【小論文・デジタルデバイド】情報格差のない社会を目指すためのカギは

学び

デジタルデバイド

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

つい先日、たまたまテレビを見ていたらこんなニュースがありました。

ある事件の容疑者宅に家宅捜査に入ったところ、スマホもパソコンも使った形跡がなかったというのです。

容疑者は30代の男性でした。

それを特別なことのように報道するので、なるほど今はそんな時代なんだなと感心しました。

携帯電話とパソコンを持っていないということは、特筆するに値するのでしょうか。

現代を象徴する報道です。

この事実をあなたはどう考えますか。

確かにスマホやパソコンを持っていない人というのは、きわめて少数には違いありません。

これが高齢者や障害者のような社会的弱者であれば、それほど不思議ではないかもしれません。

彼らは確かに情報弱者の範疇に入ります。

情報にアクセスできないということは、それだけでかなりのリスクなのです。

役に立つ情報を瞬時に引き寄せられる人と、そうでない人との差は、想像以上のものです。

だからこそ、ニュースの重みがあったのでしょう。

この容疑者は、1人暮らしが長く、近所との付き合いもあまりなかったようです。

そのうえ、あらゆる情報を自ら遮断していました。

そこに何か精神的な原因があったのかという憶測も可能ですね。

つまり現代は、誰もが情報にアクセス可能な時代なのです。

その中で、パソコンやインターネットなどの情報技術を使いこなせる人と、そうでない人との格差は象徴的です。

自分から遮断してしまう人はもちろんのことですが、情報機器に不慣れな高齢者にとっても、今はかなり暮らしにくい社会なのではないでしょうか。

障害者の立場

この問題は同時にインフラの発達していない地域に住んでいる人にとっても、深刻です。

さらに障害者にとっては、貧富の差に繋がる直接の原因でもあるのです。

試みに就職活動をする時の条件を思い浮かべてみてください。

年齢などとともに、パソコンの基礎的な技術の有無を必ず訊ねられます。

それほどに難しい要求をされるワケではありません。

エクセルやワードなどの基本的な操作という条件が、必ず入っています。

これらの情報機器を操作できないということは、それだけで就労の機会を著しく損なってしまいます。

使えて当たり前の時代なのです。

技術の差が社会的、経済的な格差に直ちに繋がります。

こうしたスキルがないことで、高齢者、障害者が社会からはじかれる要因となるのは、誰の眼にも明らかでしょう。

そんなことは当然だと考える人が多くいることは、承知しています。

しかし扱うチャンスがなく、周辺にデジタルの機器がなければ、全く触れることもなかったという事実は受けとめなければなりません。

必要なものは、ネットで注文すればいいと簡単に考えている人に、ぜひ知っておいてもらいたいことがあります。

世の中には、電話だけしか使いこなせないという人が、かなりいるということも事実なのです。

コミュニケーションのツールとしては電話が全てだ、という人の存在を忘れてはなりません。

メールなどは夢のまた夢なのです。

それを究極の形で進化させたのが、ネット通販でしょう。

先日、ある通販会社の社長の話を聞く機会がありました。

それによれば、いくらネットで宣伝をしても、やはりテレビで電話番号を伝えることが、最大の訴求力を持つというのです。

かろうじて、ホームページまで辿り着いたとしても、そこにある電話番号が最後は命綱だそうです。

500人くらいのオペレーターが常時スタンバイして、応対をすることで、売り上げを伸ばしているとか。

コスパからいったら、ネットの自動注文の方が有利なことは明らかです。

しかしそれができない高齢者層をターゲットにしていることから、現在のシステムに辿り着いたということでした。

早急な対策を

通販の会社はそこに商機を見い出だしたという意味で、厳然とした存在価値を持っています。

しかし今のままで、電話だけが頼りだという実情をそのままに放置しておくことはできません。

社会的なインフラとして、あらゆる層に向けてデジタル機器の啓蒙活動を続けていかなければなりません。

特にその扱いが社会的な階級差を生むということになれば、課題は深刻です。

高齢者や障害者だけが捨て置かれる、という状況を作るべきではありません。

自分にはもう必要がないのだから、余計なことをしてくれなくてもいいという人も当然いるでしょう。

しかしそれを行政が漫然と放置することは許されません。

あらゆる機会に周知徹底させる努力をしなくてはならないのです。

その際、基本になるのはなんでしょうか。

これはどのようなテーマでも同じだと考えられます。

医療、食育などの基本を最初に手がけるべきなのは、学校や行政などの公共システムなのです。

ここを第1におさえておいてください。

無料の情報教育を最初に行うことが大切です。

さらにインフラの整備も必要です。

あらゆる場所にWiFiの環境を整えるということが出来なければ、機器を手に入れても意味を持ちません。

公共施設などを筆頭に、無料で安全なネット環境を整えることができなければならないのです。

使える人と使えない人の差があっては、これからの社会が構成できなくなります。

喫緊なのは無料で高速にアクセスできることです。

安全性を確保することは言うまでもありません。

さらにいえば、個人の利用料金引き下げもさらに必要になるでしょう。

ユビキタス社会

いつでも情報にアクセスできる社会のことを「ユビキタス社会」と呼びます。

デジタルデバイドのテーマが出たら、必ずキーワードの1つにこの言葉を入れておいてください。

情報機器を使うことに、ためらいを持つ人が存在するのは仕方がありません。

それを否定してはいけないのです。

しかし可能ならば、欲すれば、誰にでも機会が提供されるという社会でなければ、本当の意味での自由は存在しません。

当然、ネット上に流れる情報には真実でないものも含まれます。

しかしそうしたものを判別する能力を身につけつつ、上手に情報化社会を乗り越えていくことが大切でしょう。

それなしに、これからの時代が先に進むとは思えません。

使えるようになれば、確かに便利な機器ではあります。

と同時に、正確な情報を確実に取り込む意識を、育て上げることが大切です。

デジタルデバイドのキモは、格差をそのまま是認することではありません。

少しでも技術の恩恵を受けつつ、ユビキタス社会を実現していくことです。

それが次の時代を生きる人々にとって、大切な生き方の支えになるからです。

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小論文にこのテーマが出題されたら、基本になる考えをしっかりと把握してから、臨んでください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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