも使えますね。
あなたなら具体的にどのようにまとめますか。
ここからが実力の見せ場です。
採点者はそれを見ているのです。
つまりこれ以前の内容をふりまわしている限り、評価は低いです。
覚悟してください。
他者とのコミュニケーションのために、自らの窓をどう開け放つのかというのがポイントになるでしょう。
そのために何が必要なのか。
言葉、態度
当然、有効な言葉、態度が第1にリストアップされますね。
きちんと相手の伝えたいことを取り込み、それを正確に投げ返す。
そのためには心を最大限に開かなければなりません。
他者への窓が曇っていたのでは、正確な対応ができないのです。
視界をよくするために、自らを磨く必要があります。
経験、思考、反省、認識の繰り返しが見通しのいい明るい窓を確約するのではないでしょうか。
そのためには有意義な読書、対話も大切です。
自らの心が澄んでいなければ、風景はゆがんで見えるに違いありません。
自分がどのような学生生活を送りたいのか、という内容もあってしかるべきです。
学びたい学問への視点も欲しいです。
具体的に書ける内容があれば、ごく簡単にまとめる方法もあります。
ただし長くしてはいけません。
数行以内で書き切ることです。
初心者の中に、小論文は自分のことを書けばいいと勘違いしている人がかなりいます。
これだけは避けること。
つねに全体を論理で包み上げ、まとめ切ることが最大のポイントなのです。
厄介なことをいくつか書きました。
なんとかしてChatGPTのレベルを超えなくてはいけません。
そのための勉強を続けてください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。