【小論文・食品ロス】親切な冷蔵庫とフードドライブの問題点と可能性

学び

食品ロス

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は2022年、都立調布南高校の推薦入試に出題された課題文を読みます。

テーマはフードロスでした。

日本では食料自給率が低下しています。

しかし、その一方で大量の食糧を放棄しているのです。

年間2531万トンの食糧廃棄物と言われて想像がつきますか。

このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」が612万トンあると報告されています。

以下は「食品ロス」対策として、実施されている取り組みの例です。

最初に設問からみてみましょう。

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設問 

資料にある「フードドライブ」または「親切な冷蔵庫」のいずれかをあなたが運営し、取り組みを広げていくうえで課題となることは何かを考え、課題と課題の解決策を400字以内で述べなさい。

これが全てです。

ポイントは自分がこの2つの活動を運営した場合、課題は何かという点です。

さらに課題の解決策を書かない限り、大幅な減点をされます。

それだけはとしっかりと胸に刻んでおいてください。

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例1「フードドライブ」

家庭で余った食品を持ち寄り、福祉活動に活用する「フードドライブ」が県内で広がっている。

食品を集める常設のコーナーは、4月にスーパーの3店舗に設置されて以来、県内16カ所に拡大している。

集まった食品は、子ども食堂や福祉施設などを通じて、食料支援が必要な人のために活用される。

フードドライブで募っているのは「①未開封②賞味期限が1カ月以上残っている③常温保存できる」といった条件をクリアした、米や缶詰、瓶詰、乾物や菓子類、レトルト食品、調味料など。

県とともにフードドライブ事業を進めるNPO法人によると、スーパー6店舗で4~9月、約2トンの食品が集まった。

フードドライブの目的は、家庭内での食品ロスの削減。

昨年度の食品ロスは県内で推計5万トンで、このうち約3万トンが家庭から出たとみられる。

例2「親切な冷蔵庫」

惣菜店を営むHさんは、ネットニュースで、生活困窮者らに無料で食品を提供する「公共冷蔵庫」の取り組みが、海外に広がっていることを知った。

「惣菜店で余った食料を、困った人へ無料で提供できないか。フードロスの削減にもつながる」と考え、スーパーから冷蔵庫を1台譲りうけた。

「親切な冷蔵庫」と名付け、惣菜店で売れ残った食品を、ショッピング街の入り口に置いた冷蔵庫から、誰でも無料で持ち帰ることができる取り組みを始めた。

午後2時に惣菜店が閉まった後、1パックあたり500グラムほどの売れ残った惣菜をパックに詰めて、午後3時ごろに冷蔵庫に入れる。平均して1日あたり10パック前後に入れているが、夕方にはすべてなくなるという。

フードロスの定義

フードロスは喫緊の大きな問題です。

本来食べられる食品なのに捨てられてしまうことによる損失を指します。

世界の食料廃棄は年間約13億トンと言われています。

消費のために生産された食料のおよそ3分の1の食料が破棄されているといわれているのです。

日本のフードロスは、国民1人当たりに換算すると年間で48kgになります。

612万トンのうち、事業系食品ロスと家庭系食品ロスが半々なのです。

最近、学校給食の現場では食べ残しや飲み残しが多く発生しているというニュースもよく聞きます。

コロナ禍で休校になり、牛乳の消費量も一気に減りました。

全て廃棄しているのが現状です。

フードロスは、食料資源が無駄になるだけではありません。

ゴミの処理にも多くのコストがかかります。

温室効果ガスの排出や、埋め立てなどによる環境への負荷など、さまざまな問題の原因にもなっています。

食料を大量に廃棄している一方で、世界では約8億の人が栄養不足に陥っているといるという現実もあります。

SDGsの目標にも掲げられていますね。

12番目の「つくる責任つかう責任」を読んでみてください。

そこにフードロスについて具体的に目標が示されているのです。

運営する立場から考える

あなたが実際に「フードドライブ」か「親切な冷蔵庫」のどちらかを運営するとしましょう。

その取り組みを広げていくとしたら、最初にぶつかる問題はなんでしょうか。

それを真剣に想像しましょう。

その課題と解決策を書かなければ、この小論文の意味がありません。

最初に「フードドライブ」の場合から考えます。

最大の問題は日々実践しなければならないということです。

となると、誰がそれをやるのかという大きな問題に直面します。

ボランティアに任せきることはできません。

コストが発生します。

基本的に必要なものは人件費、保管費(スペース代)、光熱費、通信費などです。

簡単に考えてはいけません。

寄付された食品をきちんと管理し、それを再分配できるように保存、保管しなければならないのです。

当然組織的に行わなければできないことです。

NPO法人に類するものを設立する必要があります。

全くの無報酬では長く続けることができません。

約款などをきちんと整備し、人を募らなくてはならないのです。

そこには人件費が発生します。

管理、運営を含めて長期的な視点がなければ活動は育ちません。

広報活動を通じて、企業への協賛を促す必要もあります。

想像以上に裾野の広い活動にならざるを得ないのです。

親切な冷蔵庫の場合

厄介なのは、誰が管理するのかということです。

特に、常温以外での保管が求められる食品は電気代がバカになりません。

どの程度の冷蔵庫を用意するのかという具体的な問題もあります。

あまり考えたくないことですが、いたずらが発生するかもしれません。

口に入れるものなので細菌感染などのリスクをつねに考えておかなければいけないのです。

冷蔵庫の中を常にチェックするための要因も必要になるでしょう。

この記事では惣菜店の店主が1人で行っているようです。

しかし活動の輪を広げていけば、当然個人では扱いきれません。

事故を避けるために監視カメラの設置なども考える必要もあります。

未開封で衛生的に問題がないといっても、それを保証し続けなくては意味がありません。

混入した薬物などが検出されることの可能性も否定はできないでしょう。

意図的に行う人がいないとは言い切れないからです。

神経を使う作業が続くことは十分に予想されます。

この種の取り組みは長く継続しないと意味がありません。

その意味で組織として、きちんとした方法を作り上げなければなりません。

担当者が責任をもって管理する態勢を整えることが大切です。

そのための組織を立ち上げる必要があります。

企業などとのコラボを行うにしても、個人で扱うには限界があります。

運動の原型がある程度できあがれば、自ずと動き始めることでしょう。

問題は継続です。

理念をきちんとかかげて、あらゆる協力を排除しないという姿勢が大切なのです。

以上の内容を400字で書けというのはかなり難しいですね。

あなたに1番ピッタリくる部分をまとめてください。

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それで十分な内容になりうると確信します。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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