【本が売れない時代】紙媒体の消え去る日は近いのか【ネットの威力】

ノート

本が売れない時代

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今日の朝日新聞朝刊(2023/11/1)に次のような記事がありました。

インタビューに応じたのは幻冬舎社長の見城徹氏です。

創業以来30年間、ベストセラーを出し続けてきた伝説の出版人です。

五木寛之『大河の一滴』、石原慎太郎『弟』などを手がけました。

その彼がこれだけ本が売れなくなったことに対する驚きを、赤裸々に吐露している姿が衝撃的だったのです。

紙の本が売れない時代に、出版社はどうやって生き残ればいいのか。

本当に誰も本を読まなくなったのか。

その周辺の事情を少し探ってみたいと思います。

記事の一部を少しだけ再録します。

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幻冬舎を創業して30年になりますが、今の出版の状況は最悪だと思います。

4年前にコロナ禍が始まった頃から、人が書店に行かなくなった。

あくまでも僕の体感ですが、ベストセラー本の売れ行きがこの4年で4分の1ぐらいに落ちた気がするんですよ。

去年の年間ベストセラー第1位は、うちが出した和田秀樹さんの『80歳の壁』で、累計60万部です。

この30年間、いろいろなベストセラーを出してきた僕の感覚から言えば、200万部売れてもおかしくない本なんですが、それが60万部しかいかない現実があるんです。

映画やテレビドラマになっても、原作の本を読むことに結びつかない。

映画化やドラマ化されれば、これくらいは売れるという経験則が全く通用しなくなってしまった

それだけ出版を取り巻く環境が激変したという実感があります。

本にしろ雑誌にしろ、紙の媒体だけでは、もう出版社の経営が成り立たない。

生き残るには、総合コンテンツ企業になっていくしかないんです。

この4年でそれがはっきり見えました。

ネット書店や電子書籍が伸びているといっても、紙の本の落ち込みをカバーするには程遠い。

特に小説やエッセイが主体の文庫本は壊滅的です。

これまで、文芸作品が人を救い、癒してきたはずなんですが、その役割がものすごく小さくなっている。

人間が生きていく上で必要不可欠なものではなくなったんじゃないかという気さえします。

書店の減少

「出版不況」という言葉を聞いたことがありますね。

ここ30年ほど、ずっと言い続けられてきました。

本が売れないという話は、あちこちで見かけます。

原因の1つに書店の減少があります。

町の小さな本屋さんは、ほとんど消えてしまいました。

国内の書店の数は半減したのです。

雑誌も売れず、休刊、廃刊も続いています。

朝の電車内の様子をみれば、そのことがよくわかります。

スマホのラッシュそのものですね。

本を読んでいる人など、ほとんど見かけません。

新聞や週刊誌をのぞいている様子も、滅多に見なくなりました。

どうしてこうなってしまったのか。

理由はいくつも考えられます。

コロナが追い打ちをかけたという説も、あながち軽視はできません。

人々が本屋に立ち寄らなくなったということもあります。

そこが心躍る楽しい場所ではなくなったのでしょう。

活字を読むということの楽しさも、とうに薄らぎつつあります。

悩まない人々

電子書籍で読む人が増えたからと言われることもあります。

しかし現実の数字はそれほどではありません。

むしろゲームやSNSに時間を奪われているのではないでしょうか。

全ての情報がネットに取ってかわられつつあります。

速報性という意味でいえば、新聞にも雑誌にも勝ち目はありません。

いつの間にか、情報は全てネットに依存する社会になってしまいました。

新聞社は部数の獲得に必死ですが、数字はジリ貧です。

少し前だったら考えられないほどの減少ぶりなのです。

あちこちのコラムを読み、広告を見て、ニュースの大きさで内容を判断するといった高等テクニックは必要なくなっています。

geralt / Pixabay

直線的に必要な情報をとれば、あとはいりません。

見城氏がいうように、複雑な人間の感情を表現する文芸作品は、過去の遺物になりつつあります。

学校で習う小説は、今や全て古典の範疇に入ったといってもいいでしょう。

難しい語彙をきちんと理解しながら、内容を読み解いていくなどという作業は時間のムダと切り捨てられてしまっても仕方がないのかもしれません。

人間の心理の襞をともに作家とともに味わうなどという、暢気な時代ではないのです。

その証拠に若い人はあまり読書をしません。

図書館などでも、必死に読書の啓蒙活動をしています。

しかしその網にかかるのは、本当にわずかな数の人間だけです。

本では、ネット動画や、ゲームほどのエンタメ感が得られないという理由をあげる若者も多いです。

どことなく本には、強いられてする勉強の匂いがあるのかもしれません。

読むのに時間もかかるし、ネットのほうがずっと便利だといわれると、もう何も言えないのです。

配本の構造的欠陥

よく言われる原因の1つが、取り次ぎの構造です。

おそらく大転換期を迎えています。

人口減とデジタル化で雑誌が壊滅的になりました。

反対に、新刊は1日に200冊も生まれます。

取次の会社は規模や立地を勘案しながら、それをコンピュータで配本します。

当然、客層にあわない本もなかにはたくさん混入します。

その結果、雑誌が40%、書籍が30%返品されるのです。

無料で返品できるので、その分、利益の配分は悪いです。

紙の書籍は再販売制度に守られています。

値下げしてまで売るというシステムがありません。

それで、ますます利益率が下がるわけです。

トーハンや日版などの流通会社の売り上げは以前の半分に減っています。

しかし出版社だけは数が減っていません。

読者が減っているのに、出版社は減っていないという事実は、その結果として、本の売上高減少に直接結びつきます。

テレビ、新聞、雑誌の全てがネットとの戦いを強いられています。

とうてい勝ち目はありません。

ネットのまとめサイトを、ちょっとみれば十分だと考える人が多くなりました。

面倒臭くて、時間もかかる小説を読もうなどと考えるワケがないのです。

だれが『戦争と平和』や『罪と罰』を何日もかけて読もうとするでしょうか。

ストーリーはすべて、まとめサイトにお任せでいいのです。

出版界が『ハリー・ポッター』で一息ついたなど言っていたのは、もうかなり前のことです。

それでは公共図書館がいけないのでしょうか。

問題はそれほど単純ではありません。

気楽に読めると称する本が増えれば、それに反比例して、本当の読書家は外に出てこなくなります。

いずれにしても、紙の本の時代は消えていく運命が近づいているような気がしてならないのです。

あなたも、この問題について、じっくりと考えてみてください。

小論文のテーマとしても、十分に通用します。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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