根問い噺の代表
みなさん、こんにちは。
ブロガーでアマチュア落語家のすい喬です。
今回は「やかん」のお話をご披露させてください。
ああ、あのとんでもない噺だとすぐにわかる方は、かなりのご通家です。
この落語は誰もが1度は聞いたことがあると思います。
先代の文治師匠がよくやってました。
最近では笑遊師匠が実に楽しそうにおやりになります。
ストーリーがあるようなないような噺です。
つまりどうにでもアレンジできます。
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時間の伸び縮みが自在なので、寄席には格好のネタということになります。
こういうジャンルのものを全て「根問いもの」と呼んでいます。
八っつあんや熊さんが、横丁のご隠居さんか先生のところへ顔を出して、これはいったいどういう意味ですかと訊ねるのです。
すると知ったかぶりをして、次々とトンチンカンな迷解答をするというパターンです。
「浮世根問」「魚根問」などいろいろなのがあります。
もちろん「やかん」も代表的な根問い噺です。
どこまでいってもバカバカしいだけなのですが、上手な人がやると、それだけで落語になってしまいます。
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寄席の世界では、あの人はやかんだという言い方をします。
これは知ったかぶりをする人だということです。
家に飛び込んでくる者たちを「愚者、愚者」とバカにしますが、実は自分が1番の「愚者」なのです。
しかし愛嬌があって少しも憎めません。
今回はそんな話をちょこっとだけさせてください。
あらすじ
やかんはなぜやかんというのかというのが今回の噺です。
皆さんはなぜこれにはこんな名前がついたのかという疑問を持ったことがありますよね。
子供は次から次へと、これはな~に、ど~してを連発します。
いい加減に返事をするわけにもいかず、往生することがよくあるものです。
その話を少し伸ばしたのが「やかん」です。
横丁の先生のところへ飛び込んできた熊さん。
いろいろとなんでも知ってるから、教えて欲しいというわけです。
最初は魚の名前のワケを知りたがります。
「鯨はどうしてクジラになったんですか」
「鯨は同じ時間に潮を吹く、いつも9時だ」
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「イワシはどうして」
「犬は電信柱にシーをかけるが、海には電信柱がない。そこで岩にシーをした。いわしーだな」
「マグロは」
「群れをなして泳ぐと、海が真っ黒に見えるな、あっマックロだというワケでマグロになったな」
「切り身は赤いですよ」
「マグロが切り身で泳いでくるか」
「うなぎを焼いたのは蒲焼きといいますね」
「アレを焼いて食べたら、バカにうまかった。それでバカ焼と言った」
「なぜカバ焼きというか聞いているんですけど。バカとカバじゃひっくり返ってるじゃないですか」
「ひっくり返さなければ焦げるだろ」
「この茶碗は」
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「チャワンと置いてあるから茶碗だ」
「つまんないこと聞いちゃったな。土瓶は」
「土で出来ているから土瓶だ」
「鉄瓶は」
「鉄で出来ているから鉄瓶だな」
「ヤカンは。これは矢では出来ていませんよ」
「これは昔、水沸かしと言ったな」
「湯沸かしでしょ」
「湯を沸かすとなくなってしまう。水から湧かして湯にする、だから水沸かしだ」
昔は水沸かし
「それじゃ、なんで水沸かしがやかんになったんですか」
「それはな。昔陣中では水沸かしと呼んでいたんだ。頃は永禄4年、川中島の合戦で、
武田信玄と上杉謙信が戦った。両軍川を挟んで対峙したり。ある風の強い日に突然の夜
襲があったな」
「油断のあった上杉勢、陣中大混乱のうちに戦の準備にかかった。その時、若大将鎧に
身を包んだが兜が見付からない。誰かがかぶっていったのであろう、見ると大きな水沸
かしがあったので、湯をガバッと捨てて、頭に被り、馬に跨がり出陣した」
「その働き素晴らしく、敵の大将それを見て、『なんと水沸かしの化け物現れたり』と呼ばわった」
「それを見た那須与一宗高が弓をキリリと引き絞り…」
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「先生、あんまりいい加減なことを言わないでください。那須与一って、川中島に登場するんですか。時代が違いますよ」
「名人になると何処に出るか分からない。その矢が飛んでいって『カーン』と水沸かしに当たった。矢が飛んでいってはカンと当たり、ヤカン、ヤカンとなった」
「ツルは邪魔になったでしょう」
「ツルはアゴに掛けて忍びの緒にしたな」
「湯が出る口は」
「合戦で『名乗り』をあげただろ。聞こえないと困るから、穴があったほうが好都合だ」
「かぶったって、ヤカンの口は下を向いちゃうよ」
「その時は、雨風が強かったから、雨水が耳に入るのを防げた」
「両耳でなく、片方というのはおかしいんじゃないですか」
「陣中で寝るときマクラを使う方は平らだ。若大将がやかんを外すと、熱気で蒸れて頭髪がみんな抜けた、それ以来禿頭のことをヤカン頭と言うようになったな」
これが下げみたいなもんですかね。
いかがでしょうか。
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長くやる時は、上杉謙信と武田信玄の名前を正確に全部言ったりもします。
まさに講談です。
扇子を自分の膝にあてながら、パンパンとテンポよく叩くところも見せ場ですね。
ばかばかしいですが、これが落語だという典型的な例です。
その場で笑って、それでおしまい。
後になんにも残りません。
だからいいんです。
ついにやかんを買った
ところで、ここからは蛇足です。
つい最近、我が家ではやかんを買いました。
長く使ったので、どうしても汚れが落ちなくなりましたのでね。
最初、近所のDIYショップでみたら、安いことは安いのです。
でもなんとなくペラペラしてて材質が薄い。
形もしっくりきません。
せっかくだからいいのを買おうということになりました。
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10年くらいは使えそうなのを探すことにしました。
いいやかんはやっぱり高いです。
1万円を超えるのも珍しくありません。
デパートまでいくのは大変だし、コロナで思うように外出もできませんでした。
そうなると、やっぱりネットですね。
ずっと眺めてました。
そうしたらこのやかんのフォルムに目がいったのです。
クックベッセル FIKA フィーカ ステンレスティーケトルというのです。
値段は6000円ちょっとでした。
もっと高い値段で出ているところもありましたね。
なにより形がいいのです。
なんともやかんらしい雄々しい恰好をしています。
やかんに6000円以上を出すのは初めてでした。
日本製だというので、いろいろと口コミも読みました。
するとなかなかに評価が高いのです。
コーヒーに注ぐときのお湯の出方が見事だなんて書いてあります。
これは本当にその通りでした。
実にいい按配です。
材質は本体がステンレスでハンドルが熱硬化性樹脂でできていました。
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持った時の感触もいいですね。
ぼくは光沢のを買いましたが、艶消しもあります。
眺めていても飽きません。
お湯を沸かしている時も、結構うれしいです。
こういう感覚は初めてかな。
最後にリンクを貼っておきます。
ちょっと形を見つめてみてください。
やかんの世界も深いものですね。
余計な話を書きました。
お許しください。
最後までおつきあいいただきありがとうございました。