徒然草と花月草紙
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
兼好法師の書いた『徒然草』という随筆は読めば読むほど味がありますね。
高校でもかなり学習します。
今までにどれくらい扱ったことでしょうか。
愉しい話だけでなく、無常観に満ちたしみじみとした味わいのある段も特筆ものです。
どんな時でも『徒然草』を教材にすれば間違いがないという安心感がありした。
実は試験も作りやすいのです。
語彙の面からも文法的にも、良質な問題ができました。
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これはあくまでも教師の立場からの余談です。
今回はその中で友人の選び方にまつわるものを紹介しましょう。
いつの世でも、友人との付き合いというのは、大切なものです。
一生の友を得るというのは、言うほど簡単なものではありません。
よい友人を得るということは、それだけで一生の財産です。
逆にいえば、親友を得るというのは非常に難しいのです。
兼好法師はどのような考えを持っていたのかについて考えることは意味があると思います。
同時に、ここでは『花月草紙』についても論じます。
著者の松平定信は江戸幕府の老中です。
8代将軍吉宗の孫として生まれ、寛政の改革に腕をふるいました。
日本史を学ぶと江戸の三大改革を必ず学びます。
この作品は江戸時代を代表する随筆の1つとされています。
幕閣を引退した後に、文学、芸術、政治、日常生活など多岐にわたるあらゆる分野にわたって、さまざまな角度からまとめたものです。
この著作を高校で扱ったという記憶はありません。
擬古文で書かれているために、読みやすいからでしょうか。
徒然草117段
友とするに悪き者、七つあり。
一つには、高く、やんごとなき人。
二つには、若き人。
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三つには、病なく、身強き人、四つには、酒を好む人。
五つには、たけく、勇める兵。
六つには、虚言する人。七つには、欲深き人。
よき友、三つあり。一つには、物くるゝ友。二つには医師。三つには、智恵ある友。
現代語訳
友達にするにふさわしくない者は、七種類あります。
1つ目は、身分が高く住む世界が違う人です。
2つ目は、若い青二才です。
3つ目は、病気をしたこともない丈夫な人です。
4つ目は、ただの酒飲みです。
5つ目は、血の気が多く喧嘩早い人。
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6つ目は、嘘つきで7つ目は欲張りの人です。
良い友達には、3種類あります。
1番は、なんといっても物をくれる友達です。
次は医者。最後が賢い友達でしょうか。
つきあいずらい人
「友とするにわろき者」というのは、あまり付き合いたくない人という意味です。
その1番目に「身分の高い偉い人」を選ぶセンスはさすがですね。
本当に偉い人は謙虚な人が多いと思いますが、中途半端な人は厄介です。
兼好法師は人間関係によほど苦労したのでしょうね。
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さらに若い人や病気をしたことがない人は、なかなか相手の立場を想像するのは難しいですからね。
付き合うとくたびれるということでしょうか。
4番目の酒飲みは、いろいろな醜態の様子が『徒然草』にも示されています
うそをつく人や欲の深い人は、やはり勘弁です。
反対に友達になりたい人のトップに、「物をくれる友」がくるのはどういうことでしょうか。
確かにものを「物質」と考えてしまうと、少し寂しい気持ちもします。
しかしこれをやさしい言葉と考えたらどうでしょうか。
随分と風景が違ってみえます。
さらに医者などもいれば、いざという時は助かりますね。
現代ならさらに弁護士、FPでしょうか。
花月草紙原文
「友にまじはるは、いかなることか心得べき。」と問ふに、友はその長所を友とすべし。
武技好む者には、それを友とし、歌よむ者には、それをともとするぞよき。
世の中に、同じこころの人いふものは、いとまれなることなるべし。
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ただわが好めるかたに引きいれんとするもうるさし。
この人、このところは長じぬれど、ここはいとみじかし。
そのみじかきところを引きのべんとするは、いとくるし。
知己の人ことばを求めなば、もとよりいふべし。
されど、しばしばすべきにあらず。
浅き契りの友なりとても、友といふうちならば、その人のうへの存亡にかかはることならば答へる。
ただその長所を友とすれば、まじはりがたき人もあらじ。と答へき。
現代語訳
友とつきあう時、どんなことを心がけたらよいのでしょうかと訊ねられたら、その答えは次のようなものになるのではないでしょうか。
友人のすぐれたところを友とするのがいいのです。
武芸を好む友人なら、武芸を仲立ちにしてつきあう。
歌を詠む友人となら、歌を媒介として友とするのがよいのです。
世の中に自分と同じ心の持ち主がいるということは、とても珍しいことです。
自分の好む方に友人を引き入れようとすることは、非常に無理があります。
この人はここはいいけれど、ここはよくないということがよくありますね。
だからといって、あまりよくないところを改めさせようとすることは難問に近いのです。
しかし自分をよく知っている友人が忠告を求めてきたなら、当然自分の考えを話してあげるべきです。
ただし、たびたびすることではありません。
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つきあいの浅い友人であっても、その人の生死に関するような大切なことならば、言ってあげるべきです。
その人のいいところを友とすれば、つきあいにくい人も少なくなるのではないでしょうか。
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人間関係ぐらい難しいものはありません。
いったん、ぎくしゃくし始めると、なかなか元に戻るということがないのです。
それだけに誰もが神経を使います。
どうやったら友人関係を長く続けられるのか。
本当に難問です。
この2つの随筆を読み比べて、その内容をよく吟味してみてください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。