【小論文の力技】記憶力に頼らないリテラシー重視の学習が基礎体力に

学び

国際的学力試験

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。

今回はこれからどういう勉強法が1番小論文にふさわしいのかを考えましょう。

今までは圧倒的に暗記力の強い人が生き残れました。

学校でも社会でも、全く同じです。

もちろん、今もいらないというワケではありません。

必要です。

しかしインターネットの進化、パソコンのデバイス機能向上にともない、記憶する力が学力と直結しなくなりました。

実社会においても、事情は同じです。

人間の持つ最大の能力は、創ることに集約しつつあります。

新しい論点を見い出すことです。

従来ならば記憶力が最も重要な能力でした。

しかし現在は、それも1つの実力のうちだというレベルになっています。

それよりも他者の考えをきちんと把握し、自分の意見を述べることが大切です。

そしてさらに高い次元の内容を創り出していく力こそが求められているのではないでしょうか。

別の言葉でいえばリテラシーです。

3年に1度、OECD(経済協力開発機構)が3つのリテラシーについて国際的な学力試験を行っています。

直近のものは2018年に行われました。

その中で日本人の読解リテラシーの低さが際立ったのです。

その3年前に行われた時の順位が8位。

今回が15位です。

他の数学的リテラシー、科学的リテラシーに比べて、大変な下降ぶりでした。

学習到達度

どのようにして調べたのでしょうか。

OECDの行った学習到達度調査というのがそれにあたります。

通称はPISA(Programme for International Student Assesment)と呼ばれています。

Tumisu / Pixabay

ちなみに3つのリテラシーとはどういうもののことを言うのでしょうか。

まとめておきます。

読解的リテラシー

自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。

数学的リテラシー

数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建設的な関心を持った思慮深い市民として生活において確実な数学的根拠に基づき判断を行い、数学に携わる能力。

科学的リテラシー

自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を利用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力。

以上の3つです。

ここでは読解的リテラシーにスポットをあてましょう。

具体的にどんな問題が出るのか。

この問題をみると、今世界がどのような能力を要求しているのかがよくわかります

受験秀才とは全く別種のものです。

2018年に行われた試験の例です

少しだけ覗いてみましょう。

歴史研究者である女性がチリの3200キロメートル西にある太平洋のラパヌイ島(イースター島)の歴史を調査しました。

モアイ像で大変に有名な島です。

その時の様子をまとめたブログの記事が問題文です。

大きな石像を植物で作った縄や木のローラーで、実験者たちははるかに離れた石切り場から運びました。

実際、海際に像を立てることに成功したのです。

しかしその時彼女の頭の中に、別の疑問が残りました。

それはどんな疑問だったのでしょうというのが最初の問題です

さらに別の筆者が書いた『文明崩壊』という本の記事を読んで、ナンヨウネズミと植物の関係について論じるのが2問目です。

ナンヨウネズミの存在に問題があったとすればそれは何かというのです。

新しい学力観

どうでしょうか。

ある程度の類推は可能ですか。

現在ではイースター島から木がなくなってしまった理由についてはかなり研究が進んでいます。

そしてそのことについてまとめた評論が中学校の教科書にも載っています。

しかしこの内容はあくまでもそこに定住した人間たちの乱獲と部族争いによるものであったという最初の研究者の仮説どまりです。

TheDigitalArtist / Pixabay

その上にたって後に提出されたのが別の研究者によるナンヨウネズミの説なのです。

他の島からやってくるために使ったカヌーに棲息していたらしいという新説です。

つまり大きな論点が2つあるワケです。

それをたとえ知らないとしても、そこまで自分で論点を組み立てていかなければいけません。

それを短時間でやれるかどうか。

これが読解的リテラシーの問題の一例です。

いかかですか。

難しいでしょうか。

今までのように答えを覚えておくといった問題や、型で答えるタイプのものとは全く違います。

そこで与えられた条件から、内容を類推して割り出していくのです。

コンピューテーショナル・シンキング

2021年の試験ではいよいよコンピュータ・サイエンスに関わる問題が読解的リテラシーの中に入ると言われています。

今はまだ全く予想がつきません。

これが小論文の現在なのです。

ただ解法を覚えてそれにあてはめるなどというやり方ではとても通用しません。

その場で与えられた材料を自分の力で工夫して解答する。

ある意味、数学的ファクターを積み重ねるような力が要求されています。

文科系だから数学がいらないなどと言っている場合ではなくなりました。

Crissa / Pixabay

つねにものごとを批判的に読み取り、何度も議論を重ね結論に導く。

この作業を続けていかない限り、合格はおぼつきません。

OECDはヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め35ヶ国の先進国が加盟する国際機関です。

国際マクロ経済動向、貿易、開発援助といった分野がメインなのです。

最近では持続可能な開発、ガバナンスといった新たな分野について分析、検討も行っています。

つまり経済力を持続させるために何が必要かを最大限に考えていこうという組織なのです。

その機関がここまで教育問題に深く関与すること自体、ものすごいことです。

これからの時代を生きる若者たちがどのような能力を持てばいいのかということを、予見しているともいえるのです。

世界は確実に新しい時代に入りました。

今後間違いなく、この方向で進んでいくでしょう。

実は大学入試もこれを受けて、記述式を導入しようとしました。

あまりにも準備が拙速だったため、実施が見送られましたが、流れはまさにこの方向です。

新しい小論文も同じ向きになりつつあります。

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記憶力に頼らないリテラシーの獲得をどのようにしたらいいのか。

そのための学習法とは何か。

今後の動向に着目していかなければなりません。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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