【猟師仏を射ること・宇治拾遺物語】世間知らずな聖と判断力のある猟師は

説話集の中から題材を取り上げてみました。世間知らずな聖と世の中を冷静に見ている猟師の話です。2人の対比がわかりやすいので、昔話として、長い間親しまれてきたのでしょう。ここからどのような教訓が得られるでしょうか。考えてみてください。

【フェミニスト批評の試み】男性文化の視点から離れた別の切り口を模索する

批評は長い間、男性の文化を起点として行われてきました。それを女性の視点から試みるという流れが存在しつつあります。「フェミニスト批評」がそれです。どのようにして、女性の切り口から批評を行えばいいのかという指標になります。お読みください。

【陰翳礼讃・谷崎潤一郎】風雅を愛する日本人の美意識を突き詰めた随筆

日本人の美意識を究極まで煮詰めたエッセイが、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』です。どれほど日本人が自然の明かりを大切にしてきたのかということを、論じています。ここに示された漆器に対する愛情なども、彼の経験に基づいてまとめられています。

【鞄・安部公房】青年が抱えて苦しんだ鞄の持つ意味は【寓意のナゾ】

安部公房の小説はどれも寓意に満ちています。その意味を探りながら読まないと、何が書いてあるのかよくわかりません。この『鞄』という短編も実に難解です。どういう意味があるのか、あなたも考えてみてください。

【山東京伝・内田百閒】不思議な味わいのある夢物語は師・漱石の筆致に似て

作家、内田百閒の世界は実にユニークです。今回は彼の夢物語『山東京伝』を読みます。この江戸時代の作家に弟子入りした男が見たものはなんであったのか。それを追いかけていくだけで、不思議な世界がそこにあらわれます。

【無常ということ・小林秀雄】常なるものを見失った現代人に必要な心構えは

文芸評論家、小林秀雄の評論『無常ということ』を読みます。名文の誉れ高い内容です。最初に古典の文章を取り出し、そこから人生や歴史をどう考えればいいのかというテーマを展開していきます。内容に飛躍があり難解です。

【完璧・十八史略】故事には歴史の重みと人の魂を鼓舞する知恵がある

完璧という故事はどのようにして生まれたのか。中国の歴史を読み解かなくてはなりません。『十八史略』の中にありました。「和氏の璧」と呼ばれる宝を欲しがった秦とそれを取られたくなかった趙との心理作戦の様子が元だったのです。

【那須野・奥の細道】眩しい光の中に突如あらわれた撫子のような少女は

『奥の細道』の中の「那須野」の段を読みましょう。ここで特筆すべきなのは、突然登場するひとりの女の子です。名前をかさねと言います。そこから重ねるという文字を連想し、さらに撫子の花を思い浮かべました。句と共に鑑賞してみてください。

【朋党論・欧陽修】君子と小人の党派を見分けられる君主が天下を治める

欧陽修という文人が書いた『朋党論』 について学びましょう。 君子と 小人の 党派をどのようにして 見分けるのかということです。優れた人々が率いる党派を見定められなければ、皇帝は天下を治めることができません。しかしその難しさはどれほどか。

【月やあらぬ・伊勢物語】梅の盛りに恋人のいない屋敷を訪ねた男の感傷

『伊勢物語』は在原業平が主人公だという歌物語です。美しい表現に彩られた作品は、能などにもなっています。ここでは藤原高子との恋に破れた主人公が、かつての逢瀬の場所を訪れ、歌を詠むという設定になっています。

【貧窮問答歌・山上憶良】万葉の歌人は農民の貧しい暮らしに声を荒げた

山上憶良という万葉歌人は不思議な立ち位置にいますね。他の歌人とは明らかにみているものが違います。この『貧窮問答歌』は憶良でなければ、絶対に書かなかった作品だと思われます。苦しい農民の暮らしを赤裸々に綴っているのです。

【桜が創った日本】視点を反転させてみたら桜が人間を操る構図が明らかに

日本の風土に桜の花は見事にマッチしていますね。しかしその品種の80%がソメイヨシノだというのも驚きです。第2次世界大戦の後、急激に増えました。接ぎ木や挿し木でないと、植えられないという厄介な品種なのです。なぜこんなにふえたのでしょうか。

【韓非子・猿の彫り物】バラの棘に鑿の刃は立たず【法こそが国の基軸】

『韓非子』を扱います。法家の代表的な本です。ここでは1つのユニークな例え話を持ち出して、いかに国家を運営することが困難であるのかということを示しています。ポイントは猿の置物です。こんな話が中国にはいくつもあるのです。

【人間の尊厳・石原吉郎】シベリア抑留から生還するまでの日々の記録【共生】

詩人の石原吉郎を御存知ですか。派手な人ではありません。しかし人間の存在をギリギリまで追いつめた文学者です。第2次世界大戦の後、シベリアに抑留され8年間を過ごしました。その間に人間の本性を見てしまったのです。

【神様・川上弘美】寓話9編が懐かしさに彩られた非日常をあぶりだす

川上弘美の短編集『神様』はユニークな本です。今から15年も前に出版されたものですが、ちっとも古びていません。むしろ今という時代に必要な寓話かもしれないです。高校の教科書にも載っています。1度手にとってみてください。

【扇の的・平家物語】屋島の戦いで源氏の武将が射たものは【那須与一】

屋島の戦いで那須与一が射たものは扇だけではありませんでした。その場で踊った敵の兵士をも射殺したのです。なぜそのような命令を義経はしたのか。その背景を探っていくと、源氏の持つ怨念がよく見えてきます。