【和泉式部日記】恋多き女性の心の襞を細かく描き切った中世文学の粋

中世日記文学の粋を勉強しましょう。和泉式部は歌人として活躍しましたが、同時に彼女の書いた日記には、女性の生き方が示されています。2人の親王に愛されたにもかかわらず、2人ともに早く死なれてしまいました。それでも自分の愛の世界を描こうとしたのです。

【蜻蛉日記・嘆きつつ】夫・兼家との苦悩に満ちた結婚生活を赤裸々に

『蜻蛉日記』の筆者、藤原道綱母は実に複雑な内面をもっています。それが文章に如実にあらわれるところが、この作品の味わいですね。日記文学の中でも特異な位置をしめています。『源氏物語』などにも大きな影響を与えました。

【考える身体・三浦雅士】精神と肉体の二元論から想像力が跳び立つ日

人間は長い間、肉体と精神という2つの命題に分けて、哲学を論じてきました。しかしともすると、精神の領域を重く見る傾向が強かったのです。しかし今や肉体の復権が叫ばれ、人々はスポーツや舞踊の持つ根本的な意味を考え始めています。

女院詮子の弟道長に対する愛情が権力への道を加速させた【帝の宣旨】

『大鏡』にはスリリングなシーンがたくさん出てきます。今回扱う姉の女院の活躍はなかなかのものですね。自分の弟が政治権力を握るために、粉骨砕身の努力をして、天皇に迫ります。どうしても断れないところまで、追い詰めていく女院の心理状態も興味深いです。

【花は盛りに・徒然草】兼好法師の美意識は人の世の真実に重なる【反語】

『徒然草』は不思議な随筆です。普段、何気なく見過ごしていることにあらためて気づかされることが多いのです。何が本当に美しいのかということなど、考えてもいない時、ふっと兼好法師の言葉が浮かんできます。そこに大きな発見があるのです。

【競べ弓・大鏡】藤原道長一族の隆盛を赤裸々に予感させる力強い章段

歴史物語『大鏡』は藤原道長を中心とした人物の生きざまをみごとに描き出しています。その中でも彼の豪胆ぶりを描いたこの段落はみごとです。競べ弓を通じて、道長一族が権力を掌握するまでの予感に満ちています。その場の雰囲気をあじわってください。

【梓弓・伊勢物語】現代とは全く価値観の異なる体験を疑似的に味わう

『伊勢物語』にはいくつもの歌が出てきます。それがストーリーの進行を支えているのです。「梓弓」と3年の間、家を空けていた男が戻ってくる話です。しかし女にやさしく話しかけてきた別の男とどちらを選んだのか。女心をうまく捉えた名品です。

【徒然草二題】冷徹な観察眼で予断なく真実を見抜いた人【兼好法師】

徒然草の特徴は、兼好法師の目の確かさにあります。非常に冷徹で、物事の心理を見抜いているところです。登場人物は大変に人間臭く、弱いのです。だからこそ、兼好は人を愛していたともいえるでしょう。今回は2つの話をご紹介します。

【若宮誕生・紫式部日記】人に知られざる憂愁が作家魂に火をつけた

『紫式部日記』は『源氏物語』を書いた作家の心をありのままに書いた日記です。他人が本来覗き見るものではありません。それだけに、日々の心の中がありのままに示されています。出仕してしばらくしてからの若宮誕生の時の様子を読んでみてください。

【大和物語・芦刈伝説】貧しい我が身を恥じて和歌を残した夫に妻は

『大和物語』は日本を代表する歌物語です。必ず1つの話の中に和歌が出てくるのです。今回の話は有名な芦刈伝説です。暮らしがうまくいかなくなった夫婦が、別れて再び出会った時、どのような歌を詠んだのか。そこに男女の愛情が滲んでいます。

【丹波に出雲といふ所あり】早合点は誰にでもあるもの【徒然草】

『徒然草』を読んでいると、はっとさせられる瞬間があります。この話などもそうですね。人間は自分の都合で勝手にものを解釈してしまうものです。そんな馬鹿なことはないという人は、この話の奥底にある、兼好法師の透徹した目を意識して下さい。

【香炉峰の雪・枕草子】学問があり機転のきく女房と中宮定子の日常

枕草子はいつ読んでも新しい発見のある本です。さすがに長いあいだ読み継がれてきただけのことはありますね。その中でも香炉峰の雪の段はことに有名です。高校では必ず習います。背後に漢詩の知識が必要です。理解できると、なおいっそう深みが増します。

【二月つごもり頃に・枕草子】白楽天の詩を上の句に据えた清少納言

枕草子の中にある「二月つごもり頃に」は味わいのある文章です。清少納言が宮中に出仕すると、彼女の品定めがさっそく始まりました。どの程度の能力があるのかをチェックしたがったのです。最初に試されたのは、和歌の腕前でした。彼女はどうしたのでしょうか。

【大和物語・安積山】万葉の時代に詠まれた和歌を題材にした女心の話

歌物語の代表といえば、『伊勢物語』があります。しかしそれと同じくらい味わいの深いものに『大和物語』があるのです。高校ではあまり習う機会がありません。しかし女性の心を描いた話と歌とのコラボには、独特の味わいがあります。

【悩みのるつぼ】みんな悩んで大きくなった【車谷長吉の人生相談】

朝日新聞の日曜版に掲載されている「悩みのるつぼ」はなかなかに豊かな内容に満ちています。昨日の相談もかなり解決は難しいものでした。7年前に亡くなった車谷長吉さんの回答はユニークでしたね。それだけで1冊の本になっているくらいです。

【礼記・四書五経】虎よりも怖いものは何かといえば【儒教の教書】

四書五経は儒教の経書としてよく知られています。53万字という大変な量の本です。その中で今回は『礼記』を取り上げます。代表的な言葉の中に「苛政は虎よりも猛なり」という表現があります。どういう意味なのでしょうか。少し調べてみました。