【ダイコンは大きな根?】新鮮な切り口が世界の意味を豊かに変える

学び

ダイコンは大きな根?

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は中学1年生で習う教材を考えます。

出典は光村図書の教科書です。

大変身近な野菜、ダイコンについて説明した文章です。

タイトルからしてちょっと意外な感じがしますね。

ダイコンが大きな根なのはある意味、あたりまえの話です。

元々そういう意味でこの名前をつけられたのでしょう。

しかし筆者は本当にそうなのか、と大胆に切り込んでいきます。

ぼくがこの教材を扱ったのは今から6年ほど前です。

2校目の中学校ででした。

ずっと高校の教師をしていましたが、退職後、臨時にたのまれて数カ月だけ、教壇に立ったのです。

随分と勝手が違いましたね。

それも入学して半年ほどたったばかりの、1年生を相手にしての授業です。

自分自身、教材に不慣れなうえに、年齢が低い生徒に対して、どのように授業を展開したらいいのかも、よくわかりませんでした。

彼らにしてみれば、大丈夫か、この先生というところだったでしょう。

教材にしても、この類いの説明文は、あまり読んだことがないものに違いなかったのです。

タイトルが意外性に満ちていました。

面白そうだなと感じたのです。

やってみようと思い立ったワケです。

生徒は実に自然な形で教材に入ってきましたね。

あまり抵抗感がなかったようです。

文体が「ですます」調で柔らかいのと、内容が理解しやすかったからかもしれません。

最初の部分をここに紹介します。

筆者の稲垣栄洋氏は農学者です。

この教科書のために書き下ろしたもののようでした。

なかなか興味深い文章です。

最近の生徒は長い文章を読むことに慣れていません。

ある程度、段落にまとまった文を読むことで、国語力が養われます。

英語も数学も最終的には、国語の力が大きくものをいいます。

本文

私たちは、毎日いろいろな種類の野菜を食べています。

野菜は植物ですから、根や葉、茎、花、実などの器官からできています。

例えば、キャベツやレタスなら葉の部分を食べていますし、トマトやナスなら実の部分を食べています。

それでは、私たちが普段食べているダイコンの白い部分は、どの器官なのでしょうか。

漢字で「大根」と書くくらいですから、根のように思うかもしれませんが、そんなに単純ではありません。

その疑問に答えるために、ダイコンの芽であるカイワレダイコンを見ながら考えてみます。

カイワレダイコンは双葉と根、その間に伸びた胚軸とよばれる茎から成り立っています。

根の部分には、種から長く伸びた主根と、主根から生えている細いひげのような側根があります。

これに対して、私たちが食べるダイコンをよく見てみると、下の方に細かい側根が付いていたり、側根の付いていた跡に穴が空いていたりするのがわかります。

ダイコンの下の方は主根が太ってできているのです。

いっぽう、ダイコンの上の方を見ると、側根がなく、スベスベしています。

この上の部分は、根ではなく胚軸が太ったものです。

つまり、ダイコンの白い部分は、根と胚軸の二つの器官から成っているのです。(中略)

ダイコンは下にいくほど、辛みが増していきます。

ダイコンのいちばん上の部分と、いちばん下の部分を比較すると、下のほうが十倍も辛み成分が多いのです。

ここには植物の知恵ともいえる理由が隠されています。

根には、葉で作られた栄養分が豊富に運ばれてきます。

これは、いずれ花を咲かす時期に使う大切な栄養分なので、土の中の虫に食べられては困ります。

そこで、虫の害から身を守るため、辛み成分を蓄えているのです。

ダイコンの辛み成分は、普段は細胞の中にありますが、虫にかじられて細胞が破壊されると、化学反応を起こして、辛みを発揮するような仕組みになっています。

要旨

全体の文章を読み、段落に分けながら授業をしていきました。

このあたりはオーソドックスにやったほうが無理がありません。

具体的な内容なので、生徒にはあまり難しくなかったようです。

実際、ダイコンのイメージが浮かびやすかったということもあるのでしょう。

内容をいくつかに整理してみましょう。

① ダイコンは漢字で「大根」と書くが、実際にはそのようなことはなく、上部と下部で器官が異なる。

② 上部は胚軸が太ったもので、下部は主根が太ったものである。

③ ダイコンを食べる際に、上の部分と下の部分とで違う器官を食べている。

④ 上と下では水分量が違うため味も異なる。

⑤ 上と下では甘さが10倍も違う。

⑥ 特徴を活用して調理することで、ダイコンのさまざまな味を引き出すことができる。

⑦ 根の部分は大切な栄養分なので、虫に食べられないよう、かじられて細胞が破壊されると苦みを増す。

⑧ 普段食べている野菜も、植物として観察してみると興味深い発見がある。

普段食べている部分が上と下とでは全く違う器官なのだという論点は、新鮮ですね。

「胚軸」という表現が生徒にとっては、理解しにくいものの1つのようでした。

カイワレダイコンのイメージから、テーマを広げれば、ある程度の理解は可能です。

展開の方法

筆者がいうように、多くの野菜についても詳しく調べて、おいしく食べてみたいと感てくれれば、この授業は成功です。

プリントなどを用意して書き込ませるのも方法もあります。

いくつか問いを出すのもいいでね。

例えば、辛い大根おろしを食べたい人は、どのような調理をすればいいですかといったような具体的な設問が大切です。

さらにニンジンやカブは、どの部分を食べているのかを調べさせたりするのもいいかもしれません。

いずれにしてもちょっと視点をかえることで、世界はその表情をかえるという事実を学ぶことは大切です。

こういうテーマはどこへ伸ばしていくかで、かなり違った展開になります。

つまり観察の大切さに気づけばいいのです。

生物全体に話を持っていく方法も考えられます。

とくに進化などとからめると、面白いかもしれません。

もっと社会学的なアプローチということになれば、文化の違いなどに進んでいくのも楽しいですね。

宗教によって食習慣の違いがあることなども、調べると出てきます。

特に豚や鶏、牛などの扱いはかなりの違いがあります。

右手や左手の持つ社会学的な意味など、その気になれば、観察の枠はどんどん広がっていきます。

日常の中に潜んでいる多くの事象は、それを計るものさしによって、全く違うものになるのです。

中学1年生にはかなり難しいかもしれません。

しかしそうした視点が大切だということに気づけは、それで十分です。

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ユニークな教材は展開の方法1つで、かなり豊かな内容に発展させることができます。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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